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両国高校定時制

両国高校定時制
                     

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次の日、M先生は数理準備室にA君を呼びました。
そこで、時間のパラドックスについて説明しました。(説明を聞きながら、A君は難しいと思いました。あまり納得できません。)
 次にM先生は具体例をあげて説明をつづけます。
「双子の兄が乗ったロケットが光速の0.8倍で進む。目的の星までの距離は4光年とする。地球の時間で測ると、兄が星に到着するまでの時間は5年であるから帰還するまでには10年の歳月が流れる。だから、弟は10歳年をとる。一方、ロケットの時計の進みは、特殊相対性理論により地球の時計の0.6倍だ。
したがって兄は帰還までに6年しか年をとらない。すなわち、兄弟は別れるときに同年だったのに、再開時には弟が4年よけいに年を取っていることになる」
 この例は「なっとくする相対性理論」(松田卓也・二間瀬敏史)によります。
 さらにM先生はつづけます。
「こういうことは実際に起こる。ロケットが反転するときには、地球との時間の対称性が崩れる。だから、パラドッククスは起こらない。ただ、この例はあくまでも思考実験だ。人間がロケットの中で健康を維持して何年間も過ごすことは考えられない。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 さて、この例で兄は得をしただろうか。そんなことはない。どちらも普通に年をとった。どちらにも損得はないのだ。むしろ、気がかりなことは兄が10年間も文明の進歩から孤立していることだ。浦島太郎のような戸惑いを味わうことが心配される」
 A君は話を聞きながら、
「竜宮城に行った浦島太郎のようなことが実際に起きるのか。特殊相対性理論とは夢のような世界だな」と思いました。
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なお、後日M先生はこの例題を固有時を用いて計算したところ、弟は10年、兄は6年経過します。
M先生は思いました。
「固有時とはとても不思議だ。イメージで言うと遠回りしたほうの時間が短くなるのだ。でも、前と同じ結果でよかった。もし、異なれば困ったことになった。その場合は理論が矛盾してしまうから。・・・・・・・・・・」(2007.5.31)

浅草高校の近くを流れる隅田川