「12月の静けさ」

メアリー・ダウニング・ハーン著
金原瑞人訳
祐学社
1993年12月

青少年向けの本のように書かれている。ひらがなが多く読みやすい。

図書館にやってくるホームレスの男性の名はウイームズ。彼はみんなから毛嫌いされている。高校一年のケリーは、この男性がきのどくで、なんとか近づき、友だちになりたい。

ケリーの母親は画家、弁護士の父親には小言ばかり言われて、うまいっていない。

彼女には親しい友だちもいて、図書館でおしゃべりしたり、ショッピングをしたり、好きな男の子もいて、ごく普通の女の子である。

親たちも、子どもたちを車で送り迎えしたり、テニスやエアロビクスなど、スポーツを楽しんでいる。

ケリーは学校でのレポートを最初、神の死の証明を考えていたが、ホームレスに変更した。

図書館でウイームズの顔をこっそりスケッチもする。彼に食べ物や衣類を届けるが、無視され続ける。

ケリーの気持はだれからも理解されず、孤立する。ボランテアをしているおばさんだけが、唯一、理解者である。

汚い袋を持ち込むなと言われたことで、ウイームズは図書館にも姿を見せなくなる。ケリーは彼を怒らせたことで、自分のせいだと責任を感じる。

ケリーは感謝祭でウイームズを招待したいが、それもかなわない。おばさんと二人で男性を訪れ、食事をやっと受け取ってもらえる。

生活保護とか、施設もある。なんとか彼を助けたい。彼はほっといてほしい、このままでいい、好きにしていたいと言う。

ほどなく、ウイームズは交通事故で死ぬ。彼はベトナム帰還兵だった。ベトナム後症候群という精神障害の傷を受けていた。

悲しむケリーに、母親も自分も助けてあげられなかったといい、ケリーを慰める。実は、父親もベトナム戦争の被害者で心に傷をもっていた。

ケリーはウイームズの似顔絵を持って、ワシントンのベトナム戦争記念碑に父親と行く。「ケリー、いいことしたな、父さん、うれしいよ」と語りかける。

あとがきから、タイトルは「かなたまで旅するすべを、重き荷を荷負うすべを」の詩の題からつけられている。

ちなみにベトナム戦争は、1965年に北爆が始まり、10年間続いた。記念碑には58156人の名前が刻まれている。

この本は、ケリーのもっているやさしい心、汚れのない純真さを、大人は失ってしまっていることを気づかせてくれる。('06.10.26)


しかし、上からの知恵は、第一に純真であり、次に平和、寛容、温順であり、また、あわれみと良い実とに満ち、えこひいきがなく、見せかけのないものです。
ヤコブの手紙3章17節