さおだけ屋はなぜ潰れないのか? ――身近な疑問からはじめる会計学

山田真哉著
光文社新書
2005年2月

まさか会計の本とは知らなかった。かたい内容では、そう読まれるはずもない。著者も承知していて、次々出てくる会計用語もわかりやすく説明している。各章の終わりに、〈エピソード〉にまとめられているのも親切だ。

物を買うときはまず安い方を選ぶという。貧乏症でケチをはばからない。捨て魔の妻と、しばしば意見が対立すると書いている。多少自己矛盾が感じられる。お金に対する個人的感情と会計学とは、いくらかづれがあるのだろう。

表題の疑問には、何かからくりでもあるのかと読み始めるが、いんちき商売か、副業がある、といったごく常識的な答えだ。これを専門的に理路整然と説明されると、説得力がある。

少額の物は安いとか高いとかは大したことはない。毎日細かく節約しても、ほかに大きな無駄づかいをしては何もならない。倹約しているつもりだけになる。費用は対効果が問題で、いちがいに支出の大小では判断しがたい。もちろん効果がはっきりしないことがある。

住宅街に高級フランス料理店がある。すぐに潰れておかしくないが、料理教室など連結経営が行われている。

使わないでとっておくのは不良債権、不良在庫という。賞味期限が過ぎるし、そのための事件費、管理などに費用がかかる。在庫コストなど、いろんな損失が発生する。売り切れと、在庫なしのかね合いがポイント。受注生産は在庫減らしの極みとなる。

バーゲンは置いておくと価値が下がるので行われる。在庫一掃セールは引っ越し費用の節減にある。回転率を上げる、薄利多売、リピーターを確保することが大事である。名刺程度の百人より、懇意の1人、その背後に100人の人がいる。ポイントを絞る、分析する、物事をシンプルにすると、はっきり見えてくる。

会計といえば一円単位で細かく考えるが、実際は万単位、百万単位。大企業では現金の動きだけでは分からない。手形、掛けが存在する。樹を見て森を推測する大局的観点が必要とされる。

貸借対照表と損益計算書は、未来と現在の会計状態を示している。収入や利益、残高だけでなく、視点によって指標が変わる。

キャッシュフローは利益とはちがうが、会社の経営状態が正確に把握できる。フリーキャッシュフローは自由に使えるお金で、プラスであることは、ゆとり、豊かさを表わす。

数字は説得力をもつ。50人に1人が無料というと関心を呼ぶが、実際は2割引に過ぎない。人の収入も時給に換算すればよく分かる。目にみえないものを、具体的に数字で表わすと分かりやすい。正しい数字はなく、数字に惑されないこと。数字に強い弱いでなく、センスがあるかどうかにある。

最後にお金にまつわることわざが書かれている。('06.11.9)


しもべは、ふたりの主人に仕えることはできません。一方を憎んで他方を愛したり、または一方を重んじて他方を軽んじたりするからです。あなたがたは、神にも仕え、また富にも仕えるということはできません。」
ルカの福音書 16節13節