別府〜直川


第2日目、10月6日(水)


早く寝たが、寝返りばかり打っていた。消灯をしても船室は明るい。帽子をアイマスク代わりにして横になる。

イビキもかいていたかもしれない。回りにちょっと気になった。

5時半起床、走るのだから下着は半袖に、下の長い下着も脱ぐことにした。晴れ、24℃。

6時40分、元気よく下船。道はやさしい。左方向を南に向かって走ればいい。

念のために誘導員に10号はこちらと左を指すと、うなづいてくれた。

まだ早いから車も少なく順調かと思ったが、そうでもなかった。海岸沿いで道も狭く、車も意外に多い。

段差になった1m幅ほどの歩道は、とてもこわくて走れない。仕方なく歩く。

最初からこれでは、この先心配だ。1qほどだったが、そのうち狭いながらも、走れるようになった。

7時30分、大分市内。町中の歩道を走る。登校の子供たちがにぎやかだ。

中には挨拶してくれる子どももいる。大阪や首都ではこういうことはないだろう。

子どもに気を取られて自転車を倒してしまった。親切にも自転車を起こそうとしてくれる。とても子どもの力ではと、断わった。

どこからきたのと聞くので、「尼崎から、尼崎って知ってるよね」。大阪でいいのに。コンビニで、家に電話を入れる。

朝日が正面になってまぶしい。緊張感のためか、胃がちくちく痛みだす。

咳も出たり、心もち扁桃腺が腫れている気もする。平常とはあまりにも急激な変化で、体が変調するのだろう。

足の状態もよくないので無理をしないで走る。足に力を入れようとしても、ひざから下は感覚を感じない。

道はしだいによくなりだす。自転車専用の道もある。真ん中が点字ブロックになっている。

追い風で助かる。右に道路が曲がり、山間部に入って行く。

大分川。ロールパンの朝食。最初のトンネル、上尾トンネル。幾つかのトンネルのあと下り。

野津町から弥生町に入る。足が動かない、力が出ない。口が渇きだす。

ラジオで、手塚治虫の娘さんが話をしている。続いて八代亜紀の歌が聞こえてくる。

13時、道の駅やよいで、20分ほど昼食休憩。焼きにぎりとお茶を購入。予定よりほとんど進んでいない。

やっと下りかと思うと、またもや、アップダウンが続く。疲労困ぱい、お茶ばかり飲んでいる。

のどを通る一杯のお茶のうまさは、格別。

一杯の水、夏の日の木陰、一泊の宿、雨露をしのぐ家のありがたさ。そんなフレーズが浮かぶ。

16時、もう走るのは限界。宿も心配だ。トンネルを出たあと振り返ると、裏の方に道がついている。

100mほど戻り、少し離れた草むらにテントを張ることにする。ここは直川村。

車道からも離れていて、これ以上のいい場所はない。シートを敷いたあと、しばらく横になる。

疲れて動きたくないが、落ち着くことができた安堵感がある。テントの中に入れば、もう別の世界だ。

ラジオでしきりに、大野川で子どもが水難事故にあったと報じている。きょう走ってきた、大きなきれいな川だった。

途中、稲刈りの風景がよく見られた。小さな子どもたちも混じって、家族総出で青空の下、働いているのは、絵になるほほえましい光景に見えた。

夕食はカレー風焼きめし。疲れのためか砂をかむようで、のどにも詰まり、おいしくない。

お茶の補給を忘れたので、家からのミカンで補う。

テントの外に出ると、目をおおうばかりの満天の星。一つ一つの星がまた大きい。しばし見とれる。

流れ星が走ったが、まるで火の玉に見える。こんなみごとな夜空は、初めてのような気がする。

少し冷える。じっとりするような湿気。川の流れの音と自動車の音、虫の音、なかなか眠れない。

夢のなか、パソコンの画面が頭の中を駆け巡る。

どくどくとした音が不気味、耳の奥から伝わってくる。心臓からの動脈の音だろうか。やはり疲れているんだ。
走行距離 86q