第9日目、10月13日(水)
自転車を階段にもたれ掛け、リックだけ持って上がっていく。
天気もいいので、たくさんの観光客が来ている。学生が多い。大きな銅像の写真を撮ってすぐ戻ってくる。
しばらく走ると、吉野家があった。
豚どん、温かくておいしい。あと野菜系があったら、申し分ないと思っていたら、メニューにあった。食べ終わったあとだった。
腹ができれば、向かい風だがまた元気も出る。佐世保まで65q。
みかんを無人販売で売っていたので買う。7、8個入っていて100円。
百均があったので、イヤホンを二つ。コンビニで弁当、パン二つを買う。
16時30分、オランダ村駐車場。大きな風車がある。ここがハウステンポスかと思ったが、そうでもない。
道の両側が駐車場になっている。こちらの方は荒れ放題で使っていない。
さび付いたシャベルカーが一台転がり、入口の小屋はクモの巣が張っている。

道の向こうはにぎわっているが、こちらは人の気配もない。夜になれば静かになる。道路のそばに木があって隠れる。
きょうは歯も磨けなかった。ギヤーも最低にして、ゆっくりでしか走れなかった。食事をして、あとは寝るだけ。
夜中の1時だった。車もときおり走る。こんなところでまさか信じられない。
静寂の闇の中でふと気がつくと、「ぐぁおぅ〜」という、恐ろしいうなり声。「ぐぉ〜」
野生の息づかいが、まともに耳もとで聞こえる。こんなことがあるのだろうか。
夢中でラジオをつけ、ボリュームを上げる。ライトもつける。横にあるバックを握りしめる。襲われたときはそれで防戦するつもりだ。
この時ほど、静寂が無気味に感じられたことはない。新聞沙汰になってでもしたら、みっともない。そんなことも頭をよぎる。
きっとクマだろう。熊にちがいない。確かめる勇気も余裕もない。敵が見えない不安、恐怖。ただひたすら、立ち去ってくれることを願う。
しばらくして静かになった。が、少し離れたところで、またがさがさ、がさがさ音が続く。そのくり返し。とうとう夜明けまで眠れなかった。
駐車場のうしろに小高い森、大きな山があるわけでない。
野生の動物との出会いは、きのうの夜とこの夜と連続である。
飢えた彼らは、人里に近づいてくるのだろう。
あとで、食べ残しの弁当の強烈な臭いが、彼らを誘っていることを、納得することになった。走った距離、77q。