の護衛につけていたうち三人はすでに城へ運び込まれていて、残りの二人も見つかった。
まともに歩けないような深い傷を負っているが幸いにも急所をはずれていた。筆頭に詫びを詫びをと繰り返した。
ともなって走ったが追いつかれ、最後は姫だけを逃がしてそれきりゆくえはわからない。
もし姫様に万が一のことがあれば。と自分の痛みそっちのけでわあわあ泣いたという。
けもの道は馬では通れず、政宗とそのあとに続く小十郎も足で駆けた。
城からの応援も駆けつけると賊は大いに斬られ、あるいは脅かされて蜘蛛の子のように散っていった。
城からの応援の中には喜多の姿もあって死に装束にたすき掛けをして薙刀を振り回し、あんたはよしなさいと周りの男たちに引き止められていた。
影が長くなり、日暮れつつある。
!どこだ!」
呼ぶなと言ったのに、まず奥州筆頭からその禁を破っていた。












かしいだ樅ノ木
森の中の急斜面に今にも倒れそうになりながら、その格好のまま数百年も留まっているその樅の木の根。
根は盛り上がりわずかな空洞を作っていてその中には蹲っていた。
矢に驚いて足元を失い、急斜面をあわや転げ落ちるすんでのところで爪が必死に土を掻いた。
割れた爪が痛い。石で切った足の裏も。掴まれた腕は鈍く痛む。
を追いかけていた者達は斜面でを見失い、長い間すぐ近くをうろついていた。

「おうい、おうい」

揶揄するような声だった。

「きれいなおべべの女はどこだ」

息遣いさえ聞こえる距離。
探してる。
刀を持っている。
の護衛をしてくれた者たちは斬られた。
さぞ痛かったろう。さぞ怖かったろう。自分さえ鷹狩りの列を離れなければこんなことにはならなかった。

「おうい、おうい」
「さてはおにごとをして遊ぶ気だ」
「かくれおにだ」
「どこだ」
「そこか」
「むこうだ」
「ここか」

「何処に居る」とそれだけ恐ろしく低い声だった。

根の隙間からやせ細って汚れた足を見た瞬間、後悔未練神仏への祈り含め、頭から全て消えうせる。
恐怖で目も閉じられないのに耳を塞いだのは自分でも不思議であった。
















時間が
経った?
日暮れてきたからきっと。
あわやという危機もなんとか通り過ぎたが、の体は根の隙間で凍り付いていた。
振動がある。
耳を覆った手のひら越しに遠くでと呼ばれた気がする。
落ち葉を踏む音。
助けが来たのだ。すぐそばまで助けが!
と、根の隙間からやせ細って汚れた足を見る。
木の根の隙間に砂色をした手が掛かり、むくろから剥ぎ取った鎧姿の山賊が黄濁した目での姿を嗤ってる。

「みつけたぞ、おんな」

「そりゃどうも」

ドッという音と残像を置いて根の入り口を覆っていた男の姿が消えうせた。
山賊を蹴った足が屈んで、政宗が顔を出した。



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