部屋の入り口にパパを見たとき、きゅうに泣きたい気持ちになりました。
けれどすぐには体が動かなかったのは、ずっと直立していたからだと思います。
パパはお仕事をするときの白いスーツで腕に黒いコートを折って持っていました。
部屋のなかへ進み、最後ははっきりと早足になって、テトの体を抱きしめました。
いつのまに床に膝をついていたのでしょうか。
テトは
伸ばそうと思った腕も歩み出そうとした足も縮こまってしまいました。
パパが震えていたからです。
パパは冷静な人です。
滅多にうろたえることはありません。動揺したとしても、それを周囲から気づかれないほど完璧に身のうちに収め、無傷として振る舞うことのできる人です。
強がるという自意識さえないままに、強く在る人です。
それが今、はっきり震えています。
息にまで振動が伝わっています。
守らないと
痛いです、パパ
抱きしめる強さが、今までにありません
肌がねじれるほどいたい。
守らないと
テトはテトが泣くことを許しません。今、そう知りました。
テトはいま決してパパを刺激するような行いをしてはいけないのだとわかります。
守らないと
・・・でも
パパは
パパが震えて怖がっているのは
これではまるで
テトについて
です。
テトがパパに恐ろしい思いをさせている。
いけない。
テトはパパを守らないと
パパを傷つけるものから守らないと、守らないと
守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと守らないと
涙など、死ね
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