テトは莫大な遺産を相続した。
粟楠会はこれに目をつけ、四木を中心として懐柔作戦を展開している。
もともと存在しないことになっていた金だ。相続といっても法的手続きはとっていない。
すなわち、この金が万が一粟楠会のお財布に入ってしまっても誰にも気づかれない上に、相続税もかからないというわけだ。
四木が彼女を接待しているあいだに彼女がかつて暮らした屋敷をくまなく探させたが、金の在り処はわからずじまいだった。
使用人たちも口をそろえる。
「彼女だけが知っている」
テトの機嫌をとるようにと改めて厳命が下った。
●教育現場の崩壊
歌舞伎は12時開演である。
国立劇場へ向かう車は赤信号で停止した。
「四木さん、あれはなんでしょうか」
後部座席の四木は腕時計から顔をあげ、同じく後部座席に座るテトの声のほうへ目をやった。
校門に特設されたアーチにぞくぞくと人が集まっている。
校舎屋上からは巨大な垂れ幕が何本もおりていた。
対向する交差点の名前は
【来神高校 正門前】
「学園祭のようですね」
垂れ幕に書いてあるフレーズは学園祭のスローガンだろう。
『だけじゃないRAIJIN!』
『おはようからおやすみまで、ライジンの提供でお送りします』
スローガン・・・だろうか?
「学校のお祭りですか」
「ええ」
「何を祭って?」
四木は閉口した。
彼女は義務教育を修了するまえにあのど田舎に移っていたことを思い出す。これ以前に義務教育をうけていたのかすら疑問である。
彼女の世間知らずを矯正するのは四木の役目として定着しつつあった。
「生徒が主体となって展示や演劇や模擬店を催すイベントです」
アップテンポの校内放送、楽しげな笑い声が外まで聞こえてくる催し物にテトは興味津々の様子だ。
あいにく案内はできない。四木らが乗り込めば明日の新聞の一面になる。
テトの興味を断つようにちょうど信号がかわり、車はゆっくりと発進した。
ご機嫌な校門が後方へ遠ざかっていき、吹っ飛んだ。
アーチと校門だった破片がついさっきまでこの車が停止していた車道に散らばり、土けむりの中からピカチュウとセーラー服が飛び出した。
ピカチュウは忍者のように身軽に逃げ回り、セーラー服は朝礼台を頭上に掲げて猛然とこれを追いかけていった。
あっという間の出来事だ。
「四木さん、手を」
「失礼」
反射的に窓より低い位置にテトの頭を押さえつけていた手を放した。
視線を戻した時には校門前にピカチュウとセーラー服の姿はすでになく、教員と腕章をつけた学園祭実行委員と見られる生徒が膝から崩れ落ちているばかりであった。
「出せ」
抑揚のない四木の声に急停車していた車が進み出す。
テトはほっと胸を撫で下ろした。
「驚きました。学園祭というのはとても迫力があるのですね。今日の行き先が歌舞伎でよかったです」
「学園祭は絶叫アトラクションとは違いますよ」
「絶叫アトラクション?」
世間知らずの矯正は四木の役目だ。
懇切丁寧に、知っている遊園地の例をあげて説明した。
「ずっと昔に名前だけは聞いたことがあります。どんな場所なのですか」
「あいにくそういった場所には疎いので」
テトは瞳を輝かせたが、四木が遊園地に詳しいはずもなかった。
●おおよそデキてる
「あの・・・それでは、東京に来たら一度は行ってみたいと思っていた場所がありまして・・・」
この枕詞でいやな予感はしていたのだ。
歌舞伎から帰る車内での会話である。
次にお会いする時にはどこへ行きましょうか、行きたい場所はありませんか。という四木の問いから派生した。
「東京ネズミーランド」
「あれは千葉です」
「では東京ネズミーシー」
「それも千葉です」
「・・・」
「別の場所にしましょう。屋外で食事をするのはあなたにも好ましいことではないはずだ」
「・・・」
「再来週のウィーン・フィルの公演でしたら良い席が」
くい、と四木のジャケットが控えめに引っ張られた。
テトは声も控えめに言う。
「お泊りで」
「・・・は?」
四木は思わず尋ね返した。
「食事の時はホテルの部屋に戻って」
「・・・」
「お泊りでは、だめですか・・・?」
「・・・」
それから数日後の平日に二人はネズミーシーへ行くことになった。
勘違いしてはならない。
四木はお泊りに心動かされたわけではない。
彼女の抱える金と上からの厳命あればこそだ。
予約をとったインペリアルスイートにベッドは二つあるが二つの間に隙間はないことについても勘違いしてはならない。
勘違いした粟楠会の数名が闇医者のお世話になっている。
だから勘違いしてはならない。
●スーツは体の一部です
四木は一服しながらマンションの入り口でテトが降りてくるのを待っていた。
ネズミーシーへ向かうための車は駐車場にとめてある。
自動ドア越しにテトの姿が見えたところで灰皿にタバコを押し付けた。
急ぎ足で外に出てきたテトは四木の前を素通りした。
道に出てキョロキョロしている。
「・・・?、おはようございます」
「え」という顔でテトが振り返った。
「・・・」
「・・・」
無言で見つめられること数秒
「四木さん?」
「そうですが」
「すみません、スーツをお召しでないから気付かなくて。おはようございます」
慌てた様子で寄ってきた。
テトの中では、顔、胴体、手足、スーツというパーツがすべて揃ってようやく「四木」と認識できるらしい。このひと本当に大丈夫だろうか。
「ああいった場所にスーツでは不釣合いですから」
「かっこいいです、とても」
はにかみながら言われた。
過大評価である。
ごく一般的なパーツで構成されたカジュアルだ。
こだわったところを強いてあげるなら、腕から肩にかけての刺青が汗ですけることのないよう黒い七分丈のポロシャツを着たことか。
「ふつうの人みたいです」
このアマ
●思い込まないと恥ずか死
「四木さん向こうで船に乗れるそうです」
「ええ」
「四木さん人魚姫のショーが」
「はい」
「四木さんパレードです」
「そうですか」
「四木さん写真を」
「ええ」
「四木さん四木さん四木さん」
「はい」
空は快晴
暑くもなく寒くもない気温
ファンシーな視界360度
天と地
カップル
修学旅行生
家族連れ
四木のベルトに強制的に結び付けられた動物の尻尾型ストラップ
二足歩行するげっ歯類の着ぐるみ
テトの「四木さん」波状攻撃
そんな東京ネズミーシー園内でも四木はいつもどおりの四木であった。
(すべてはビジネスだ)
この言葉だけが四木を強くしていたのである。
●恐怖写真
入場してほどなくして二足歩行するげっ歯類に遭遇した。
テトは大喜びでこれに駆け寄り、まわりの客にならって写真をとってほしいと四木に手を振った。
これも仕事だ。しかたない。
デジタルカメラなどは持ち合わせていなかったのでケータイカメラでの撮影となった。
げっ歯類との撮影が終わると、テトは禁忌の言葉を投げかけた。
「四木さんも」
撮影された写真
1:テトとネズミ
2:四木とテトとネズミ
3:四木と、ネズミ
●数年後にもう一度聞く、ささいな会話
「四木さん、それはなんのしっぽだか知っていますか」
四木の腰で不気味に揺れる尻尾である。色はショッキングピンクというかムラサキというか。先ほどテトが選んだものだ。
こんなゴキゲンな色使いのトンチキなアイテムについて四木が知るはずもない。
ふっくらしたフォルムから推測した。
「タヌキですか」
「チシャ猫です。アリスの」
アリスと言うのは童話のアリスだろうか。
「そうですか」
この話題を広げられても疲れるだけなので四木はシンプルに答えた。
これに不快を示す様子もなく、テトは歩きながら園内マップとにらめっこをはじめた。
彼女は四木さん四木さん言うわりにこちらを見ない。目をはなせばあっというまに迷子になって見知らぬ人間に「四木さん」と呼びかけるのだろう。
ふうとため息をついたとき、ケータイが震えた。
「失礼、電話が」
声をかけたが気づかれず、テトはマップを見たまま歩みを止めない。
肩をたたいてようやく園内マップから顔を上げた。
「電話をしてきます。すぐ済みますのでしばらく待っていてください、見える場所に」
最後に釘を刺すと、テトはこくんとうなずいた。
●修学旅行生
四木が木陰で本職の件について電話している最中のことである。
テトは水の中に聳える巨大な山のアトラクションを見上げていた。
山の頂上付近から人が乗った船が出てきたかと思うと、真っ逆さまに落下して高い高い水しぶきをはねあげる。
見ているだけで末端が冷たくなった。
けれど落下時に手をばんざいしている人もいるくらいだから、信頼のおける安全装置があるに違いない。
四木さんが戻ったら次はあれに乗ってみよう
そんなことを考えているテトの近くを、修学旅行生とみられる4人グループが通りかかった。
***
平和島静雄はぐったりした様子でベンチに腰掛ける。
「死ぬかとおもった・・・」
うなだれてつぶやく静雄を見、腹をかかえて笑うのは折原臨也だ。
「センター・オブ・ジ・アースくらいでヘバるなんて爆笑。新羅もドタチンも落ちるときの写真見た?シズちゃん下向いてガッチガチなのに俺ダブルピース余裕なんですけど」
「うっせえノミ蟲!こっちは肩おさえるやつが途中でボキッって、・・・ボキッって・・・ウプッ」
「振り落とされて水にパァン!ってなればよかったのに」
臨也の頭にゴッと門田のゲンコツが落とされた。
「臨也、おまえらが喧嘩した時点で修学旅行中止ってわかってやってんのか」
「・・・軽い冗談だよ。ぶつことないじゃん」
ふてくされる臨也に門田は深いため息をついた。
「冗談で済むか。修学旅行が沖縄からネズミーシーにされた前科があるから言ってんだ。チュラ海水族館行きたかったヤツ大勢いたんだぞ」
「熱海案が棄却されただけマシでしょ?」
そんなことを言って肩をすくめた臨也に再びゲンコツが落ちた。
一方、ベンチでは引き続き静雄がついさっきの恐怖体験をブツブツ呟いている。
その傍らにヘラヘラ笑って立っているのは新羅だ。
グループは門田を班長として、静雄、臨也、新羅の四名である。決して近づけてはいけない二人が同じ班になったのは、単純にほかに組んでくれる人がいなかったからにほかならない。門田に限っては別の友人グループと行動するはずだったが、教員と修学旅行委員に頭を下げられ、折原臨也の抑止力として配備された。
「新羅・・・酔い止めくれ・・・」
「いやあ、君の場合はアトラクションに酔ったんじゃなくてビビっただけだから薬は処方ででででででででででで」
静雄が元気に新羅の手首をひねり上げ始めたのを見、門田は気を取り直して班の面々に声をかけた。
「元気になったんなら飯行くか、餃子ドッグ。って臨也、ねずみ蹴るんじゃねえよ。中の人に迷惑だろ」
「バ、バカヤロウ門田!中の人なんていねえ!」
「あー・・・静雄くんは僕にも治療できないタイプの病気だ」
●残酷な気遣い
修学旅行生グループがぞろぞろと立ち去ったのと入れ替わりで、電話を終えた四木が戻ってきた。
「お待たせしました」
「四木さん」
「はい」
「あのアトラクションは怖そうなので乗りたくありません・・・、安全装置がボキッとなります」
テトはカタカタ震えながら水の中に聳える山を指差した。
理由はよくわからないが四木にとっては乗るアトラクションが減るならば好ましい。
「・・・?お好きに。では、一旦ホテルにもどって食事にしましょうか」
「かわいいお店がいっぱいありますのに、わたくしの都合で入れなくて四木さんには残念なおもいを」
「私にお気遣いは無用です」
「四木さんだけでもなかで」
「お気遣いは無用です」
●再入場スタンプ
東京ネズミーシーはゲートから出る際、再入場可を示す証として、ハンドスタンプを押すシステムのようだった。
四木とテトは一旦ホテルへ戻るが昼食が済んだら戻ってくる予定である。
先にスタンプを押されたテトは、手の甲にスタンプされる四木を不思議そうに見つめていた。
「なにか?」
「四木さんの両肩のスタンプもどこかへ再入場すモガ・・・」
節張った手が素早くテトの口を覆った。
四木はゆっくり振り返り、引きつった顔をしている係員に無言でゆっくりとうなずいてみせた。
係員達が無言でうなずきかえしたのを見届けてからホテルへ向けて歩き出したのであった。
●寄る年波
昼食を終えて再入場すると、
【誠に申し訳ございませんが、レイジングスピリッツは調整中です】
【誠に申し訳ございませんが、センターオブジアースは調整中です】
【誠に申し訳ございませんが、ストームライダーは調整中です】
【誠に申し訳ございませんが、タワーオブテラーは調整中です】
名だたる絶叫系アトラクションが操業を停止していた。
すべて静雄が怖さのあまり安全装置を破壊したせいで止まっているのだが、テトと四木含め他の客は知るよしもない。
不測の事態に、ネズミーシーからネズミーランドへのチケット振り替えを行うとのアナウンスがあった。
「向こうへ行きますか?ショーなどは引き続き見られるようですが」
四木が尋ねるとテトはやや青白い顔で首を横に振った。
「乗る前に調整中になってむしろほっとしています。もし乗っていたらと思うと怖くて。水にパァンと」
水にパァン?
よくわからなかったが、アトラクションには乗れなくても構わないそうなので、引き続きネズミーシーでショーを中心に見てまわることになった。
「ぁ、でも、四木さんがネズミーランドのほうへ行きたいようでしたら行きましょう」
「私もこちらで結構ですよ」
「ほんとうに?」
「ええ」
本心だ。
ここ最近デスクワークが増えてきた四木には、落ち着いて座っていられるショーのほうがありがたかったのである。
●グッとくる男のしぐさ
「マジックランプシアターの場所は・・・」
二股に道が分かれる分岐点で立ち止まり、テトはマップとあたりの景色を交互に見て首をひねった。
「貸してください」
四木はこれを見かねてマップを取り上げる。
マップを三回転させるあいだ沈黙の帳がおりた。
ふむ。
「こちらです」
四木が歩き出す。
しかしテトはついてこなかった。
不審に思って振り返るとテトは立ち止まったまま、分岐点にある案内標識を見上げていた。
四木が進んだ方向 →
「・・・」
「・・・」
四木が無言でもどってくるとテトは急に顔をおおった。
肩を震わせて、笑っているのかと思ったら
「四木さん、かわいい・・・」
耳まで赤かった。
●3Dメガネと四木
3Dシアター用の大きなまあるいメガネをつけた四木を見て、テトは純粋な好意をこめてその姿を褒めた。
「四木さんは目を隠すとふつうの人みたいです」
「・・・どうも」
●3Dメガネと修学旅行生
四木とテトが観て楽しんだ次の回に、来神高校修学旅行 門田班も同シアターに来ていた。
「うわ・・・ホントに目の前に指突き出されてるみてえだ・・・」
感激のため息まじりに静雄が言う。
大きなまあるいメガネ越しに大画面に夢中である。
「オイ新羅、すげえぞ、ランプの魔人の指が俺の頭に触ってる感覚マジである・・・!3Dやっべえ・・・!」
「静雄くん、それは臨也が静雄くんのコメカミを指でグリグリしてるからだよ」
数分後、
【誠に申し訳ございませんが、マジックランプシアターは調整中です】
●ヴェネツィアゴンドラの怪
ショーを巡っているうちに時は過ぎ、夜を迎えていた。
修学旅行生は昼と変わらずそこらじゅうを駆け回っているが、こちらは大人だ。さすがに疲れの色が見え始めていた。
ゴンドラで水の上をわたるだけののんびりしたアトラクションが近いというので、そこを最後とすることにした。
乗り場へ行く途中に石造りの橋があり、下を水が流れている。
「この下をゴンドラが通るんでしょうか」
テトは橋の下を覗き込む。四木はテトが見ているのと逆の方向から無人のゴンドラが近づいてくるのを確認した。
ゴンドラは
猛スピードで
空を飛んで
来た
咄嗟にテトを伏せさせる。
空飛ぶゴンドラは橋の上を一瞬で通り過ぎ、高い水しぶきをあげて着水した。
衝突は回避したが水しぶきは避けられなかった。
テトは前髪から水を滴らせたまま言う。
「・・・ゴンドラは橋の上を通るのですね」
「なわけねえだろ」
●ゴンドラと修学旅行生
ロマンティックなヴェネツィアゴンドラの船旅を、恐るべき絶叫アトラクションに変えた修学旅行生はついに宿泊先のホテルに強制送還された。
●お楽しみはこれからだ
ルームサービスでディナーを済ませ、テトはシャンパンでほろ酔いである。
予約はレイトチェックアウトのオプションをつけている。
ベッドのあいだに隙間はない。
勘違いしてはならない。
四木はお泊りに心動かされてここにきたわけではない。
しかし完璧であった。
ナイトガウン姿でしどけなくベッドに横たわるテトのまわりに手をつく。
重みでベッドがごく小さくきしんだ。
「四木さん、わたくし少し疲れてしまって」
「おしずかに」
「でも」
「黙って」
「なんだか」
「いい子に」
「外が」
「?」
「見取り図でいくとこのへんがベッドルームだよねえ」
バタバタという足音を引き連れて、壁越しに第三者の声を聞いた。
「・・・なにも音がしないな」
「ねえ臨也、ボクの聴診器返してもらえないかな」
「壁が厚いのか、もう寝てるのか。ホントにスイートルームに泊まってるのって若い男女なの?」
「さあ。ボクも他のクラスの連中が見たっていうの又聞きしただけだから」
「せっかく盗聴するなら女のほうの顔見ておきたかったなあ」
「情報通の君が知らないなんて珍しいんじゃない?」
「あー、ちょうどその目撃時間うちのクラス夕食でさあ、シズちゃんのクラスってうちの後に時間差で来るはずじゃない?だからシズちゃんの好きなもの全部先に食い尽くしてあげてたんだよねえ。補充係りが間に合わないくらいの速度で」
「ああ、だからバイキングのケーキ類だけ全部なかったんだ。うちのクラスの女子が嘆いてた。あと静雄が」
「アハハ!ざまあ。ところで新羅は若い男女が中にいると仮定して、ギシアン聞こえないのは何でだと思う?」
「それはまだフェ」
ゴゴン!
「点呼が終わった途端に部屋抜け出すんじゃねえよ、ったく・・・」
「ってェ・・・、今日ドタチンのげんこつ28回目だよ。俺の身長縮んだらどうしてくれるわけ?」
「どうもしねえよ。静雄のやつ見習ってさっさと寝ろ。寝る子は育つ」
「静雄くんもう寝てるの?」
「おう。遊び疲れたんだろ」
「だっせ」
ゴン!
「29回目・・・、俺の成長期返してよ・・・」
足音が遠ざかっていくのを室内から聞いて、四木は壁にあてていた拳銃を下ろした。
ったく、最近のガキどもは。
しきりなおしだ。
ため息してベッドに戻ると、テトはすやすやすやすや
「・・・」
四木は階下へ銃口を向け、セーフティを解除した。
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