【本館ゲストルーム】世良と佐野



隣の部屋がうるさい。

「や、やだあ!佐野さん、無理、おっき、おっき・・・!おっきいッス」

丹波、堺、石神、堀田が部屋にもどって酒盛りをしていた時のことだった。
隣は世良に割り当てられた部屋のはずだ。

堀田は今にも隣の部屋に怒鳴り込もうとする堺を後ろから押さえ、なんとか踏みとどまらせる。
丹波と石神は日本酒の入っていたガラスコップを一気に飲んでカラにすると、あいたコップを壁にあてて耳を寄せた。
まあだいたいこういうときはマッサージしているに決まっている。それにしてももし万が一佐野と世良が酔っ払ってほんずれくんずれそんなことになっていた場合、怒鳴り込んで目撃したりしたらチームが崩壊しかねない。
堀田はそう思って渾身の力をこめて堺をホールドしていたのだった。

「世良、ちょっと声」と佐野が困ったように言う。くぐもっているがガラスコップ組には正確に聞き取れた。
「無理、も無理」と世良はもう無理な声で息も絶え絶えに言う。

「も、もう?」
「はやく、早く突いて!後ろからついて!」
「世良、ちょっと待って。もうちょっと我慢して。まだはじめたばかり」
「おねがっ、も、ヤバ、おれ、こんなおっきいの初めてで、ああっ!」
「世良・・・っ!」
「ああーーーー!」

ひときわ長く高い嬌声が響いた、その時である。

「世良ァ!」

ものすごい力で堀田を振り払った堺が世良の部屋に飛び込んだ。

「無事かっ!」

聞いて堀田はぎょっとした。
うるせえと怒鳴り込むものと思っていたが、世良が死にそうな声をあげていたので第一声に無事かどうかを確かめたのだ。
(いい人だなあ)と堀田は心の中で、尊敬するような痛ましく思うような複雑な心境になった。また同時に(いや、だが実際フィニッシュ後の二人の現場だったらこのあといったい)と背伸びをして恐る恐る堺の肩越しの様子を確かめた。

「さ、堺さん、すみません、うるさかったスよね。ほら世良、おまえも謝れよ」
「だって堺さん・・・こんなの絶対おかしいッス!あんなデカイの見たことないし、ガノトトスのあたり判定絶対おかしい・・・!」

布団の上の二人の手にはプレイステーションポータブルが握られ、液晶には世良のハンターが力尽きた様子が映し出されていた。
世良は力尽きたハンターと同じように布団にあおむけに横たわって、ジタバタと短い手足を揺らす。

「なーんだ、モンハンなうか」
「だよねー。ほんずれくんずれなうだったら俺怖くて次練習行けねえよ」

堀田の横から顔を出した石神と丹波がケラケラ笑い、
堀田はほっと胸を撫で下ろし、
堺は無言で歩み出て世良に筋肉バスターをお見舞いした。

浴衣なので無論、世良のトランクスは全開だ



佐野のモンハンキャラ なまえ:GK 武器:ランス 性別:男
世良のモンハンキャラ なまえ:No1FW 武器:大剣 性別:女






【本館ゲストルーム】ベテランとゲーム



「おまえらもモンハンやってたんかあ」
「2Gっすけど。サードやったあと、やっぱりなんか2Gに帰ってきちゃったっす。もってことは丹さんたちもやってたんですか」
「おうとも」
「え、マジすか!?」
「俺は弓で、こちらにおわす堀田くんは粉塵を使わせたらポッケ村で一、ニを争う男だ。んでガミは仲間殺しの爆弾野郎で、堺はド下手だ」
「俺は別にやりたくなかったのにおまえらが無理やり買わせてやらせたんだろうが!」

ガクガクと首をゆすられる丹波はそれでもケラケラ笑って堺を指差した。

「初ティガのとき、追いかけられて思わず砥石使っちゃう堺、超かわいいでやんの」
「川崎の星野相手ならゴール前でも冷静だったのにね」







【本館ゲストルーム】後藤とゲーム



モンハントークをしている間に上田や宮野はじめ若手がぞろぞろと集まってきた。
狭い部屋に男ばかり集まって、けれどモンハンあるあるが始まり明るい笑い声が耐えない。

「お、どうしたんだ、みんな集まって」
「あ、後藤さん」

楽しげな声に誘われて、マッサージチェアの妖精になったと噂を立てられていた後藤がひょっこり顔を出した。
温泉にもつかってきたのだろう、ずいぶんとほぐれた様子である。
後藤は選手の進退、評価、年俸を査定する立場にある男だが、元ETU選手という経歴やその穏やかな人柄で選手たちからも慕われている。

「みんなでゲームの話してんすよ。後藤さんゲームとかやりますか?」
「ゲームかあ。昔はかなりやってたけど、一度やり始めると使い物にならなくなるから封印してるよ」

後藤はどこか恥ずかしそうに頭をかいた。

「へー意外っすね」と皆が驚きを口にする中、何か思案していた18歳上田がポンと手を打った。



「”インベーダーゲーム”ってヤツっすか?」



「い、いや・・・ファミコンとかだ・・・ハハ・・・みんな夜更かしはほどほどにな・・・ハハ・・・」

後藤は砂の城が風に拭かれて細かに消えていくように、さらさらとドアの向こうに消失した。

丹波はひどくやさしく上田の肩に手を置いた。

「上田・・・、年俸下がったと思うけどドンマイな」



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