【新館ゲストルーム】城西の部屋
ホテル新館のエグゼクティブフロアの和室は大きくはニつの居住空間に仕切られている。
ミニシアターサイズのテレビや掘りごたつがある居間と寝室だ。
すでに布団が用意されていた寝室を陣取り、布団のうえ、紅葉は持田にひっついたまま放れない。
寝室で向きあって座る格好でかれこれ5分以上、無言で抱き合う双子。
テレビのある部屋から正座で二人を見ているだけの城西。
時折持田の方からなにか声をかけていたが、紅葉は石のように押し黙り、額を持田の肩から離さず、持田は返事を諦めて抱きしめなおす。
そんな様子が二、三度繰り返され、それ以外は二人とも微動だにしない。
湯あたりした紅葉は脱衣所に足を踏み入れるところまでは緊張の継続で我慢できたものの、そこまででダウンした。
すぐにケータイで持田を呼び出そうと思ったが、あいにくケータイは部屋に置いてきていた。
城西はぐったりしている紅葉の体にバスタオルをかぶせ、抱え上げて部屋まで運び込んだ。途中ですれ違ったチームメイトには「持田がのぼせた」と言ってきりぬけた。体つきを見られたらバレるところだが、体を覆うバスタオルとその下の紅葉の荷物が隠蔽を助けた。
やわらかいとかいい匂いがするとかあったかいとか「布団に」「横たえる」だとか、城西はあらゆる据え膳に背を向け、紅葉を横たえた後はすぐに持田に連絡をいれた。
誰か城西を褒めるべきだ。
だのになぜ
「で、シロさんなんで紅葉のお風呂覗いたの」
この言いがかり
「持田、それは誤解だ」
「たまってんならエロチャンネル見ていいからさ」
「人の話を聞かないか」
「紅葉、シロさんエロチャンネル見るから散歩行く?や?ん?」
持田は紅葉さんを覗き込んで子供をあやすように尋ねた。
「・・・シロさん」
持田の肩に頭を預けたままの紅葉からぽつりとこぼれた。
「は、はい」
「ご迷惑をおかけしました。ありがとうございました」
「い、いえ。・・・いいんです。紅葉さんが悪かったわけではありませんし。ホテルの人がよく見ずに」
「そう、いいんだよ紅葉。シロさんはあれで役得をガッポリモッコリGetしてるんだから」
「も、持田っ」
「てかさ、おまえなんでいんの?」
「蓮こそ、どうしているの。シロさんまで」
「なんだ、二人ともお互いがいることを知っているんじゃなかったのか」
「知らなかったです」
「今の今まで知らないよ。あ・・・まあもうちょっと前に見たんだけどおもしろそうだから声はかけなかった」
「なんの話だ持田」
「こっちの話。でもホテル来るまではホント知らなかった」
双子の話によると、ニ日前の夕食中、紅葉に「この日は戻らないから」と言われ、出張なのだと持田は考えた。持田はせっかくのオフでも紅葉が帰ってこないなら面白くないうえ、お風呂を沸かすのがめんどくさいからと前日になって城西のところに慰安旅行に参加すると電話をしてきた。
珍しく互いの考えを察し切れなかったのかと思いきや、やはり強いなにかで結ばれている。
それを実感し双子はまんざらではない様子だった。
持田は紅葉の手をとり立たせると居間を横切って扉へ向かった。
「せっかく一緒に旅行できたんだし、遊び行こう」
「うん」
「あ・・・」
城西は紅葉を引き止めたかったが、双子の絆に勝る口実を持ち合わせていない。
起こしかけた膝が引っ込む。
不純な動機で旅程を組んだバチがあたったのだと、その自責の念が城西のドヤドヤしさを抑制していた。
「じゃ、まずは三雲のパンツ脱がせて撮影な」
「待て持田っ!!」
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