【新館ゲストルーム】城西の部屋飲み
卓球もなんだかんだでいい運動になった。
やはり健康的な生活には適度な運動が必要なのだと城西は再認識する。
あれから汗をかいたのでもうひと風呂浴びて、持田も途中まで露天風呂で泳いでいたのだが、いつのまにか先に風呂を出ていなくなっていた。
紅葉はというと、諸事情あって部屋に戻れないということだったので、では部屋で三人でUNOでもしましょうか、と言う流れになった。
しかし部屋に帰っても持田はいなかった。
「紅葉さん、お酒いかがですか」
ルームサービスで頼んだ地酒をすすめてみると、飲めないわけではないがあまり飲まないのだと言った。
「そういえば持田も飲まないですよね。二人ともアルコール苦手ですか」
「蓮の場合は体のことを考えて飲んでいないのだと思います。飲むと次の朝末端の感覚が鈍るからイヤだったと言っていましたから」
「・・・あいつは、やはりすごい」
差し出していた徳利をおろして城西は感慨深く呟いた。
「サッカーに対してどこまでも一途で、ストイックだ」
透明な酒のみなそこにまなざし送る。
「これは俺の勝手な思いなんですが、俺はあいつには、持田にはサッカーだけして生きていて欲しいと、そう思うんです」
いまの真剣な表情のどこにも押し付けがましさはない。
優等生ということもない。
「もちろんそれだけでは生きていけませんが、チームのことも、体のことも、メディアのことも過去も未来も何も気にせずただあいつのやりたいようにサッカーをしてほしい。俺たちはそれを見て焦がれる。ずっとこいつがサッカーしているのを見ていたいと心からそう思うんです。自分がゴールを決めるのと同じくらい、持田のゴールは世界が輝く・・・こういうふうに言うと自分でゴール決めにいけと持田に怒られるので言えませんが」
ここまで語り、ふと恥ずかしくなって苦笑でにごすと、紅葉がじっとこちらを見ていることに気づいた。
「す、すみません。なんだかクサいことを言ってしまって、いつも周りに笑われるんです。一人だけ良い事言おうとして、って。あの、紅葉さんもお酒どうぞ」
恥ずかしさを振り払うために思わず徳利を傾けてしまった。「飲めないわけではないがあまり飲まない」人に対して。
しかし紅葉は残っていた二つのうち、ひとつのお猪口をとって徳利の下へ近づけた。
「ありがとうございます、シロさん」
透明な酒が受け止められゆく。
「わたしはシロさんの言葉、好きです」
やわらかに笑んだ瞳はどこか潤んでいるように見えてどきりとした。
くい、と浅く傾いたお猪口から、あの透明はあの細い首の、喉をつたって浮き出た鎖骨のあいだ、浴衣の合わせ目の下へとくだっていったのだろうか。胸元まで落ちた視線はさらに下へ。膳があってその下は想像がかきたてられる。ついさっき、揺らぐ湯越しに見てしまったのだからいうっそうに。
感触の記憶が手のひらに蘇る。
城西は酒を飲み下すわけでもないのにごくりと喉を鳴らした。
ほっ、と紅葉が息をつく。
「おいしい」
頭の横でわかりやすく悪魔と天使が城西に助言する。
もっと飲ませて酔った勢いで一歩前進させてもらおうじゃないか
そんな下心を持って女性に酒を飲ませるなんてあってはならない
「シロさん、もう一杯いただいてもいいですか」
天使は死んだ。
とっくん、と注いだ。
喉が渇いていた。
お猪口はやわらかそうな唇に寄せられて城西は我知らず膝を進めt「シロさん水ちょうだーい。あっち、マジあっちいわ」
「蓮。おかえり」
「ナイスディフェンスだ、持田・・・」
紅葉のお猪口と城西の膝はすんでのところで止まった。
持田は足を後ろに振ってスリッパを放ってやってきて、胸元をバタバタとはたきながら腰を下ろした。
「も、持田、どこへ行っていたんだ」
「卓球」
「まだ誰か遊んでくれるひといたの?」
「一人だよ」
「練習してたの?」
「そうだよ。ってか、紅葉おまえ酒飲んでんの」
「少しだけ」
「バッカ。少しでもおまえすぐビターンてなんじゃん」
「蓮のほうがすぐビターンてなる」
「び・・・びたーん?」
「俺はおまえよりはマシだよ」
「そんなことない」
「じゃあ、どっちが先にビターンてなるか見ててよシロさん」
「だからビターンでどういうことだ」
持田は紅葉が持っていたお猪口をとりあげてぐいっとあおった。
彼の禁酒の理由をストイックだと称えた矢先の出来事に城西の顎が落ちる。
それにビターンとはどういうことだろうか。すぐ寝てしまうというこ
ビビターン!
「う、うぉわあああ???!持田っ!?紅葉さん!?」
二人が同時に仰向けにビターンとなった。
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