19時、持田がマンションに戻ると玄関は暗かった。
プレゼントを買ってきた。
当然よろこぶと思っていたから、そもそも当然がいると思っていたからテンションはたちまちそぎ落とされ一瞬とまる。
玄関に立ち、
廊下に上がらないまま



となかへ声をかける。
返事はない。
靴はある。

、いんの?」

廊下もリビングもキッチンも暗い。
リビングの明かりをつけたが部屋は一面動かない。食事はない。東京の夜景を一望できる大パノラマの窓は重いカーテンにふさがれている。
の部屋のドアが閉じていることに気づいた。

、いる?」

暗闇の部屋のなかへ開いた扉の形に光が落ちる。自分の影もおちる。
布がすれる小さな音がした。
灯りをつけようとすると



「つけないで」



かすれた声がした。

「・・・」
「きょう、ちょっと疲れてるみたいで」

明かりはつけずに暗闇へ大きな目を注ぐ。

「ごはん、ごめんね」
「・・・」
「コンビニとかで」
「大丈夫なの?」
「うん、大丈夫」
「あした仕事あるの」
「ううん。だから、たくさん寝たら治るよ」
「・・・じゃあ、コンビニ行くけどなんか買ってくる?」
「大丈夫」
「なんか食べたの」
「お腹よりねむりたい」
「・・・」

暗闇へ
大きな目を
こらす。

俺たちはひとつ

「・・・わかった」

わからなかった。



でも
きっと

・・・おかゆ、とか

「いらっしゃいませー」
食べたいもの
の食べたいもの
きっとおかゆ
おかゆ
おかゆ

雑誌ドリンクお菓子アイスを通り過ぎ、いつも見ないエリアの棚に急いで目をはしらせる。
白がゆ
レトルトのおかゆらしきものがあった。
パッケージのお米は白い。
ひたすら白い。
俺は白いお米だけだと食べられない。
おかずがないと食べられない。
思い出す。
自分が風邪をひいたときに用意されたおかゆは、たしかシャケがはいっていた。
シャケ
魚屋、いやスーパー
時間かかる
急がなきゃ

「三雲」

思考が浅いところをゆらゆらしたまま、おかゆと対峙したその場所で電話をかけていた。

「おかゆってなにのせたらいいの。・・・うん、おかゆ。のせるもの。はやく。・・・・・・おとなのふりかけ?ホントに?まずかったら二度とパスださないよマジで」






おかゆをレンジで温めておとなのふりかけの鮭が入っているやつをふりかけた。
ポカリとおかゆを持ったら手が塞がってさらに肘で明かりをつけるのに三回失敗して、気が急いて暗がりのまま部屋の中へ食事を運んだ。
一旦ベッド横の低い棚におかゆを置く。
声をかけようとしたが声がでず、手で肩だと思うところを揺すろうとしたら、毛布からはみだしている服がの外用の服だと気がついて怯んだ。

電気もつけずご飯も食べず着替えもしないではベッドに飛び込んだのだ。

知って、途方にくれた。
力がぬけた。
ベッドに背を預けてずるずると座り込む。
リビングから四角くさしこむ明かりがまぶしい。
目がとじられない。

お腹が
すいている
気がして、
に食べさせられなかったおかゆをすくって口に入れた。

上は熱くて、下は冷たい。
べちゃべちゃしておいしくない。
おいしくない
四角くさしこむ明かりがこわい
ここにいたい
の近くに



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