そこそこひろいリビング
大きなソファーとテーブルの間の隙間で大きな毛布に包まって眠っているのが持田という。
彼女を、彼女と同じ顔が見下ろしている。

「・・・ん」

が寝返りをうった。

「からだ、痛くなるから」
「・・・でもここあったかいよ」

「バーカ。シロさんに迷惑かけんのは俺くらいにしといてやんな」

口は悪いのに、ピッチでは聞いたことのない声だった。
猫が耳のそばをかくように照明をきらう。
同じ顔をした持田はその横に膝をついて

「帰ろ」

穏やかな声でいざなう。
しばらくの沈黙と静をおいてからは目をこすり、赤くはれたまぶたを持ち上げた。
あわい色の瞳同士が交差する。
は持田のふとももに頬を寄せ、腰に腕をまわした。
服を掴む手にこめられた力が強すぎて白い手がぶるぶると震えている。
持田は見たこともない優しい表情で、同じ色、同じ髪質、同じかたちの頭を撫で、振り返り、城西を見るなりブフッと噴き出した。

「てかなんでシロさんが泣いてんの!超ウケるー!見て見てシロさん泣いてんだけど、カメラ、カメラ!」

痛々しいほど深い絆で結ばれている二人に感動して号泣していた城西の横っ面が持田の笑い声にぶん殴られた。
追い討ちをかけるように悪魔っぽい持田が「あ」と気づいてセミダブルの毛布を摘み上げる。

「この毛布もしかしてシロさんの?うわっ、早く出なよ、この毛布たぶん汚い。シロさんがこの中でオナニーしてるかもしんないよ。ばっちい」

この言葉には優等生で名高い城西もさすがにカチンと来て、双子をぐいぐい押して部屋から追い出し、忘れ物はないか確認し、地下駐車場のボタンを押してエレベーターに詰め込んで閉じるボタンを押して帰らせた。
ふうと息をつき、かいてもいない汗をぬぐって部屋に戻った。
大雨でけぶる前の通りに持田の車が出て行ったのを窓から見届けた。






さて、これからふたりはどんな話をするのだろう。
さんが眠っている間に、全て話してしまった。
俺を殺すような形相で駆けつけた持田に地下駐車場で、さんの様子も言葉もあらいざらい。
脱衣所でさんの裸を見てしまったこと以外は。

なあ、どうしておまえたちはそんなに心細い姿をしているんだ
おまえたちは二人 いつもひとつなんだろう
ひとつだからさびしいのか
ふたりまとめて抱きしめてやりたいよ



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