「これにあげる」

ひろいひろいリビングなのにその隅っこで、差し出したのは花の形をした髪飾り。
誕生日ではない。ひな祭りでもホワイトデーでもクリスマスでもない。
はわからなくて黙って床を見、理由を考えているようだった。
が元気なかったから買ってきたと言うと顔をあげた。
あげた顔、耳のうえの髪をおさえて、がなにを言う間もなく止め具をパチンと鳴らした。

・・・うん
「やっぱ似合う」

言うと、は一瞬笑うような口の形をつくった。
けれど笑い損ねた。大きな目はもう一度ゆっくりと床へさがっていき、笑い損ねた顔のままふら、ふらと首を横に振った。
こまって
あせって
髪飾りを取ろうとした手にこの手を重ねて

「・・・似合わな「似合うよ」

とらせない。

「そんなこと「かわいいよ」

はショックを受けていた。
口すら笑えなくなってまた床に目をおとして、

ぽろ


涙がおちた。
肩がみるみる上がる
唇がわななく
頬が強張り
首を振るたび、涙を限界までたたえきっていた瞳からこぼれてとめどなく頬をはしった。

「同じじゃないなら いらない」

爪をたてて髪飾りを乱暴に掴んだの手を包み込んで余るこの手を動かさない。

「いらない」

は手と肘で顔を隠し、首を横に振り続けた。
全身で叫ぶ。

「蓮と同じじゃないならいらないっ」

座って向き合った形だから近い。
大きな声などいらないよ。
なぜだか頬がゆるんだ。
額をあわせる。

「俺たち服も違うし、食べたいものも違うし、おっぱいもちんこも違うじゃん」
「蓮のあしと同じがいい・・・!」
「あげない」



わすれるな、
俺はサッカーが楽しい。くるしくても楽しい。だからサッカーはおまえにあげられない。
あと
おまえが俺の痛みを二分の一にできなくても
おまえが俺のスペアでなくても
俺の脚を治すことができても
できなくても
それでもおまえはいらなくない。
気づいたんだけど、俺さあ、どこにいても見ないとおかえりもただいまも言えないんだ。

もうずいぶん大きさのちがってしまった両手のひらを重ね合わせた。






、大好きだよ」






俺の脚が痛いとおまえも痛いな。
おまえ元気ないと俺も元気なくなる。
やっぱり俺たちはひとつだった。

だからと俺が元気になるように
プレゼントは
もうひとつ



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