0207 : シャニ





驚いたのは久しぶり。
実験室に向かう途中に オードリーの背中が見えた。
横に三人白い服のおっさんがいる。
クリーンルーム以外で会ったのが初めてで走るかどうするか迷った。
あいつの横に三人いらないのがいたからオレは声をかけられなかった。
だから後ろから早足でおいかけてオードリーの服の裾をつかんだ。


「シャニ」

オードリーはオレのために振り返って立ち止まる。
白い服のおっさんたちはオレを睨んだあとにオードリーを睨んだ。
オードリーは白い服のおっさんを見て一度うなずいた。
その目線は下を向いていてオードリーの睫毛がぱたぱた動いたのが見えた。
なにかひどいことをされたの
このおっさんたちに何か言われたの
ゆるさないゆるさないゆるさない
オードリーになにかしたら絶対
ぜったいころして殺すころ






「シャニ」

ぶるぶる震え始めたオレをオードリーが覗き込んだ。

「大丈夫」

それはオレに大丈夫って聞いたようにもきこえたし、
オードリー自身が私は大丈夫といったようにもきこえた。
オレはどっちの意味ものみこんで落ち着いた。
オレは大丈夫だしオードリーは大丈夫
でもこのあともオードリーがこいつらに痛めつけられることがないように、
おっさんたちを思いっきり睨んでやった。おっさんらはビビりながら
「じ、実験室まで連れて行け、0090」と言った。だせー。

「行きましょう」

少し先に歩き出していたオードリーが手招きをした。
オレは三度目のにらみを白い服に刻んでから振り返ってオードリーをおいかける。
待っていてくれたオードリーは「はじめて廊下で会ったね」と笑った。

オレは「うん」と応えた。

「守ってくれたのね、ありがとう」
「・・・うん」

うれしい。
オレはまたオードリーの服の裾をぎゅっと掴んだ。





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