0118 : クロト
ボクはオードリーとクリーンルームでたくさん話した。
「なーシャニオルガきいてよきいてよ!今日はオードリーとたくさん話してさー」
部屋に入るなり大声で自慢しようとしたら、オルガがボクの襟首を掴んだ。
足浮くくらい引っ張りあげられた。
「あいつっ、生きてたかちゃんと居たか一つもケガしないでちゃんと!」
超キレてる。
オルガが“あいつ”と言って、ボクもシャニも同じ部屋にいたから
思いつく”あいつ”はあいつしかいなかった。
「なにすんだよ。オードリーは今会ってきたっての!放せよっ」
オルガはまだ息をあらくしたままだったけど、それきり何も言わずにボクを床に下ろした。
ひとりでキレてるオルガはよく見るけどオルガから直接攻撃されたのは初めてだ。
検査で血をけっこう採られた直後だったから床についたらフラフラしてムカついた。
オルガは「わかった」と独り言のように言ってベッドに戻っていった。
シャニが「だから言っただろ」とぼそぼそ文句を言った。
シャニの襟首もグシャっと伸びていたから俺と同じくオルガに
「あいつ生きてたか!」ってキレられたんだと思う。
「なにすんだよテメー!」
「んでもねえよ」
「服のびてんじゃん!なんでもなくねえよ」
「オードリーが死ぬ夢見たって。・・・俺も伸ばされた」
「シャニ!」
「はぁ?夢ぇ?バッカじゃないの」
オルガは持っていた本を床に叩きつけて、ふてくされて寝そべった。
ボクのことガキガキ言うくせに今のオルガのほうがガキっぽい。
『0110、40ブロック第6クリーンルームへ』
ブザーが響いてオルガは飛び起きた。
駆け足で出て行こうとしてオルガはふと足を止めた。
「見てんじゃねえよ」とボクたちにすごんで、やっぱり急いで出て行った。
「まだオードリーきっといるよー」とボクが廊下に出て行った背中に叫ぶと「うっせー」と言われた。
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