一方、嵐の去った301号室ではいまだにランボだけがの腕の中に忘れられてた。
ランボは病院でテンションが上がりすぎたのか、今はうとうとしている。はランボの額を指のはらで
優しくさすった。以前読んだ本に赤ちゃんは額をこすると眠たくなると書いてあったからだ。

「おねむかな」
「ランボさん、がまん」
「おやすみなさい。お兄さんのところへちゃんと連れて行ってあげるからね」

眠ってしまったランボに毛布をかける。
ベッドの上の枕でもないところに頭をあずけて同じ視点で眠る子供をぼんやりと眺める。
頬が痛い。
こんなに笑ったのは生まれて初めてかもしれないとは思った。
おばあさまは仕事が忙しくて一年に数回会えるか会えないか。亡くなる前は二年間会えなかった。

疲れた。
楽しいというのはとても体力がいることだと知る。
ねむたい。
雲雀は私の世界が広がることを嫌うのだろうか
ここには世界につながる窓があり扉がありテレビがあり、私は永遠にあなた以外を知らないままでは
いられるはずはないけれど、雲雀が嫌うなら努めてひとりでここにいようか。
そういえば
彼の世界を知りたがった私を「うるさい」と一蹴したあの目は本当に怒っていたのだろうか。
悲しんではいなかったろうか。
(チューしてないんスか)
唇を意識して、瞼が落ちた。






さん、ごめん。ランボ忘れ・・・って寝てる」

抜き足差し足でランボだけ腕の中から引き抜くと、ランボが掴んでいた服がひっぱられて胸の近くの
ボタンがはずれた。
横向きに眠る重力と腕に押され、やんわり浮かぶ胸の輪郭。
目をそらそうと思ったはずが凝視してしまって生唾を飲み込んだ。これはまずい。すごい。やばい。
恐る恐る手を伸ばして胸、じゃなくて毛布を肩までひっぱりあげる。毛布に触った俺の手が聖属性に
なったように思えた。

「・・・ん」

寝返りを打たれて超ビビった。
あーでもほんとにかわいい。さっきまで元気そうだったのに、やっぱり疲れやすいのかな。
なんの病気なのかな。治るのかな。雲雀のこと好きなのかな。明日会いにきてもまた笑って
くれるかな。寿司好きかな。野球好きかな。
雲雀とチューしてないってことは俺が今したらさんのはじめてに

ゴッ!

とケツの穴に獄寺の靴が先っぽ入って正気に戻った。

(てっめえさん寝んじゃねえかさっさと出ろ)
(・・・サンキュ、獄寺)
(なに言ってんだおまえマゾか)

静かな寝息を起こさぬように、寝息より静かにドアを閉めた。






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