「こんにちはそよさん」
「ランボくんのお兄さ・・・綱吉さん」
「この前ランボのお守りしてもらったから、リボーンがお礼言って来いって」

ひょこっと顔を出したツナにそよは笑った。この二人はのほほん波長が合うらしく、どちらかが笑うと
もう一方もつられて笑って、それの繰り返しだけで一時間は過ごせた。が実際一時間二人で過ご
したことはない。
必ずおまけがついてくる。


「りぼーん?」
「あ、リボーンっていうのはえっと、家庭教師っていうか・・・そ、それより、あの・・・いま具合は平気ですか?」

平気です、とそよは笑ってうなずいた。

「よかった。じゃあ大勢で押しかけても・・・迷惑じゃ、ない、かな?」

一言ずつ恐る恐るたずねるツナがなんだか小動物に見えたので
「うれしい」と安心させる笑みで応えた。

「というわけで俺もジャスミンのお礼言いにきました!」と山本がツナの横から顔を出す

「俺は十代目のお供でお礼言いにきました!」と獄寺。

「あとダーウィンのお礼だろ」
「おっめえダージリンと緑茶淹れ間違えただろうがっ」
「ランボさんにひれふせー!」
「はひっ、ランボくん!病院では静かにしないとだめですよ~」
「うちのボクシング部員が世話になったそうなので極限に礼を言いに来た!」
「お、お兄ちゃんも病院では静かに」
「あとお兄さん以外だれもボクシング部員じゃないんだけど・・・」



ドス、ドスドス、ドス!



「やばい!怖い看護婦のおばちゃん来た!」

ドンっと山本が獄寺をそよの病室に押し込むと、
「うわっ!」と短い叫び声をあげて、
床に倒れた獄寺が腕を引っ張った山本に足を引っ掛けられた了平に袖を掴まれたツナが
重なって倒れた。
最後にツナが抱えていたランボが宙を一回転して山の頂点に落ちて、完成。

「うぉおお重い重い重い!」
「はひ!皆さん大丈夫ですか~」

上にいたランボを京子が抱えて、鼻から魂が出かけたツナが人山を降り、一番下で悲鳴を
あげる獄寺を慌てて覗き込む。

「獄寺くん大丈夫?」
「はい、十代目がご無事なら“十代目の右腕”である俺がどうなろうと、あ、でも俺が骨折したら
十代目の右腕が骨折で、うわ!やばい!十代目骨折ですか!?」
「お?ツナ怪我か~?」
「いや、してないけど・・・」
「お兄ちゃん、山本くんと獄寺くんがつぶれちゃうから早くどかないと」
「極限にどく!」

了平が飛びのいたので、ようやく山本も立ち上がった。

そよさん、びっくりさせてごめん」
「てめ野球バカこのやろう、おまえが押さなきゃこんなことになら」
「・・・」

獄寺がなんとなく妙な空気を感じてそよの方を振り返ると、そよはポーっとしていた。
頭がフラフラしている。
山本が目の前で手を振って呼びかけて、ようやくパチンと弾けたように反応した。

「だいじょぶ?」
「大丈夫、です。一度にたくさん会ったのが初めてで、びっくりして、いて」

言っている間に顔が赤くなって、熱を冷まそうと自分の手の甲を首にあてた。
チューしたい!という山本の衝動は了平に押しのけられた。

「うちの部員が世話になった!というわけで極限お見舞い大会だ!」

了平に手を握られ、その背後では全員がそれぞれにコンビニ袋、デパートの紙袋、
寿司桶を掲げてニンマリ笑っていた。
掲げられたおみやげのさらに後ろに一瞬だけ黒ずくめの子供を見つけたけれど、すぐに消えた。

だから不思議なことは一旦横に置き、そよは目の前の嬉しさを微笑うことにした。





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