の誕生日会が、されていた。
知らないところでされていたのだ。雲雀がドアを開けた瞬間クラッカーから紙テープが飛び出す。

「お!ヒバリちょうどいいところに来たな」
「さ、さん。一息にやっちまってください!ふーっと」
「極限にフーッだ、フーッ」
「ケーキは私とハルちゃんで作ったんだよ。ネームプレートはランボちゃん」
「ガハハ!もうかんじかけちゃうもんねー!」
「ランボ、これひらがなだよ」
「恭弥久しぶり、おまえの彼女美人さんだなー」

いつのもメンバー+ディーノと愉快なファミリー達がバースデーソングを合唱していた。
特別病室がいくら他の部屋より広いとはいえ、(数十名のキャバッローネファミリーのせいで)祝われて
いる本人が見えない。
苛立ちに拍車をかけるように、イーピンが顔に飛んできた。

「なんだなんだ、彼女の前で浮気ぐぁ!」

ディーノのあごにトンファーが直撃。

「ボスゥウウウ!」
「このガキァ、ボスの顎がケツアゴになったらどうしてくれんだ、ジョン・トラボルタみたいじゃねえか!」
「ボス、よかったですね。トラボルタっスよ!」

雲雀はイーピンをひっぺがすと何も言わずにその場をあとにした。



非常階段を下る。

来た道を戻る。

学校の屋上、

給水タンクの影に寝そべった。

吹奏楽部のパート練習が聞こえる。



雲雀はあれからもたくさんケガをして、いくらかの諍いに巻き込まれそれは幾度かをも巻き込んだ。
山本武はが巻き込まれそうになる度に(雲雀と競合しつつも)守って、けれど一度守りきれずに彼女の
右足にケガを負わせ、未だ気にしている。の足のケガを一番気にしていないのは恐らくは本人だ。
「もとからそんなに上手に歩けなかったから」とネガティブなんだかポジティブなんだかわからないことを
言って笑う。

は眠っている時間が増えた。
年月と世界の広がり セックスの回数との睡眠時間。
いずれも比例している。
目を閉じたら丁度良く心地よい風が髪を撫ぜた。
ねむたい











だいたい 君も君だ 知れない連中をここに入れて 群れてるとかみ殺すよ
・・・今、慌てて冷房のドライのボタンを押したけど 群れてるって蒸れてるって意味じゃないんだけど
もういい めんどくさい 忠告してるのはそこじゃない あのアフロの子供が飛び込んできたからって
君が相手してやる必要なんてない 山本武も獄寺隼人も沢田綱吉も笹川了平も知り合いだから安心
なんて理由にならないそれに大人が入ってこないってそんなの誰か保証しれくれたの 相手が誰でも
そういう態度とるの君は レイプでもされたらどうするわけ

「レイプされそうになったら雲雀を呼ぶわ」

ぼくはいつでも君のそばにいるような暇人じゃない
君はトイレまで行くのも一苦労のくせに取り囲まれたら逃げられると思ってるの

「雲雀を呼ぶわ」

だからぼくは暇人じゃ

「雲雀を呼ぶわ」

・・・変なプレッシャーのかけ方 













夢から覚めたとき、眩しくて目がしみた。夕方だ。
西階段を下る。
また来た道を戻る。
病院の面会時間は終わっていたのであの群れはすでにいないだろう。
雲雀は正面から堂々と入っていく。
並盛において雲雀が入ってはならない場所など、女湯くらいしかないのだ。















ゆるゆるの指輪

「返して」

雲雀の声が怒りに満ちていて、贈られた指輪を左手の薬指に通してしまっていたは、胸に左手を
寄せて必死に首を横に振る。

「全然サイズ合ってないだろ」

は指を広げてちょっと顔から放して、自分の左手の薬指と指の付け根でもゆるゆるしている指輪を
見つめた。と、雲雀が奪いに掛かったのでまた左手を胸に寄せて守る。今度はさっきよりもずっと
落ち着いた様子では首を横に振り、頬を赤らめる。

「・・・いい。落とさないように握ってるから」

沈黙があった後、ぶわっ、と雲雀の脊髄に衝撃が走った。
また沈黙があり、
押し倒した。
バシン!と音を立てて部屋の扉が開く。牛柄の服を着たチビっ子が大きなバズーカをもって仁王立ちしている。

さんをいぢめるな!」

ランボは鼻息荒く雲雀を指差した。ちなみに雲雀はを押し倒した体勢だ。

「ランボくん!」

のひっくりかえった声とともに、雲雀は蹴られてベッドから突き落とされた。
性欲より怒りが勝ったらしく、不気味なほどゆっくりと立ち上がりトンファーを構えた。

「こっ怖くなんてないゾ!」
膝はガックガクで身体はブッルブルだが、ランボの心はひるまなかった。
さんはおまえなんかに渡さないっ」
ランボは自分にバズーカを向けた。
「たった5分かそこら10年後の君がきて、僕を倒せると思ってるの?」
「こここれは5分じゃないもん!ボ、ボスが特別にくれたんだもん!一時間だもん!」
「それがどうしたの」
「う、うわああああんっ!」

雲雀は10年バズーカを発射寸前に蹴り上げた。
兵器は天井から跳ね返り重い金属音を立てて床に激突し、その衝撃がトリガーとなった。
人の手を離れたそれはへ向けて放たれた。







「ランボ、どこ行ってたんだ」

の誕生日会の帰り道、大勢の中にランボがいないと気づいたのはみんなと十字路で別れた後だった。
そのランボは晩御飯の前に帰ってきた。
うつむいて。
「いないから心配したんだぞ、さんのところいたのか?」
ツナが玄関まで行くと、ランボはツナの足にしがみついた。
「わっ、どうしたんだ?」
顔を押し付けて、ランボは何も言わない。
「わかった。雲雀さんに追い返されたんだな。そりゃあ怖いよね、よしよし」
前よりもっさり感のなくなった巻き毛を撫でてやるけれど、やはりランボは何も言わずツナの膝で泣いた。







雲雀はひとりきりだった。
未来のカジノで見た絶望が背中にかぶりつく。
牛の子供は哀れなほど目を見開いて、わめきもせずに二、三歩よろよろと歩くとその場から走って消えた。
雲雀はひとりで病室の床に立っていた。
ベッドには毛布とトトロのひざ掛けだけ
の姿かたちもない。
すがた かたち いのち






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