中三、秋の終わり、雲雀との水面が揺らいだ。
雲雀は昼のうちは学校の応接室の支配者だ。夕方からは設備と空調の完璧な301号室の。
今日もTSUTAYAで借りたDVDを持って、(休日なのに)制服姿の雲雀が病室へ入ってきた。

「ひばりっ」

はひどく焦っていた。

「こんにちは、雲雀」とやわらかく微笑まれるのが日常だったので珍しい。
「なに慌ててるの」
「私・・・赤ちゃんが」

ゆうに十秒は沈黙があった。頭が破裂するかと思った。
その後、
やっぱり雲雀の頭は破裂した。

残念ながらこの時点で雲雀は童貞、その雲雀以外彼女に面会に来るものはない。ともすれば
の腹の子は誰の子だ。病院関係者でさえ『の親族は犯罪組織』と認識しており、
呼ばない限り検温にも見回りにも来ない。週一回掃除の人がくるだけだ。

唐突に、火曜日に山本武から没収した成人向け雑誌の見出しを思い出した。

せんせいのおちゅうしゃ・・・

一瞬にして漆黒の殺意が休日の病院を支配した。

「殺す」

噛み殺す
踏み潰す
ねじり切る

暴走したエヴァのように廊下にゆっくりと歩き出した雲雀、きつく握り締められたトンファーが
筋肉の収縮とともにぶるぶると震えている。

「雲雀、おねがい」

背に悲痛を聞な声を聞く。

「そばにいて」

トンファーを下ろし、医者のかわりに怒りを殺す。

「うんこ!」



の腹の上の毛布からランボがモゾモゾと顔を出した。

「うんこ!うんこ!」
「さっきからトイレかなって聞いても違うみたいなの。雲雀、私どうすれば」
「あ、おまえ知ってるぞ」
「雲雀を知っているの」
「うんこ!」
「雲雀助けて」

再びトンファーを構えた。

「トイレじゃないならお腹が空いているのかしら」

ズンズンとベッドに大またで歩み寄る。雲雀が暗黒面にのまれていることに気づかない
ランボを抱っこしたまま困っている。

「おっぱい」

ランボがの胸の間に頭を突っ込んだ。

「・・・」
「雲雀、この子やっぱりお腹が減っているみたい」
「おっぱい!」
「・・・」
「でも私おっぱい出なくて。雲雀はおっぱい出る?」


「出るわけないだろ!」


雲雀の一喝は開けっ放しの扉から廊下に響き渡った。

「あ、見つけたぞランボ!ダメだろ知らない人に迷惑かけて」
「ったくアホ牛の分際で手間かけさせやがって。こんなことならずっとオタフク風邪で
入院させられてたらよかったんだ」
「あれ?ヒバリじゃん。わ、美人発見」

ツナ、獄寺、山本、見慣れた中学生が三名顔を覗かせた。

「全員噛み殺す」

邂逅直後、理由もわからぬままに殺戮がはじまった。






群れる奴は噛み殺す、の宣言のもとに三人は理不尽に追い返された。のところにいたランボは
彼女の胸にしがみついたままなかなか離れなかったが、子供相手とは思えない雲雀の引っぺがしを
くらい、廊下に放り出された。
三人は廊下に放り出されたランボを回収すると、出口までの廊下を歩きながら301号室の考察を開始した。

「見、見ましたか10代目!あの雲雀がおおおおお女と一緒に」
「うん、びっくりしたね。お姉さんとかかなあ」
「それにしちゃあ全然似てなくなかったか?」

「「似てなかった!!」」

「あとすげーかわいかった」

「「かわいかった!!」」

ドス、ドス、ドス、ドス・・・という足音が接近し

「病院では静かに!」

「「「はーい」」」

超顔の怖い恰幅のいい看護婦さんに怒られたので今日の考察はここまで。






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