一方、は興奮気味だった。
変わらぬ日常、におい、景色、世界。
雲雀だけが君臨するの世界。


「今の中学生は雲雀のお友達?すごい、お友達たくさんね」
「友達じゃない」

嬉しそうな語調に苛立つ。

「あの小さい子も知っている子?はじめて小さい子抱っこしちゃった」

は手のひらにかかっていた重みと小ささを思い出しながら語尾をとろけさせ、はにかんで笑う。

「雲雀と同じ学校なの?」

知っている。君には家族がいない。

「何年生?」
「同じクラスなの?」

知っている。君には友達がいない。

「どうして病院にいるの?」
「同じ委員会なの?」

知っている。医者や看護師や他の患者も掃除の人も君を避けている。

(汚い金で長期入院中のあの子)

「よく遊ぶの?」

君には知り合いと呼べる人もいない。

「なにをして遊ぶの?」

誰も来ない。

「また来てもらえるかなあ」

誰も来なければいいと思ったのはいつから



「うるさい」



細い肩がビクと跳ねた。

「なにテンション上がってんの?むかつく」

雲雀は皮肉り、鼻で笑う。

「ぼくの目の前で群れるなら殺すよ」

下ろした手の中、まだ握ったままの武器。
イライラする。雲雀の腹の中で怒りが胎動する。
はビクと震えた瞬間と同じ顔のまま、雲雀を見上げて動けないでいた。
睨みつける猛禽類の目 VS 戦意のないびっくりした目。
先にそらしたのは雲雀だった。
鞄を乱暴に掴むと何も言わずに出て行った。


これはきっとたった一人の君臨する世界の終わり





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