「青年は理性強いね」とよくおっさんから言われる。「おっさんの理性が弱すぎんだ」と俺は言い返していた。そうでもないと思い知る。ダングレストの酒場でと会ってから、寝ると必ずが夢に出てくるようになった。その上ことごとくエロい夢になった。だからできるだけ寝ないようにして、遅くまで剣を振り回して眠気で気持ち悪くなるまでやってから倒れ込むように寝るようにした。倒れ込む頃にはたいてい朝になっていて、一時間くらいで起きて動き出す。かわりに昼間眠くて、「ユーリ聞いた?最近ダングレストの近くで夜な夜な剣を振り回す幽霊が徘徊してるんだって。なんか怖いね」「んー?あぁ、こえーなー」こんな感じで誰かに話しかけられてもよく頭に入ってこない。椅子に座ったまま目を閉じる。
・・・はなんでデュークを探してるんだろうか。
目を閉じた途端にまただ。なんだこれ。気持ち悪ぃ。ああ、気持ち悪いのは寝てないから当然か。そっか。













「依頼人さんはとっても綺麗な人だよ」とカロルに教えてもらって上機嫌に戻ったレイヴンが元気よく酒場の扉を開いた。

「美人美人!美人はどこだアレだああああ!」

お客さんが大勢いる酒場のなかで一瞬にして依頼人のテーブルまで駆け寄ったレイヴンはさすがだとカロルは感心した。
依頼人は酒場の一番奥のテーブル。
最初に会った時と同じくローブのフードを深くかぶっていた。

「こんばんは、美しいお嬢さん。凛々の明星のイカした司令塔的存在、あなたのレイヴンです御機嫌よう」

やたらエエ声で言い、サッとの手をとった。
も静かに立ち上がり、フードをとる。
白い石膏で作られたような硬質の美貌が再びあらわになった。
レイヴンは彼女の顔を見た途端、美しさにあてられたのか硬直している。

「ご機嫌よう」

容姿に似合う声音だ。

「もーレイヴン勝手に変なこと言わないでよ!」

酔っ払いを避けながら、カロル、リタ、ジュディスも追いついてきた。
ユーリはこの前と同じく、テーブルには寄らずカウンター席へ行ってしまった。
カロル、ジュディス、リタが椅子に腰かけようとした時、

「ちょっと失礼」

とレイヴンは早口に言い、ユーリ含めいつものメンツの腕を引っつかんだ。

「あぁ、お嬢さんはフードをかぶってしばしお待ちを」

と言いながら手早くの頭にフードを戻して椅子に座らせた。
腕を引っ張られたメンバーは天を射る矢の専用フロアまで連れてこられた。

「なによなによなによアレは!」

いつものおねえ言葉ではあるが、レイヴンはたいそう慌てている。



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