<デザインおよび創造プロセスに関する認知科学的研究>
[デザインスケッチの研究]
デザイナーは新しいアイディアを考案する際に、まずラフに手描きでスケッチすることが多い.
スケッチはデザイナーの認知プロセスでどんな役割を担っているのか?
この問題意識から生じた研究である.
結論から言うと、デザイナーは自分が描いたスケッチの中に、描いたときには意図しなかった新たな特徴を発見し、それに新たな意味を見いだせるからこそ、そこからアイディアが考案できるのである.ひとつのデザインプロセスにおいて、「何かを思いつきー曖昧でもスケッチとしてラフに描きー見て新たな特徴を発見しー意味付けをしてーまた思いつく」のサイクルが何度も繰り返された結果として、ひとつのデザイン案が生まれる.
ここで、
新たな特徴とは、スケッチ上での視覚的空間的な特徴(形、色、大きさ、位置関係など)である.
新たな意味付けとは、いま2007年の時点での諏訪のことばで言えば、デザイナーにとっての新しい「価値の創造」である.
認知科学的にはスケッチは外的な表象である.外的表象(例えばメモ)があれば考えが進んだり整理されたりするのも、全く同じ現象である.
メモに書いたことに新たな意味をみたり、違うときに書いた複数の事柄が(偶然近くに存在していたりして)関係を見いだしたりすることで、考えが進む.
ただ、スケッチなどの外的表象がありさえすれば、自動的に上記のサイクルが促進されるわけでない.
自分のスケッチを第三者的にみれる認知能力が必要である.
それが構成的知覚能力(constructive perception)である.
[創造プロセスの研究]
デザインを代表とする創造行為が認知科学的にどのような構造を有しているかに関する理論的研究.