『うそつき人魚』(仮題)


 昔、豊後の国、佐伯に五兵衛という漁師がおつたそうな。
 ある日、五兵衛が海で網を引いておると、網ん中にはなんと驚ろいたことにゃ、人魚が入とった。
 五兵衛は、えれー見っけもんじゃ、見せ物にしちゃろと思い、捕まえようとすると、人魚はこう言った。「うちにゃあ、年ばとった母さんが病で臥せっておるけん、私がいなくなると生きてゆけんとな」
 そこで五兵衛は、同情して人魚を放してやった。
 人魚はうれしそうに泳いで行き、下り松の岬まで行くと振りかえってこう言った。
「五兵衛は、馬鹿だい。小指一本が千両千両!」
 それ以来、ここら佐伯では、人魚はうそつきと相場がきまっとるんだそうな。

 注:方言は、私が適当に付けた物なんで、こんな言葉使ってないっていわれてもこまります。(^_^;

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