『ススキと人魚』
今は昔、冷泉の津、庄の浦に住んでおったミソミという娘っ子は、たいそう美しく村の若い衆のあこがれの的じゃった。
ある日のこと、村人が海へ漁に出かけている時、ミソミは龍宮から来たっちゅう美しい少年に出会ったそうな。
その少年は、言葉たくみにミソミをひきつけ、龍宮へと連れ去ってしまったのじゃ。
夕方になり漁から帰ってきた村人は、いつもならすぐ出迎えてくれるミソミがいないことに気づき、あちこちさがしまわったんじゃがとんと行方はつかめんかった。
しかし不思議なことに、その日からは、どんなに海が荒れとってもススキ(鱸?)だけはよう獲れるのじゃった。
それから幾年か立って村人たちがミソミのことなど忘れてしまったころ、博多の浜の柳が池で、人魚が網にかかり珍しいもんじゃと、あちこちの村から見物人が集まって来よった。
庄の浦の村人もどんなもんじゃと、覗いてみると、なんとその人魚の顔は、ミソミそっくりだったそうな。
その人魚がほんとうにミソミだったかはようわからん、じゃが村では、その日からススキがあまり獲れんようになってしまったのは、たしかんことじゃった。
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