鳳凰の国





--第1話 始まりの*命令一下--





  昔々ある所に、鳳、という王国がありました。
王様の名前は、伯鳳、といいました。王様は、自分の国と国民が大好きでした。
勿論、国民も王様の事が大好きでした。しかし、王様にはお妃様がいらっしゃいませんでした。
それでは困ると、国の大臣たちは隣国のお姫様を王様のお妃様にしようとしました。その事を
大臣たちは王様に言いましたが、王様はお見合いを断固拒否しました。
その後、似た様な事を幾度か試しましたが王様はいつも断固拒否を貫き当しました。
困った大臣たちは、お姫様ではなく平凡な村娘ではどうかと、王様に進言しました。
すると王様は、

「ふむ・・・、それならまぁ良い。」

と、何ともあっさり答えました。大臣たちはお互い顔を見合わせて驚きました。

「・・・但し、・・・。」

と、王様がそう言うと、また大臣たちは困ったような顔になりかけて言いました。

「た、但し・・・、何でございますか?」
「ふむ、・・・*余が直々に面接して決める。」

・・・・・と、一瞬の静寂が流れたかと思ったがすぐに大臣たちによって崩された・・・。

「「な・・・、なな何ですとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜」」

大臣たちが驚くのも無理は無い。何せ一国の王がいくら妃候補とはいえ、たかが村娘の一人や
二人を選ぶのに自ら面接して決めるなんて・・・、普通の王様は・・・・・しない・・・。
大臣たちは間髪入れずに王様に聞き返しました。

「へ・・・へ陛下、・・・お気は確かですか・・・。」

普通なら結構失礼なことを聞いている気もするが、今はそれどころではありません。

「ふむ、これは正気では言えぬ事だと思うのだが・・・。」

との、答えが返ってくると、大臣たちは皆心を揃えてこう思いました。

((普通の王様は、正気でそんな事・・・言わない・・・。))

この王様で本当に大丈夫なのか・・・、と大臣たちは時々思うのですが、
王様自体は立派なので口には出しません。

「ふむ、・・・何だ、大臣たちは余の意見には不服か・・・?」

しかし、大臣たちの不安をよそに、王様は結構天然入りのようでした。

「当たり前ではございませんかっ!大体、王が直々に出向いて決める、など・・・そんな前例は今までにはひとっっっつも、ございませんよ!!」

すると、王様は静かに答えました。

「・・・確かに、そなたたちの言うとおり前例などはない・・・。だが、誰も直々に出向くなど・・・言っとらんぞ。」
「いや、しかし先ほど・・・。」

言ってませんでしたっけ〜?、と大臣たちはそんな形相で王様を見ました。

「言ってない。余は直々に面接して決める、とは言ったがな・・・。」
「それもこれも同じではありませんかっ!」
「同じではない。それに見合いやら面接やらでも、余は一歩もこの城から出る気はないぞっ。」

もう何もかも分らなくなってきたような気が大臣たちを包みました。否、どうでもよくなってきたのかもしれません・・・。

「は、はぁ・・・、仰っている意味が我々にはさっぱりなのですが・・・。」

うん、うん。・・・と、この大臣の言葉にこの広間にいる者みんな(王様以外)が全員一致でそう思いました。
王様は王様で考えがあるようには見えました。

「ふむ・・・、だからな、簡単に言えば・・・・、・・・・・・。」
「・・・へ、陛下?・・・どうなさいました?」
「・・・もうよい・・・。」
「・・・え?」
「・・・もうよい・・・。」
「・・・は?」
「・・・ええぃ!!もうよいと申すに!よいか!明日の*朝参までに、我が国全土に王が王妃候補を募集しているという立て札を立てさせよ!!」
「「え・・・えええええええええっっっ!!!」」

王様はそのまま席を立とうとしました。
大臣たちはムリムリムリムリ〜っと、大声を出して叫んでしまいそうなくらいになりました。
一応この王様が治めている国は、昔の中国大陸の一部・・・といっても、まぁ、日本の5,6倍はある設定になっている(つもり・・・フィクションなので・・・)から、情報伝達もとてもではないけれど、1日ではムリな広さでした。

「・・・あっ、言い忘れてしまうところだったが、王妃候補は条件付だぞ。えー、そうだな・・・、勿論未婚の女子で歳は20まで。それから・・・才色兼備であり、それなりの気品と礼儀を備えた純粋な者、でなければならぬ・・・、・・・以上っ!」

・・・と言い残して、さっさと広間から出て行きました。その場には、陰険な雰囲気が残りました・・・。

「「・・・・・。(・・・なっ・・・・何ィィィィィィィィィィィィィィィっっっ!!!)」」

もっとムリじゃぁーーー、と大臣たちは危うく声に出しそうになってしまいました。
流石にこれは条件がきつすぎるだろう・・・、と思わないものは誰もいませんでした。
この王様は今まで*名君として名高く、こんな無理難題を命じる王ではありませんでした。
大臣たちは一体どうするつもりなのでしょうか?





次回につづく。





--言葉--
*命令一下・・・命令が下ること。
*余・・・一人称。われ。わたくし。やや尊大な、または、改まった言い方として男子が用いる。
*朝参・・・在京の官吏が朝廷に参内すること。
*名君・・・立派な君主。すぐれた君主。
 以上、三省堂「大辞林 第二版」より。











鳳凰の国にモドル? 次の話にススム?