テンポはアンダンテ(沖縄本島−玉城村(たまぐすくそん))


・真夜中の浜辺から、沖に向かって歩き出しました。
 満月の海の向こうの白い線は、リーフの波頭です。
 『よし!あそこまで行って、リーフの上に立つぞ!』
 一瞬のこのヒラメキは、現実には死をも意味します。
 「ハッ!」と我に返り浜辺を振り返れば、真夜中ドライブを
 走ってきた仲間が、ハシャイでいます。
 −『真夜中の浜辺は、人を沖へ誘う魅力を持っている。』と
 ハッキリ意識したのは、あの時からです。

・南部の新原(みーばる)ビーチは、昔は地元の人しか知らない
 小さながらとても美しいビーチでした。
 「浜辺の茶屋」や宮本亜門が別宅を建ててから、新原ビーチにも
 観光客を乗せたタクシーも来る様になってしまいました。
 最初に書いたの真夜中の浜辺の話は、二十年以上前の
 新原ビーチでのお話です。

・就職して東京出向になってからも、出張、友人の結婚式、
 コンサート等の用事で沖縄に帰ってくる度に、時間があれば
 来る所−それが新原ビーチでした。
 新原ビーチのパラソルの下で懐かしい海風に吹かれながら
 作った詩が『テンポはアンダンテ(歩くような速さで)』です。
 
・新原ビーチは、バスターミナルから直通バスが出ています。
 与那原(よなばる)を過ぎ、佐敷(さしき)の山を登る時には、
 中城湾(なかぐすくわん)の海がピカピカと光りながら眼下に
 広がります。百名(ひゃくな)の終点から新原ビーチへの坂を
 降りて行きます。少しずつ見えてくるビーチは、のんびり波打って
 いつもの顔で、僕を迎えてくれます。
 『沖縄に帰ってきたのです!』
 
・新原ビーチに行って何をするのかって?
 夏に来れば泳ぐ場合もありますが、季節はずれに来る事が多く、
 何もしない−『とぅるばる』(沖縄方言事で「ボンヤリする、ダレる」)
 為にやって来る事が多いです。まず、タコの木(パームツリー)の下の
 パラソルに座り、普段の倍くらいのスピードでタバコを吸い始めます。
 
・じっと海を眺め、海風を取り込みながら、私の時の流れるテンポを
 リタルダント(音楽用語−だんだん遅く)して行きます。
 私の場合は、東京のアレグロ(速く)を、アンダンテ(歩くような速さで)に
 落として行きます。
 時にはラルゴ(遅く)になってしまう事もありますが、それはその時の
 東京疲れの具合によります。

・東京には六年半いましたが、私には最後まであのテンポには違和感が
 ありました。東京は、いい所もたくさんありますが、『結局は各人の天秤
 で計って好き嫌い決めるのかな〜』とも思いました。
 沖縄の友人は、向こうの嫁さんをもらって、家も建てました。
 この間会ったら『当分沖縄には帰れんな〜』と、言っていました。


 ◎新原ビーチをサバニ(くり船)が行きます。


 ◎観光客を乗せたトラックも行きます。
 
 (049-2004/11/20記)

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