♯ヒコさん心の一曲−イタリア協奏曲(バッハ)


・グレン・グルードの弾くバッハの『イタリア協奏曲』に
 はまっています。バッハの『イタリア協奏曲』を皆さん
 ご存知でしょうか。普通、協奏曲というとバイオリンと
 オーケストラという様にソロ楽器とオーケストラの競演
 ですが、バッハは、それを一つのピアノ(バッハの当時
 はチェンバロ)で実現したのでした。『イタリア協奏曲』
 は、急−緩−急の3楽章構成ですが、特に第2楽章で言
 えば、右手がソロ・バイオリンで左手がオーケストラの
 伴奏という感じに作曲されています。

・盲目のバッハ弾きヘルムート・ヴァルヒャとテンポを
 比較すると第1楽章と第3楽章はグルードが速く、逆に
 第2楽章は遅いと思います。遅いといえば、レナード・
 バースタインと夢の競演の予定だったバッハのピアノ
 協奏曲(全6曲)は、第1番で終わっています。
 理由は、バースタインが我慢できないくらいグルードが
 テンポを遅く弾いたからだと聞いています。

・グレン・グルードは、カナダのトロントの生れですが、
 アメリカのレコード会社と契約した為、録音の時には
 アメリカに行く事になります。その時の必需品がマスク
 と大量のカナダの水と大量のタオルでした。理由は、
 「アメリカは空気も悪く、水も悪い。」でした。
 また録音を始める前にはお湯に手全体を浸して、十分に
 筋肉を暖めてから行ったと聞いております。確かにバッハ
 には、ウォーミングアップを十分行っておかないと指が
 骨折しそうな曲がありますが、お湯につけて暖めるという
 のもすごい話です。

・グレン・グルードの演奏を良く聞くと小さくですが、人の
 声が聞こえます。何とこれは演奏しながら歌っているグル
 ードが声なのです。曲の盛り上がる所では、かなり大きく
 聞こえるので、この歌声を最小にする為に録音エンジニア
 は、マイクの設定等で相当泣かされたのではないかと思い
 ます。
 
・バロックの巨匠バッハは、対位法という作曲技法を最終的
 に確立した人ですが、バッハの晩年にはクラシック音楽も
 モーツアルトやベートーベンの活躍する古典派への移行期
 にあたり、「バッハはすごいけど、古い。」という扱いを
 受ける様になっておりました。それからバッハは、練習曲
 として以外あまり演奏されない時代が続きました。それを
 近代に復活させたのはメンデルスゾーンです。

・現代を生きたグレン・グールドは、オーケストラやジャズ
 などの手法をとらずオリジナル楽器のピアノを使い、彼独自
 の個性的なバッハ解釈で熱烈に現代人に受け入れられました。
 想像ですが、あの世のバッハも初めは目をひそめたかもしれ
 ませんが、最後は「お前の解釈はおもしろい」と言ってくれ
 たのではないかと思います。

 (202-2005/07/09記)

 *著作権の関係で音や歌詞等は載せる事はできません。
  機会があれば原曲を聞く事をお勧めします。

BACK  INDEX  NEXT