♯ヒコさん心の一曲−ラルゴ(ヘンデル)


・ヘンデルは、バッハとほぼ同時代を生きたバロック音楽
 の巨匠です。バッハはその生涯をドイツ国内で過ごしま
 したが、ヘンデルは、イギリスに渡り、イギリス国王に
 愛されると共にその才能を開花させました。バッハも
 才能を認め、尊敬し、ドイツに一時帰国したヘンデルに
 会いに行った事もありましたが、数日違いで巨匠同士の
 会見は実現しませんでした。

・ヘンデルの名前を知らなくても、日本で「ハレルヤ」と
 言うとすぐに思い出されるあの「ハーレルヤ ハーレルヤ」
 を作った作曲家というと、なじみがわくかと思います。
 この「ハレルヤ」コーラスは、キリストの生涯を描いた
 オラトリオ「メサイヤ」の中の一曲ですが、この曲が
 始まるとイギリス国王も立ち上がって、敬意を表したと
 伝えられています。

・イギリスにはヘンデルの銅像がありますが、その銅像が
 持っている楽譜の曲名が『ラルゴ』です。『ラルゴ』
 とは、曲のテンポを指示する用語で「幅広くゆるやかに」
 くらいの意味です。
 「ヘンデルのラルゴ」というと、オペラ「クセルクス」
 の中の「オンブラ・マイ・フ( 樹木の蔭で)」を指し
 ます。この曲のテンポが『ラルゴ』であり、曲名が覚え
 ずらかった為か?曲のテンポを指示する用語が「通り名」
 となった珍しい曲です。

・『ラルゴ』の素晴らしさに目覚めたのは、サックスフォ
 ーンのクラシックコンサートでした。サックスフォーン
 というとジャズ専用の楽器の様に思われ勝ちですが、
 クラシックの楽器として生まれ、ビゼーの「アルルの女」
 等では盛んに使われています。サックスフォーンコンサ
 ートのアンコールで演奏されたのが、『ラルゴ』でした。

・「クセルクス」は、喜劇オペラですので、『ラルゴ』を
 作曲した時のヘンデルの気持ちはわかりませんが、この
 曲を聞くと、バッハの「G線上のアリア」にも通じる
 清楚さと宗教的な静寂を感じるのは私だけでしょうか?
 途中の印象的な三連符をはさみ、曲はどんどん盛り上
 がって行きます。そして、フェルマータ(特定の音を
 伸ばす)の後、静かに終わる。
 聞き始めると曲に引き込まれてゆき、心の奥に清らかな
 気持ちがわいてくる、そんな素晴らしい曲が『ラルゴ』
 だと思います。
 
・私にとってのヘンデル実体験は、彼のフルートソナタの
 ニ短調を大学の実技試験で吹いたことでした。「バッハ
 やモーツアルトは、難しいのでヘンデルのフルートソナタ
 で行こう!」。安易な選択でした。
 3拍子の曲でしたが、アーフタクト(強弱をわざとずら
 す技法)が多用されている曲で、先生から「お前の演奏
 は、3拍子でなく4拍子に聞こえる」と怒らたことを思
 い出します。

 (204-2006/06/18記)

 *著作権の関係で音や歌詞等は載せる事はできません。
  機会があれば原曲を聞く事をお勧めします。

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