♯ヒコさん心の一曲−ボレロ(ラヴェル)
・私は、毎日ラヴェルの『ボレロ』を聞いています。
といっても、CDとかではなくて、浄水器のBGM
としてです。トイレの隣の流し場の浄水器から、水
が流れる間中『ボレロ』のメインメロディーが繰り
返し鳴るのです。ですから、トイレに行っても、
そばを通っても、聞こえるので、最低一日一回は
聞いていることになります。
・ラヴェルの『ボレロ』は、一本のメロディーの繰り
返しなのですが、繰り返す毎に、演奏する楽器が変
わり、楽器も増えてゆき、音の厚みも増していきます。
砂漠のはてからやって来て、目の前に近ずいてくる物。
ケシ粒程だった姿が、近ずいてくるにつれて、どんどん
大きくなって来る。それにつれて、心も広がり、雄大
気持ちになってゆきます。目の前に来た時には、巨大な
塊となり、立ち上がり、最後に崩れ落ちる。
これが、私の『ボレロ』のイメージです。
・基本的に同じメロディーの繰り返しなのですが、聞く
人のイメージを無限に広げる曲。人々は、その繰り
返しに心と体をゆだねていき、曲の盛り上がりととも
にイメージも鮮明となり、膨らんでいきます。そして、
最後の崩れ落ちる部分で、我に返ります。
心地良い余韻とともに‥‥。
そんな不思議で魅力的な名曲です。
・『ボレロ』は、ワンコード(和音)構成の曲です。
最後の最後で崩れ落ちる部分は、違うコードですが、
それまではずーっと同じコードです。ずーっと同じ
コードなのに、聞いている人を飽きさせる事はなく、
気が付くと最後の崩れ落ちる部分にたどりついている。
ラヴェルの魔法のような作曲テクニックにみんな、
はめられてしまっています。迷曲です。
・ワンコード構成というと、わらべうたや単純な民謡が、
ありますが、クラシックの世界では、まずありません。
西洋のクラシック音楽は、旋法や形式、終止形等の法則の
上に成り立っているからです。「ワンコードで作曲しろ!」
と言われたら、できるにはできますが、聞いていて面白く
ないし、多分わらべうたか、民謡調になると思われます。
・ロックの世界でもワンコード構成の名曲があります。
ビートルズのリボルバーというアルバムのラスト曲「トゥ
モロー・ネバー・ノーズ」です。作曲者のジョンは、チベ
ットの「死者の書」からインスピレーションを得たと言って
います。また、メンバーのジョージは、「この曲は、インド
の文化や音楽の影響を強く受けている。」と言っています。
CMの世界でも『ボレロ』は、ヒット作品です。車等のCM
で手を変え、品を変え、何度も使われています。
雄大な自然をバックに走る車には、ピッタリな曲ですね。
・私にとっての『ボレロ』体験は、『ボレロ』のリズム当て
問題で間違えた事です。大学の音楽概論か?何かの授業で
『ボレロ』が使われました。『ボレロ』の基本リズムを
リズム譜で表すとA、B、Cどれが正しいか?という質問
に見事に当てられ、見事(?)に間違えたのです。それを
今でも、教室の情景とともに覚えています。実際の所、
「そんな事、急に聞かれて〜も〜」という感じでした。
そしてその授業で、ラヴェルの『ボレロ』がワンコード
構成の曲であると教えられたのです。本当に迷曲です。
(214-2006/07/17記)
*著作権の関係で音や歌詞等は載せる事はできません。
機会があれば原曲を聞く事をお勧めします。