♯ヒコさん心の一曲−天までとどけ(さだまさし)


・フォークシンガー さだまさしの曲というと、どの曲を
 思い出しますか?前回のイルカの『君は悲しみの』と同じ
 書き出しですが、さだまさしの場合は、フォークシンガー
 というより、ニューミュージックという肩書きの方が似
 合うように思えます。
 「フォーク」と「ニューミュージック」。時代的な後先は、
 ありますが、「ニューミュージック」は、何年からとか、
 誰からとかは、あいまいに思われます。それはユーミンを
 「フォークシンガー」と呼ぶと不釣合いに感じる事で象徴
 されると思います。
 
・さだまさしの曲といえば「精霊流し」は外せませんが、これは
 「グレープ」時代の曲です。「グレープ」は、長崎のフォーク
 仲間の吉田とさだまさしが作ったディオグループで「追伸」、
 「無縁坂」などのヒットを出して解散しました。

・さだまさしの曲作りは、巧みです。文学の素養を活かして
 女性心理をつかむ詩を書き、バイオリンで鍛えた耳で曲を
 作ります。コンサートでは、「落語同好会(?)」で鍛え
 た舌を活かして会場を盛り上げます。ライブ録音なのか
 会場の笑い声が入った「雨やどり」は、さだまさしらしい
 曲の一つです。「関白宣言」もさだまさしならではの曲、
 逆に言うとさだまさしにしか書けない曲だと思います。

・『天までとどけ』は、テレビ番組の主題歌だったと思います。
 初めて聞いた時に、さだまさしの一つの頂点を聞いた気が
 しました。そして、「この曲は大ヒットするだろう」と思い
 ましたが、中ヒット程度で終わったようです。さだまさし
 の一つの頂点とは、さだまさしにしか書けない曲のタイプ
 の集約点という意味で、『天までとどけ』は、シンプルな
 曲作りながら、素直にさだまさしのすべてが入っている
 ように私には思えたのです。

・「♪出会いはいつでも 偶然の風のなか〜」で始まる『天
 までとどけ』。初恋で終わる年頃を過ぎ、もっとうまく、
 そして素直に自分の心を表した時。そしてそれに相手が答
 えてくれた時。心は舞い上がり、まさに天までとどきそうです。
 その人がそばにいるだけで、時間の流れも空気の色さえも、
 違って見えてくる。人生で数少ない喜びの季節の到来です。
 
・「♪舞い上がれ風船の憧れにように 二人の明日 天まで
 とどけ〜」。今日、この時。そして明日も、そう「二人の明日」
 なのです。今、この世には二人っきりしかいない。他の人が
 見えないのです。この人生で一番楽しい季節をみごとに切り
 取り、優美なメロディーにのせた『天までとどけ』。
 やはりこの曲もさだまさしにしか書けない素晴らしい一曲
 だと私は思います。

 (318-2006/03/11記)

 *著作権の関係で音や歌詞等は載せる事はできません。
  機会があれば原曲を聞く事をお勧めします。

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