♯ヒコさん心の一曲−ほのかな光の中に(中村透)


・大学の卒業をひかえた頃、大学時代の恩師である中村透先生
 から「卒業おめでとう」と書かれたカセットテープをいただきました。
 このテープは、中村先生の作曲の講義を受講した全員に渡され
 ました。テープの1曲目は、講義の最後に課題として作曲した曲、
 2曲目は中村先生作曲及びピアノ演奏の『ほのかな光の中に』
 でした。

・私のテープの一曲目には、ピアノとフルートのための「眠りの
 精の主題による9つの変奏曲」が入っていました。ピアノは、
 同級生の女の子でしたが、フルートは、ありがたいことに中村
 先生が当時沖縄交響楽団のフルート奏者だった方を呼んでくだ
 さいました。しかし、演奏及び録音された教室に私はいません
 でした。私は、母の急死の後体調を崩し、休学していたのです。
 ですから、復学後にテープを渡された時にはとても驚くと共に
 感激しました。

・中村透先生は、国立音楽大学作曲科を卒業され、琉球大学教育
 学部音楽科の講師として沖縄にいらっしゃいました。沖縄に来て
 からは、沖縄の音楽に触発されて、素晴らしい作品を数多く作曲
 されております。オペラ「キジムナー時を翔ける 」は、「文化庁
 優秀舞台創作奨励特別賞」を受賞した名作です。また先日は、
 「第二回宮良長包賞」も受賞されました。

・大学での中村先生の講義は、アイデアや工夫にあふれている
 上にとても実践的なもので、私はいつも胸をワクワクさせて受講
 しておりました。たとえば、グループにメロディーだけの譜面が
 渡されて、一時間で編曲してそこら辺にある楽器で演奏する。
 「茶色の小びん」、「アメリカンパトロール」、「エーデルワイス」、
 「ホルディリ ホルディア」等、工夫に工夫をこらして、思いっきり
 遊ぶという感覚で最高におもしろかったです。あの頃は中村
 先生も30歳を少し過ぎたばかりのバリバリの頃だったので、
 どの講義もとても張り切っていらっしゃいました。

・『ほのかな光の中に』の私のイメージは、「心から楽しい事が
 あった夕暮れ、その余韻にひたる」という感じで、とても心安
 まる曲です。静かに始まりいろいろな作曲技法を使い、曲を盛
 り上げていく。しかし、甘ったるい気分に終止しない中間部が
 あり、またあの心安まるメロディーが戻ってくる「さすが!中村
 先生」という曲です。私の拙い変奏曲の後に、『ほのかな光の
 中に』がこえてきた時には、何かホッとした気持ちになるととも
 に改めて中村先生のやさしさにふれた気がしました。

・その後も中村先生には本当にお世話になりました。私の作詩や
 作曲した曲がビクターからCD発売され、印税というものをもらう
 経験をさせていただいたのも先生のお蔭です。この間、久しぶり
 に中村先生を囲んで、あの当時の仲間が集まった時に「音楽は
 続けろよ」と言ってくださいました。
 「音楽」と「沖縄」そして「家族」があったから、私の人生はここまで
 これたと常々思っています。三線も、ちゃんとした先生について、
 この六月から週二回の練習に通っています。CD作りもこの歳に
 なると「創る喜び」より「曲創りの難儀さ」の方が大きくなり勝ちと
 なりますが、来年の3月完成を目標にコツコツと19枚目作りを始
 めました。
 「音楽は一生もの」と私は思います。そして、素晴らしい先生に
 出会れば、もっと深い音楽を体感できると思います。私にとって
 中村先生は、そんな素晴らしくて、とてもありがたい先生です。

 (401-2005/09/10記)

 *著作権の関係で音や歌詞等は載せる事はできません。
  機会があれば原曲を聞く事をお勧めします。

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