♯ヒコさん心の一曲−涙の乗車券(ビートルズ)
・二作目の映画サウンド・トラック・アルバム「ザ・ビートルズ
4人はアイドル」の7曲目は和訳曲名で『涙の乗車券』、原曲
名は「ティケット・トゥ・ライド」、直訳すると「乗車券」と
なります。
「ビートルズの新曲「乗車券」!」だと、日本では「?」が点灯
してしまうので、頭に「涙の」をつけて和訳曲名にしたと思います。
他にもモンキーズの「恋の終列車」の「恋の」とか、「嘆きのイン
ディアン」の「嘆きの」は、和訳曲名作成時に追加された接頭語(?)
です。「乗車券」より『涙の乗車券』の方が、日本人には、親しみ
やすく、覚えやすいと考えた東芝EMI社、ビートルズ担当者の、
「涙の」結晶だと思います。
♪きっと寂しくてたまらなくなるよ
今日からずっと
僕を夢中にさせた君が
遠くに行ってしまうのだから
君は乗車券を買った
僕に相談もせずに
君は乗車券を買った
もう僕のことなんてどうでもいいんだね
・ジョンは、この曲について「ビートルズが初めて演奏したヘビーな
サウンド」とコメントしています。当り前ですが、その後の「ハード・
ロック」、「ヘビー・メタル」等の出現を知らない当時のジョンには、
「ヘビーな」という表現が、マトを得ていたのだと思います。
私にとっての『涙の乗車券』は、「ポップ・ロック」(こんな言葉は
ありませんが)の大傑作だと思っています。理由の一つとして、この
曲は弾き語りでも、バンドでやっても、超ノリノリになれるロック
だからです。
・出だしの「ドラム三連譜」。これだけで心ウキウキになります。
そしてエレキの「イントロ」。これでプラス、ウハウハのノリです。
三連譜とは、「1つの音符に三つの音を三等分して弾く」事ですが、
この曲の場合は、二分音符を三等分する事によって、曲の個性と意外性
を出しています。そして、この複雑な伴奏に乗って「♪I think I'm
gonna be sad〜」と歌う⇒正に神業(?)です。
このドラムとイントロは、ポールのアイデアだそうです。そういう
意味で『涙の乗車券』は、レノン・マッカートニー作品、中期の大傑作
と、私は考えております。
・「ザ・ビートルズ・アンソロジー」という5枚組みのDVDを持って
います。その7巻にビートルズとインドのヨガ指導者マハリシ・ヨギ氏
との出会い及びマラケシュでの研修会参加の模様が収められています。
ビートルズとインドの関係は、映画「ヘルプ」でのインド料理店での
シーンがきっかけです。ヨガの逆立ちや針山修行シーンもありましたが、
インド楽器による「ア・ハード・デイズ・ナイト」の演奏シーンも、
ありました。ジョージは、インド楽器の一つのシタールに強い興味を
持ちました。そして、ビートルズの楽曲に取り入れたりするうちに、
インドの名シタール奏者ラビ・シャンカールと知り合い、ヨガの指導者
マハリシ・ヨギ氏とも知り合いとなりました。
このマラケシュ研修会参加は、ジョージの呼びかけに他の三人が応じた
形でした。
・ジョンは、ビートルズの大ブレイク前に、学生時代からの友人シンシア
と結婚していて、ジュリアンという子供も生まれていました。ビートルズ
の海外巡業にも度々いっしょに行っていたようですが、「ジョンの結婚」
に対するインタビューについては、マネージャーのブライアン・エプス
タインの指示もあり、ジョンは、いつもはぐらかした回答をしていました。
これは妻のシンシアにとって、耐え難い事の一つだったのかもしれません。
・世界的大スターとなって行くジョンと妻のシンシア。
二人の間には、いろいろな理由ですきま風が吹き始め、それを決定的に
したのが、このマラケシュ研修会でした。
シンシアは、マラケシュ研修会へ向かう列車に乗り損なってしまったの
です。ホームには、ビートルズファンが溢れ、本来ならジョンに手を
とってもらい、列車に乗車する所ですが、それは禁止されていました。
走り去る列車にシンシアは「ジョンとの終わりを感じた。」とDVDの
中で語っています。私のこじつけですが、正に『涙の乗車券』の男女逆
ヴァージョンです。
・カーペンターズの「涙の乗車券」って聞いた事がありますか?
カーペンターズのデビュー曲です。リチャードのピアノから始まります。
イントロだけからビートルズの『涙の乗車券』を想像する事は難しい
くらいです。リチャードは、カーペンターズカラーを出す為にわざと
「ドラム三連譜」もエレキの「イントロ」も一切転用していません。
この根性(?)が、カーペンターズを世界的大スターにのし上げたの
だと、私は思います。カーペンターズの成功と親しみを表す言葉として、
「当時のアメリカの家庭には、カーペンターズのアルバムが必ず一枚
以上あった。」があります。
当然ですが、カレンの歌う「涙の乗車券」は、男女逆ヴァージョンの
歌詞です。「♪He's got a ticket to ride 〜 」
(510-2007/1/5記)
*著作権の関係で音や歌詞等は載せる事はできません。
機会があれば原曲を聞く事をお勧めします。