♯ヒコさん心の一曲−シーズ・リービング・ホーム(ビートルズ)
・アルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ
・バンド」5曲目の「フィクシング・ア・ホール」(和訳すれ
ば、「穴を修理する」、「穴をふさぐ」くらいの意味)も、
前回の「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」
と同じく、「ドラック体験を歌にした」と言われてきました。
「部屋中を極採色に塗りまくる」等の歌詞は、そういう匂いを
感じさせる部分ではあります。
・「フィクシング・ア・ホール」の叫ぶような歌声が、フェード・
アウトして、6曲目。ハープのアルペジオに、心が居住まいを
正し、「清楚」という言葉が浮かんでくる曲。
『シーズ・リービング・ホーム』です。
和訳すれば、「彼女は、家を出て行く」。つまり娘の家出です。
そして理由は、車のセールスマンとの駆け落ちです。
♪水曜の朝5時 夜明けと共に
寝室のドアをそっとしめて 階段を降りる
準備していた書き置きを 居間におきながら
「わかってちょうだい」とハンカチを握り締める
裏口のドアをそっと開けて、外へ
今 彼女は 自由の身となった
(私達は 人生のすべてを捧げて 育てたのに)
(私達は 生活を犠牲にしてまで 育てたのに)
(私達は 欲しいというものは 何でも買ってあげたのに)
彼女は、家を出てゆく 孤独の日々を捨て去るように
・ストリングの伴奏は、「イエスタディ」、「エリナーリグビー」
に続く三曲目です。前の二曲と『シーズ・リービング・ホーム』
のストリングの編曲が違っていると思い調べて見ると、いつもの
プロデューサのジョージ・マーティーンではなく、マイク・リー
ンダーという人がやっていました。伴奏は、ストリングのみで、
ギターやドラムは一切入っていません。アルバム「サージェント
・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の「静の美」
の代表曲と、私は考えています。
・昔、テレビで、霊能者がイギリスの旧い幽霊屋敷を訪ねるという
番組を見ました。霊能者が屋敷に近づくと「あの窓から娘が見て
いる!」と叫びました。その館は、無人のはずです。
カメラがその窓をアップにしますが、カメラに人影は写りません。
霊能者が中に入り、屋敷牢を見つけます。霊能者は、「ここは
旅芸人に恋をした娘が、家出をしないように閉じ込めていた所で、
さっきの窓の娘が閉じ込められていました。」と指摘しました。
・この話を聞いた時、私の中でイギリスの旧い屋敷の心霊現象と
『シーズ・リービング・ホーム』とが結びついてしまいました。
親は、変な虫がつかないようにと、「箱入り娘」を強いてきた
のかと思います。それは、娘を愛するを通り越して「親の身勝手」
になっていたかも知れません。しかし、娘は成長し「この境遇を
変えてくれる何か!」を求め始めます。
・たまたま出会った男に、恋をしてしまい、耳元で囁かれた甘い
言葉に、ウブな「箱入り娘」は「この男が私を自由にしてくれる」
と信じ、飛びついてしまいました。
親は「手塩にかけて育てたのに、何と言うヒドイ仕打ちでしょう」
とオロオロと嘆くばかりでした。
「この境遇を変えてくれる何か!」は、何でも良かったのかもしれ
ません。又、家出した娘が、幸福になれるかどうかはわかりませんが、
「子が自ら選んだ親離れ」の一歩を踏み出した事は確かな事です。
(516-2007/2/18記)
*著作権の関係で音や歌詞等は載せる事はできません。
機会があれば原曲を聞く事をお勧めします。