♯ヒコさん心の一曲−ザ・ロング・アンド・ワイディング・ロード(ビートルズ)


・前々回の「ヒア・カムズ・ザ・サン」で「アビイ・ロード」
 と「レット・イット・ビー」の制作と発表順序が逆である
 事と、アルバム化のプロデューサは「フィル・スペクター
 が行った」と書きました。
 アルバム発売前に、ビートルズ4人は、フィルが切り貼り、
 編曲と苦心した「レット・イット・ビー」を聞きました。
 あの延々と続くセッションの中からいいテイクを取り出し、
 途中に会話を入れて臨場感を盛り上げてくれた等 評価は、
 上々でした。しかし、この1曲については、「オリジナル
 のシンプルな演奏の方がいい!」とポールが強く言ったのが
 『ザ・ロング・アンド・ワイディング・ロード』でした。

・今、ポールが言うオリジナルのシンプル・ヴァージョンは、
 2003年発売のアルバム「レット・イット・ビー...
 ネイキッド」で聞く事ができます。本当にシンプルです。
 常に「シンプル イズ ベスト!」とは限りませんが、
 フィルの編曲は、飾り立て過ぎていて「ポールの曲への
 想い」と、ずれていたのかもしれません。
 フィルは、全体に生々しい音が多い中、アルバムのラスト
 に、オーケストラにコーラスという壮大できらびやかな
 「ウォール・サウンド」による『ザ・ロング・アンド・
 ワイディング・ロード』を生み出したかったと思います。
 二つの編曲は、両極端という感じであり、どちらもそれぞれ
 の味があるというところでしょうか。

♪この長く曲がりくねった道は
 君の家へと続く 
 永遠に消えない道
 何度も歩いた道
 そして 君の家のドアまで
 いつも導いてくれた道
 
 ‥‥

 孤独が僕を襲い
 何度も泣いた
 君は知らないけど 
 その度 僕は 
 勇気を奮い起こし
 立ち上がってきたんだ

・初めてフィル版の『ザ・ロング・アンド・ワイディング・
 ロード』を聞いた時は、事情をあまり知らなかったせいも
 ありましたが、「なんだこの曲は?ヒット狙いか?」と
 私的にはとても低い評価でした。しかし、ポールは、この
 曲に入れ込み、解散後のバンド「ウィングス」や、映画
 「ヤァ!ブロード・ストリート」でも歌っていました。
 編曲はともかくとして、ビートルズ時代のお気に入りの
 一曲だったようです。

・『ザ・ロング・アンド・ワイディング・ロード』は、失恋
 の歌かもしれません。
 ポールの「ビートルズは僕のすべて」という心の叫びかも
 しれません。
 そして、飛び上がるほど楽しい時もあれば、腹わたが煮え
 くりかえる時もあった「長く曲がりくねったバンド活動も
 終わる」という、一種の安堵感があるのかもしれません。

・初めて聞いてから随分時が過ぎて、当然私も歳をとって、
 久しぶりにアルバム「レット・イット・ビー」を聞きました。
 『ザ・ロング・アンド・ワイディング・ロード』に、心が
 官能しました。いつも聞き流して、次の「ゲット・バック」
 に官能していたのが、変わりました。「曲の真価を知った」
 では、言い過ぎかもしれませんが、最初の持った印象が拭い
 去られ「突然この曲の魅力がわかった!」のでしょう。
 タイトル曲「レット・イット・ビー」は、別格として、最初
 からお気に入りの「アクロス・ザ・ユニバース」くらい素晴
 らしい曲だと、初めて認識した瞬間でした。

 (527-2007/5/5記)

 *著作権の関係で音や歌詞等は載せる事はできません。
  機会があれば原曲を聞く事をお勧めします。

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