♯ヒコさん心の一曲−4月になれば彼女は(S&G)


・映画「卒業」には、面白い場面がたくさんありました。
 たとえば、父親が優秀な成績で大学を卒業した自慢の
 息子ベンのお披露目ホームパーティーのシーンです。
 父が息子に用意したサプライズ・プレゼントは、旧式
 潜水服でした。それを着て家のプールの中を歩くベン。
 まるで潜水服を着た道化師のような映像です。
 ベンは、親の言う事をよく聞く優しい息子でした。

・親思いベンの優しさをいいことに、親はいつまでも
 自分のコントロール下で「子供扱い」にしておきたい。
 「親のエゴ」、「子離れできない親」です。
 ベンの結婚相手に、ロビンソン家の娘エレーンを
 押しつけようとします。
 しかし、エレーンの母ミセス・ロビンソンとできて
 しまったベン。
 「子の独り立ち」、「親離れする子」の始まりです。 

♪4月 雨で小川の水かさが増す頃
 彼女は来る
 5月 僕の腕の中
 彼女は安らぐ

 ‥‥

 8月 秋風が寒々と吹く頃
 彼女は死んでしまう
 9月 僕は思い出すだろう
 かって新鮮だった愛が冷めてしまっている事を

・子供、思春期、青春期、若者、社会人そして大人。
 生を受けてから、人生の名称はどんどん変わります。
 子供から大人へ、親と同じ大人というものになるのです。
 親と同列とは言えませんが、社会的にはもう大人です。
 そして、仕事、結婚、子作り、家造り‥‥と、順番良く
 こなす事を強く望まれます。真綿のプレッシャーです。

・私が「人生の自由」を初めて実感したのは大学時代でした。
 同時に「昔はうまくできたことが、今はうまくいかない。」
 という思いに、何度もぶち当たった時代でもありました。
 「なぜだろう?」と立ち止まる時は「うまくできていた」
 と感じていた昔の出来事を思い出してみるのでした。
 そう遠くはない昔だったので、沁みるような懐かしい経験、
 少々スッパく愛おしい経験が、続々によみがえってきました。

・それは、映画「卒業」でベンが思い悩む場面と、ダブり、
 私は、ディジャブの感覚にとらわれました。
 その場面の挿入歌が『4月になれば彼女は』でした。
 童話からヒントを得たという歌詞は、外国絵本の綺麗な
 挿絵を思い出させます。伴奏は静かにギター一本だけ。
 アート・ガーファンクルの澄んだ声が、マッチしすぎて
 怖いくらいでした。
 
 (612-2007/9/16記)

 *著作権の関係で音や歌詞等は載せる事はできません。
  機会があれば原曲を聞く事をお勧めします。

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