♯ヒコさん心の一曲−童神(わらびがみ)(古謝美佐子)
・初めて生演奏の『童神(わらびがみ)』を聞いたのは、
沖縄のサンエーという大型スーパーのステージでした。
歌手は、大ブレイクする前の夏川りみで、「涙そうそう」
の後に『童神』を歌いました。途中で赤ん坊を抱くよう
なしぐさが入り、曲の優しさを盛り上げていました。
・夏川りみは、『童神』を歌うようになった経緯をこう
話していました。古謝美佐子(こじゃ みさこ)の
アルバム「天(あま)架ける橋」に収録されたこの曲
を聞いて感動し『自分も歌いたい!』と強く思った
そうです。そこで、古謝美佐子にお願いすると、あっ
さり「いいよ。」と承諾されたそうです。大ブレイク
する前の夏川りみのお願いにあっさりOKを出す。
私はこの話を聞いた時『古謝美佐子の人柄が出ている
話だな〜』と思いました。
・「天架ける橋」は、古謝美佐子の人生の喜びと哀しみ
が凝縮されながら、全体的にはカラリと仕上がった
アルバムです。『童神』は、古謝美佐子の初孫が誕生
した時に書いた詩に、作曲家で夫でもある佐原一哉が、
曲をつけました。曲は、最初に幼児の笑い声が流れ
ます。そして、しっとりとした古謝美佐子の『童神』
が流れ、最後も幼児の笑い声で終わります。
・「おきなわでは物心つくまでの幼児は、純白であり、
神の魂に近い心を持ち『童神』と呼ばれる。」と、
解説に書いてあります。「子宝」という言葉があり
ますが、沖縄では、子供を宝としてだけでなく、神
として大事扱う心が、培われていたのです。
・古謝美佐子は、八歳から沖縄民謡を習い始めました。
元YMOの坂本龍一のツアーに同行した事で一躍有名
となり、その後、初代ネーネーズのリーダーとしても
大活躍しました。私は、その年季の入った歌声にシン
の強さとともに一抹の哀愁を感じます。
・アルバム名「天架ける橋」とは、四歳の時に亡くなった
父と、最近亡くした母が、手を取り合って渡る橋のこと
です。解説の歌詞の横には、流行の帽子をかぶった若い
父と亡くなる前の老いた母の写真が並べられています。
アルバムの曲順は、「天架ける橋」の次が『童神』です。
深読みすれば「死して夫婦の再会」と「生まれた子供
との出会い」。輪廻転生を表していると言えるかもしれ
ません。
・このアルバムは何度も聞きました。
「サーサー節」は、昔の毛遊び(もうあしび)の風景が
目の前に広がるような民謡です。
「橋ナークニー〜夢かいされ」。ベテラン民謡歌手の
ナークニーそしてかいされは、余裕のある見事な歌い
っぷりです。私も『この半分でもいいので余裕を持って
ナークニーを歌いたいものだ』と聞く度に思いました。
(1022-2006/06/10記)
*敬称は略してあります。
*著作権の関係で音や歌詞等は載せる事はできません。
機会があれば原曲を聞く事をお勧めします。