♯ヒコさん心の一曲−いちゅび小節(沖縄民謡)


♪いちゅび小に 惚りてぃ   <いちゅびグァに フりてぃ>
 座喜味村 通てぃ      <ザマミムラ カュてぃ>
 通てぃ通いぶさ 喜名ぬ番所 <カュてぃカュいぶさ キナぬバンショ>
 サー思やがちょん      <サーウムやがちょん>
 加那志がちょーん      <カナシがちょーん>

◎いちゅび小に 惚れりてぃ
 座喜味村に通って     
 通って通いぶさ喜名の番所 
 サー思やがちょん     
 加那志がちょーん  

・『いちゅび小』を見染めて、彼女の住む村に通いつめた青年がいました。
 やがて、青年の努力が実を結んだのか、二人は恋人同士となりました。
 座喜味村は、現在の読谷(よみたん)村、国道58号線に面した地区です。
 交通の要所、国道沿いに喜名部落があり、昔は番所が置かれていました。 

・「いちゅび」は、方言で「イチゴ」なので「イチゴちゃん」という娘ですか?
 昔の女性の名前で台所用品では「ナベ」、「カマド」などがありました。
 動物では「チルー(鶴)」、「ウシー(牛)」などもありましたが、
 「イチゴ」という名前は聞いた事がないので、「あだ名」かと思われます。

♪いちゅび小とぅ 連れてぃ     <いちゅびグァとぅ チィれてぃ>
 花ぬ上に ちゃしが        <ハナぬウエに ちゃしが>
 思事ぬあてぃどぅ 戻てぃ行ちゅる <ウムコゥぬあてぃどぅ ムドゥてぃイちゅる>
 サー行ちゃらんぐとぅ       <サーイちゃらんぐとぅ>
 戻いるすがや           <ムドゥいるすがや>

◎いちゅび小と いっしょに
 花の上のいるようだったが     
 思う所があって 戻ってきた
 サー行ちゃらんぐとぅ     
 戻いるすがや  

・恋する二人には、期間限定ながら、二人だけの独立国のような世界が生まれます。
 国民が二人きりなので「食う・寝る・遊ぶ」が、オールタイム二人の世界です。
 「♪花ぬ上に ちゃしが」の歌詞の様に、雲の上にホワンホワンという感覚で、
 両思い状態(特に初期)は、「生まれてきて良かった!」と思う人生最高の時です。

・しかし、青年は、そこから「♪思事ぬあてぃどぅ 戻てぃ行ちゅる」と言うのです。
 「思う所があって戻ってきた」は、いくつかの沖縄民謡でも使われている歌詞ですが、
 彼女とのハニータイムをも中断させる「思う所」は、具体的には歌われていません。
 「男の思う所」とは、恋愛とは別次元の「男が一人で立ち向かう道」と、私は思っています。
 
 (1136-2010/3/27記)

 *民謡の歌詞は、地域で若干違う場合もあります。
 *著作権の関係で音や歌詞等は載せる事はできません。
  機会があれば原曲を聞く事をお勧めします。

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