<ブラボー、クラシック音楽!−折々の感想#1>
「ブラボー、クラシック音楽!」発足の経緯
[2005年10月の第13回例会:1周年
(Details of our CLASSIC event start-up)

−− 2005.10.26 エルニーニョ深沢(ElNino Fukazawa)
2006.08.05 改訂

 ■はじめに − 1周年を過ぎて
 私が主宰するクラシック音楽を楽しむ会【ブラボー、クラシック音楽!】04年10月1日(金)14時「前衛」(大阪市淀川区西中島→「その後」の章を参照)に於いて産声を発して以来1年を経過し、05年10月13日(木)に1周年の例会(=第13回例会)を開催することが出来ました。この日は1年間の成果と自信の上に幅を広げる為に<室内楽>+<大管弦楽>をテーマに掲げて、先ずCDを聴きました。その後で1周年を記念して音楽専攻の元榮正信君(当会会員)が友人の作曲家・船本孝宏氏を伴いイタリア民謡などを熱唱し、船本氏が自作の曲をピアノ演奏されました。
 初めは会が「何時頓挫するか?」という不安を抱え乍らのスタートでしたが、1年を経て最低限の区切りを乗り越え得た様に感じ、同時に今後の会の運営と継続に或る程度の自信と展望が生まれました。これも会員の皆さんの御蔭と感謝して居ます。これを契機に、今迄会で採り上げて来た曲の「曲目解説」を書こうと思い立ちました。それと同時に「折々の感想」を覚書程度にメモして行く事も思い立ち、曲目解説の前に先ず最初は「当会への私の思い」(=会の構想)と「会発足の経緯」を記すべきと考え当ページの筆を起こしました。

 ■私の構想 − 心の豊かさ、そして感動
 当会創設前に抱いて居た私の構想(=コンセプト)を先ず掲げると
  <構想1>平日の昼日中を月に1度クラシック音楽を聴き「豊かな時」を皆さんと一緒に共有する。
  <構想2>楽曲の部分切り出しをせず可能な限り「全体を聴く」ことを推進する。

の2点です。この2つの構想は会発足以後は「当会の基本理念」と位置付けて居ます。以下、これについて説明しましょう。

 <構想1>の底辺には、日本は豊かである、と10数年来世間で言われて来乍ら実際に「豊かな時」を過ごして居ると見える人が殆ど居ない、という一般状況への私の皮肉と反撃の気持ちを形に表したものです。人生の過半以上を”働き蟻”の様に働いて来た熟年層が、「老い」に差し掛かっても尚”働き蟻”を続けたり、同世代だけでカネ(金)やテレビや卑近な話題に明け暮れ、人生の先輩としての経験や教養や苦言(←特に意欲を失っている若者への)などが殆ど話題に登らない状況は年齢に比して「心の貧しさ」として映りますね。カネ(金)のみに走り「心の豊かさ」を得られなかった結果がバブル崩壊でしたが、カネ(金)を掛けなくても「豊かな時」を過ごし「心の豊かさ」を得ることは充分可能だと私は考えます。
 この様な思いから、休日の土日では無く平日に遣ろう、飲み食いでは無くクラシック音楽を聴きたい人に集まって貰おうと昼日中の時間設定にしたのです。その裏には熟年層で土日しか集まれない人は貧しい、飲み食いでしか集まれない人は貧しい、テレビやマスメディアで垂れ流される音楽にしか反応出来ない人は貧しいのだ、という私の思いが込められて居ます。それ故に会の趣旨に「豊かな時」を掲げて居るのです。

 <構想2>も当会の重要なコンセプトです。一般にクラシック音楽と言うのは1つの楽曲が組曲形式を成すことが多く(=複数の楽章などで構成される)、聴き終わるのに時間を要する、即ち”曲が長い”のが大きな特徴で、それがポピュラー音楽との決定的な相違です。それ故にポピュラーに成り得ない”壁” −世間はこの”壁”を「敷居が高い」と言いますが− を有して居ます。クラシック音楽がテレビCMなどで流される場合、長い楽曲の中の耳障りの良い極一部分のみが切り売りされる訳です。しかし私が敢えて主宰する会に於いては、一部分のみを切り出して聴く様な事はせず皆さんに全曲鑑賞に慣れて戴きクラシック音楽の醍醐味を味わって戴きたいのです。勿論当会も2時間という制限時間が在りますので、それ以上長い曲(オペラやオラトリオなど)は抜粋せざるを得ません。しかし可能な限り「全体を聴く」ことがクラシック音楽を真に理解し親しむ為の王道です。安直なポピュラリズムに迎合しても結局はその場だけで終わって仕舞い、クラシック音楽の聴衆を獲得することは出来ないという事例をコンサートやテレビ・ラジオの番組で私は数多く見て来て居ます。と言っても4時間有ればどんな曲でも全体を聴き終えることが出来ます、小説を読み終えるのに比べたら短いものです。<構想1>とも重なって来ますが世知辛い現代に在ってたっぷりと時間を費やす、これこそ心豊かな人のみに許された贅沢です。

    ◆感動を求めて
 クラシック音楽は「耳を澄まして主体的に聴く音楽」(※1)であるというのが私の持論です。そもそも「クラシック(classic)」という語の原意は「第一級の」「最上階級の」(※2)という意味です。自分の意志で主体的に聴き「最上級の音楽」の真髄に触れ得た時の「感動」は、恰も登山に於いて苦しい登り道に耐えた後で頂上に着き全方向の視界が開けた時に似た譬え様も無い充実感と満足感に満たされます。それは最近世間で安直に言われる”癒し”とは全く異質なものです。”癒し”は逃避的でその場凌ぎの気休めに過ぎませんが、感動は心の高揚を伴い自分をステップアップさせて呉れるので次に同じ曲を聴く時はより楽に聴け更に別の曲も聴いてみようという意欲が湧いて来ます。これも登山で段々と鍛えられる過程と同じです。だから癒し系音楽を何度”聞”いても「最上級の音楽」には入って行けないのです、少なくとも私は癒し系音楽から入ってクラシック音楽を好きに成った人を寡聞にして存じません。つまり「千の癒しもたった一度の感動に及ばない」というエルニーニョの小定理が成り立ちます。
 以上の様な思いから、私は<構想1><構想2>を実践し、皆さんと一緒に豊かな時を費やして全体を聴き至福の感動に出会いたいと願うものです。

 ■会発足の経緯
 以上の様な気持ちから、月に1度クラシック音楽をゆったりと寛いで聴く会が在っても良いのではないか、という思いを持っていた私は04年5月頃に上野満里子さんに前記の構想を持ち掛けたのが当会誕生の切っ掛けです。上野さんは所謂「お嬢様」育ちでクラシック音楽にも昔から親しんで居て、又、色々な会の世話役やボランティア活動をして居り、人を集めるには打って付けの顔役です。この当時「前衛」には元榮君が03年頃に持ち込んだアンプ、レコードプレーヤー、大型スピーカーなど一式とLP盤が何枚か有ったので、これを有効利用しようという訳で元榮君にも声を掛けました。そして私と上野さんと元榮君が発起人と成り、会場主である「前衛」の稲倉会長に話を持って行ったのが04年8月頃だった様に記憶して居ます。
 そして兎に角オーディオ・セットを組み立てて、実際にどの様に響き聴こえるのか試聴してみよう、という話に成り9月中旬頃に発起人3人と稲倉会長の4人でベートーヴェンの『第九』のLP盤を聴いてみたら、大型スピーカーから大音量で放射される音は圧倒的でした。試聴した4人全員がこの時に「是非遣ろう」という気持ちに固まったのを私は今でも覚えて居ます。生(なま)の演奏には及びませんが、我が家の小さなスピーカーで聴く音とは雲泥の差で、この様な迫力と深味の有る音は屹度皆さんにも共感して戴けると感じました。又『第九』はダイナミックレンジ(※3)が大きくオーケストラと合唱を含み試聴に相応しい曲でした。
 これで稲倉会長も会発足の意義を認めて「会場使用料は只、軽食代のみ」の条件で快諾(←実は渋々か?)して戴きましたが、この交渉には上野さんが当たりました。長年の好(よしみ)というものです。後はもう何時立ち上げるか、何曜日の何時から何時迄にするか、会費を幾らに設定するか、軽食にどんなものを出すか、などの詳細事項や具体的準備のみです。そして午後2時〜午後4時(14時〜16時)に音楽鑑賞、その後1時間位軽食と懇親会という時間設定と、毎月第1金曜日という曜日設定で、冒頭の様に04年10月1日(金)14時に第1回例会を開催と決め、「前衛」に出入りして居る方々を中心に声を掛けて船出したのです。初回に何人集まるか不安でしたが12人位が来て下さいました。その後、皆さんの都合で曜日変更は有りましたが、前記の時間設定はずっと不変で継続して居ます。
 当会の【ブラボー、クラシック音楽!】というニックネームは色々考えあぐねた末に第1回例会の2日前に私の独断と偏見で決めました。

 ■音楽鑑賞後の全員合唱 − 日本的心や感性を大切に
 第1回例会の準備に集まった9月下旬に上野さんから、クラシック音楽を聴いた後でピアノ伴奏で15分位全員で歌いましょう、という提案が有りました。「前衛」にはグランド・ピアノが在るのです。私もその案に賛成し、どうせ歌うなら日本の童謡や唱歌を歌いましょうと提案し、元榮君がピアノ伴奏することで話しが纏まりました。
 現在世間ではカタカナ語が氾濫し商業主義と結び付いた外来のクリスマスやバレンタインの宣伝攻勢に気圧され、正しい日本語や古来からの日本の歳時や行事が忘れ去られようとして居ます。クラシック音楽はどうしても西欧中心に成りますが、日本人として日本語を正しく発音し日本的心や感性を歌い継ぎ語り継ぐことは大切な事だと私は考えて居ます。それでクリスマス・ソングよりも『お正月』を選曲しました。

 ■結び − 個性有る会を目指して
 こうしてクラシック音楽の鑑賞日本の童謡や唱歌の合唱(今は斉唱)、軽食とお喋りの懇親会という当会の3本柱が形成されました。そして私と上野さんが運営幹事に就き、私が主に企画や例会当日の準備と進行役を担当して皆さんに曲に纏わる話をし、上野さんが会計や会場との折衝や会員への連絡を担当し、元榮君にピアノ伴奏で手伝って貰う形が出来上がりました。
 そして私は毎回何らかのテーマ(或いは”こじ付け”を設けて、各回毎に”減り張り”を付けることを第1回例会から心懸けて来ました。今後は「曲目解説」を少しずつ充実させて行こうと考えて居ますので、乞う御期待!
 平日の昼日中に集まれるという時間的制約から会員は想定通り中高年が多いですが、今後は若い層にも広げ毎月の例会に他には無い当会の個性を打ち出せれば、と1周年を通過した今考えて居ます。

 >>>■その後
  ●「前衛」閉鎖
 第1回〜第22回例会迄の【ブラボー、クラシック音楽!】の会場として来た「前衛」は06年7月31日で閉鎖に成りました。その詳しい経緯はここをクリックして下さい。
 我々は新たな会場を探さねば為りませんが、新会場情報は「ブラボー、クラシック音楽!」のページを参照して下さい。
    {この章は06年8月5日に追加}

−− 完 −−

【脚注】
※1:主体的(autonomic, independence)とは、或る活動や思考などを為す時、その主体と成って働き掛ける様。他のものに依って導かれるのでは無く、自己の意志や純粋な立場に於いて行う様。「―な判断」「―に行動する」。

※2:クラシック(classic)とは、(元は「第一級の」「最上階級の」の意)
 [1].第一級の、一流の、最高水準の。典雅な、高尚な。由緒の有る、権威の有る。「―レース」。
 [2].ギリシャ・ローマ的。古典的。古雅な様。「―カー」。
 [3].一流の作品。古典。古典的な名作。
 [4].西洋の古典音楽(classical music)
<出典:一部「研究社 新英和・和英中辞典」より>

※3:dynamic range。増幅回路などで、処理可能な音声・信号の最大値と最小値の比。

    (以上、出典は主に広辞苑です)

●関連リンク
第1回例会会場の「前衛」▼
在りし日の前衛倶楽部(Zen'ei Club of the past)
会発足前に試聴したベートーヴェンの『第九』の曲目解説▼
ベートーヴェン「交響曲第9番「合唱付き」」(Symphony No.9, Beethoven)
会の最新情報や運営幹事の上野さん▼
ブラボー、クラシック音楽!(Bravo, CLASSIC MUSIC !)
これ迄の会の活動履歴▼
ブラボー、クラシック音楽!−活動履歴(Log of 'Bravo, CLASSIC MUSIC !')


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