カーカバード最初の買い物となるカントパーニの店。ここにハズレアイテムとして配置されている「氷石」。金貨十枚をただ捨てするというトラップなのだが、実はこの氷、オーパーツなのではないだろうか。
オーパーツというのは、発見された場所や時代とはまったくそぐわないと考えられる物品のこと。英語の「OOPARTS」からきた語で、「out-of-place artifacts」つまり「場違いな工芸品」という意味。(Wikipediaより)
オーパーツ云々抜きにして見て見ると、この氷石は購入後しばらくすると溶けて無くなってしまう品である。つまり、この氷には特に魔法はかかっていないと推測される。付近では最大の魔法国家アナランドの呪文書に、氷結呪文が存在しないことは特記しておく必要があるだろう。おそらくこのあたりでは、氷という存在そのものが珍しいのだ。魔法の対象・手法としてとりあげられた形跡がないということは、このことを裏付ける証拠ではないか? 主人公が氷を知らなかったのであれば、何の疑いも無く氷石に金貨十枚を払ってしまったこともうなづける。
そう考えていくと実は氷石、大変な貴重品なのではないかという気がしてきた。金貨十枚とは大安売りである。
旧世界の地図を見ると、アナランドとカーカバードでは氷は手に入りそうもないのがわかる。一番近いところで雲峰山脈だが、ここは非常に険しく人間が登るのには適さない。地下に氷穴などはあるかもしれないが、いずれにせよ人が分け入るには難所であろう。また、自然法則が狂っているバク地方の小川には、氷が軋みをあげる場所もあるようだが、ここもそうそう人間が訪れる場所ではない。
何を以って氷石の何がオーパーツなのかというと、その場所につきる。この氷の塊が売られているのはカントパーニなのだ。如何にして、何処からこの氷はやってきたのだろう? 魔法や魔術品によって生み出されている可能性もないではないが、やはりカントパーニという場所が問題となる。盗賊の集落に魔法技術は不自然だと思うのだが……?
【追記】
ところでヨーロッパでは、プリニウスの『博物誌』の昔(ということは、もっと以前からという可能性が高い)から十六世紀のこっちまで水晶は非常に強固に凍結した雪だと信じられていたという。主にアルプスの雪の中で採れたからだというが、あんがいこのあたりに氷の宝石の発想元があったのかもしれない。
ここ最近カレーの権力者たちの力関係に大きな動きがある様子。そう、ヴィクの台頭である。
そもそもヴィクとは何物だろうか? 判っているのは、ビリタンティのグランドラゴルとの付き合いやラムレ湖での楯乙女退治など、カレーの外での活躍があること。そして、現在カレーの中においても赤目たちに一目置かれる程度には影響力を持っているということだ。だがしかし、未だ北門の四行呪文を知るレベルではないらしい。
前述のラムレ湖の活動において、彼は海賊の1人と懇意を得ている。また、殺人鬼ヴァンゴルンは弟分らしい。カー二バルで見せる態度や人民の反応を見るに、表と裏の2つの顔をしっかりと使い分けているようだ。
北門の四行呪文に関してだが、これはカレーの第一貴人から順番に担当するというものではないことがわかっている。四行すべてを知るサンサスこそ第一貴人の地位にあるが、盲目の物乞いは元第七貴人であり、シンヴァ卿は生前第五貴人であったという。スラングの聖人と長老ロルタグに関しては、貴人かどうかもわからない。もっとも2人ともカレー有数の知識人であり、それぞれ宗教と教育の第一人者であることは間違いが無い。呪文の一行を司る資格は充分にあると言えるだろう。
その一方で、シンヴァ卿に呪いをかけたとされる第三貴人は呪文を知らないらしい。呪文を与えられるには人格も考慮されるということなのかもしれない。
そこでヴィクである。何しろシンヴァ卿が成仏してしまった今、呪文を知る者が1人いなくなってしまったのだ。(物乞いも明日とも知れぬ状態であるが、彼は一応生きている)彼には呪文を得る資格があるであろうか? カレーにおける影響力は充分にあると思われる。カーニバルという場で一般民衆および興行人たちに迎えられ、その一方で赤目を押さえることができ、海賊との繋がりもある。ネックになりそうなのは殺人鬼との交友だが、ロルタグがフランカーという友を持っていることを考えると、これは逆に必要なことなのかもしれない。もしも力で呪文を強奪せんとする輩が現れたとき、呪文の管理者はそれに抵抗する力を持っていなければならないからだ。でなければ、北門の守りの一部をどうして預けることができよう?
主人公がバク地方へと去った今、サンサスがカレーに帰還し次第、ヴィクが呪文の一節を得る可能性は高いのではないだろうか。
ドジソン先生といえば、もちろんルイス・キャロルのことである。『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』の作家といえば、皆さんお分かりであろう。チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン先生はイギリスの童話作家にして詩人、そして数学者。写真家であり、パズル作家。ルイス・キャロルはペンネームである。
一説には、「アリス」は聖書の次に読まれている本だというが、少なくとも引用されることはかなり多いのではないかと思う。
先にも述べたとおり、キャロルはイギリスの人である。そして『ソーサリー!』が生まれたのもイギリスである。著者のジャクソンも、キャロルに親しんで育ったはずであり、その影響が著作『ソーサリー!』に現れていても不思議ではない。
先ず思いつくのが、スナタ猫だ。この姿を消すという能力、しかも縞猫。間違いなくかのチェシャー猫の親戚に違いあるまい。そして先日、ジブジブもドジソン先生の子供なのかもしれないと気がついた。「ジャバウォックの詩(『鏡の国のアリス』)」や『スナーク狩り』にジャブジャブ鳥という存在が登場するのだ。Jib-JibとJub-Jub。明らかに影響が見えはしないか? ジャブジャブは鳥であり、ジブジブは翼を持たないが、両者には共通する特徴がある。それは声で、どちらもそれぞれの作中で声が特徴であることが明示されているのだ。元々、キャロルのジャブジャブ鳥も、ナイチンゲールの鳴き声である「ジャグジャグ」から生まれたという説があるぐらいで、彼らは全て鳴き声の子供たちなのだ。