☆ ボリン革

 蛇使いのマナタが大好きなブーツ。マンパンの衛兵隊長ですらも欲しがるあのブーツは、ボリン革でできているという。このボリン革ってなんだろう? 原文における入手時の描写はこうだ。(第一巻パラグラフ110)


You now own a pair of fur-skinned boots, which you may take with you. The fur is Borrinskin, ...(後略)

 要するにファーのブーツで、このファーはボリンスキン、つまりボリンの皮だということだ。肝心のボリンだが、ちょっと調べてみても正体不明である。ファーということは毛皮なので、毛の生えた生き物の名前ということかも知れない。鉱山の奥に転がっていたということは、使い捨ての労働者であるゴブリンでも履けるぐらいの入手難易度とも思えるが、そうなると冒頭に書いたとおりマナタやカルトゥームが欲しがるレベルとは思えなくなってくる。鉱山の奥に落ちていたからといって、労働ゴブリンの物であるとは言えないのかもしれない。銀の鍵と同じように、監督ゴブリンのコレクションだったという線が現実的だろうか。危険な坑道の奥でつい落としてしまい、取りに行きたくても躊躇してしまう監督ゴブリンの姿を想像するとちょっと笑える。

 ちなみにこのブーツ、創土版では単に「毛皮の長靴」となっている。
 ☆記事(創元訳準拠)なのはそういう理由からなのです。

(8/3/12)

【追記】
 AFF2『ソーサリー・キャンペーン』シナリオではこのブーツ、Borrinskin ではなく Borriskin となっている。シャンカー鉱山、蛇遣いマナタの双方の記述で Borriskin なので、誤字というわけではなさそうだ。
 まあ結局のところ、Borriskin でも正体不明には違いないのだが……。

(9/7/12)

【追追記】
 創土版でも「ボリン皮」と書かれておりました。太字のアイテム名が「毛皮の長靴」だったので見落としておりました。
猛反省……。

(12/26/19)

【追追追記】
 先日和訳された『真・モンスター事典』において、ついにボリンの詳細が判明した!
 独自の項目は持たないものの、「使い魔」の例として挙げられている。それによると、ボリンは小型のクマのような生物で、黒く厚い毛皮を持ち、目の周りに黄色い円があるとのこと。木の豊かな丘陵地帯に生息し、尾には縞模様、毛皮は外套やブーツの素材になり、カーカバードではボリン皮のブーツは珍重されているらしい。どうもこいつはアライグマみたいな生物らしく思える。

 まず後付けで設定されたのだろうが、なかなかにそれらしい感じである。ボリンスキンのブーツ、ちょっと履いてみたくなるではないか。

(12/16/23)

★ 『ソーサリー!』プロファイリング

 自分が持っている英語パッフィン版第一巻は、米国で手に入れたものである。古本によくありがちなことに、以前の持ち主による書き込みが冒険シートのページに残されている。これを手がかりに、彼(彼女)が辿った冒険を再現してみよう。というのが今回の趣旨である。
 ちなみに自分が書いたものではないので、書き込みそのものをスキャンしてUPするのはやめておきます。

 先ず技術点だが、元技術点のところに、ただ とだけ書き込まれている。変動記述は一切無い。いきなりわけが判らない。サイコロで0を出したとでも言うのだろうか。しかしこれでは旅の困難が予想される。…と思ったが、これは単純に彼が魔法使いということだろう。早とちりであった。
 次に体力点にいこう。元体力点のところには29 。一瞬見間違いかと思ったが、その後27、25 ……と2づつ減っていっているので、普通に戦闘でダメージを受けていると思われる。初期値29。こんどは早とちりではない。サイコロ2つで17を出したことになっている。わけが判らない。
 運の初期値は12 。よかった。普通だよ……。
 しかしこれはどういうことだろう。色んな意味で規格外のアナランド者である。6面以外、たとえば10面などの変則サイコロを使ったのか……?

 では、このアナランド者の旅路はいかなるものであったのか。体力点は激しく変動している様子が読み取れる。狭いスペースに順番もなにもなく無茶苦茶に書き込まれているため、正確な体力変動を知ることはできない。だが最高値は29 であり、それ以上の数値は無い。元体力増強イベントは無かったということだろうか。ちなみに最低値は で、死にかけたこともあるようだ。
 技術点はまったく変動していないので、カントパーニで剣を買ったり、各種の技術点がらみの呪いは受けていないことがわかる。
 運勢は順調に減ったり増えたりしているが、最大値が15 となっているため、どこかで元運点が増えたようだ。

 次にあるのは金貨と財宝の欄だが、ここには金貨が減って言ったことを示す数値と、金貨10分の宝石 と書かれている。シャンカー鉱山で、鬼と戦ったようだ。カントパーニからクリスタタンティまでのルートが確定した。

 食料の欄には2⇒4 とある。初期食料が2食なので、どこかで2食分増やしたようだ。この増量は一気に行われているので、カントパーニ郊外にある老人の木では、蜂蜜を入手していないことが判った。おそらくだが、カントパーニの宿で食料を買ったと思われる。ここでなら、2食分がセットで売っているからだ。
 しかし問題は、その後食料の変動がないということだ。宿屋をフル活用したということらしい。

 次は装備品と道具の欄だが、なんとも寂しいことにポーチよく磨がれた剣 としかない。ポーチは正体不明だが、この剣はダンパスで買えるあれだろう。

 ボーナスやペナルティなどの特記事項の欄を見ると、ペスト。体力マイナス3 とある。疫病の村へ行ってしまったようだ。その下のノート欄には 次の巻ではパラグラフ79を参照と書かれていて、どうやらフランカーの命を奪うことはしなかったようだ。疫病の記述が消されていないことから、水晶滝へは行っていないと思われる。

 最後に遭遇モンスターの欄だが3つに書き込みがある。それぞれ技術8体力6、技術12体力18、技術空欄体力12だ。第一巻で登場する敵で、技術8体力6に該当するのはアリアンナの木ゴーレムと刺客フランカーだ。これはフランカーだろう。クリアルートにおいて、避けられない敵だからだ。
 技術12体力18だが、この数値に該当するのはマンティコアである。体力の減る過程から見て、どうも直接戦闘で殴り殺しているみたいである。技術点が6しかないくせに、すごい奴だ。
 さて、既にマンティコアがでてしまった。この後に書かれている技術空欄体力12は何だろう? と思ったら、この上の隙間にME と書かれているではないか。本来の体力点のスペースでは足りず、ここを使ったということらしい。
 ちなみに、これらの戦闘で彼は敵の体力を2づつ奪っている。剣のボーナスを忘れているようだ。

 これで書き込みは終わりである。あと左上の空白に456で終わり と書かれているだけだ。456というのは第一巻の総パラグラフ数で、単純に456まで行けばクリア、あるいは456に到達したというメモだと思われる。マンティコアの体力の減り具合から見て、このアナランド者は第一巻をクリアしていることは間違いないので、どちらの意味でも結構だ。

 では整理してみよう。この規格外のパラメータをもつアナランド者は、カントパーニでは宿を選んでいる。つまり、ここで買い物はしておらず、山賊とも戦っていない。次に彼はシャンカー鉱山へ向かい、宝石を手に入れている。鬼と戦ったはずだが、そのパラメータ記述がシートには見当たらない。つまり魔法で戦闘を回避した可能性がある。実際この戦闘ではWALを使うことで、鬼と戦わずして宝石を手に入れられる。財宝欄の書き込みでは宝石の数が1と推測されるので、この展開だったにちがいない。鬼を倒した場合は、宝石が2つ手に入るからだ。
 鉱山を出た彼は、クリスタタンティを経てダンパスへ向かう。ダンパスでは剣を買っている。アリアンナの家に立ち寄ったかどうかだが、彼は彼女の呪いを受けず、また褒美のアイテムももらっていない。つまり、立ち寄ってはいないということだろう。
 ダンパスを出たのち、疫病の村を経由してビリタンティへ入っている。そこからフランカーを下し、トレパニで英雄となっている。
 このルートだと起こる直接戦闘は2回。シートへの記述どおりフランカーとマンティコアだけだ。鬼を魔法でいなした彼が、マンティコア戦では普通に戦闘しているのを見るに、ジャンは最後まで一緒にいたらしい。ガザ・ムーンの魔道書のページを手に入れていなかったに違いない。確かにアイテム欄にはその記述は無かった。

 キャラクターメイキングの不審点と、技術点の低い彼がマンティコアを直接殴り倒している点を除けば、かなり真っ当なプレイをしていたのではないだろうか。最後の戦闘はチートとも見えるが、律儀にマンティコアの体力が減っていく様をからすると単純にズルしたとも言えない。自分の体力値を無限にして延々殴り続けていたと見るほうが説得力あると思われる。

(8/3/12)

【追記】  
 この不可解なステータスだが、自前キャンペーンキャラクターであったならば説明がつく。つまり、『ソーサリー!』の冒険の前に、火吹き山ないしアランシアでの冒険を重ねた者だったらという可能性だ。他のGBで受けたペナルティやボーナスを継続していたならば、これらのステータスはありえない話ではない。

(9/16/12)

★ マンパンと冠

 其れを戴くと、神懸りともいえる統率力と決断力をもたらすという諸王の冠。だが、それを奪ったマンパンの大魔法使いは相変わらず危険を避けるために閉じこもっている様子。冠の力は発揮されなかったのだろうか?

 先ずマンパンが悪の巣窟であることから考えてみよう。冠が善の勢力にしか力を貸さないのであれば、マンパンの現状は納得できる。だが、あの冥府魔術師団がそんなアイテムを作るはずが無い。彼らは中立の神ローガンの信奉者たちなのだ。冠は間違いなく、悪の勢力でも使えるはずである。さてさて。
 ……実は答えは簡単である。ファレンでも影武者でも構わない、彼らとの出会いを思い出してみよう。そう、大魔法使いは冠をかぶっていないのである。武器や防具は装備しないと意味がないぜを地でいっている。なんというRPGだろうかw

 せっかく手に入れた冠をかぶっていないのは何故だろう。これはちょっと考えてみるとすぐに理由に思い当たる。大魔法使いとしては、影武者ではなく自分でかぶりたいはずである。だが、彼はファレンの中に潜む身。なにしろファレンが大魔法使いとしてカミングアウトするのにはリスクが高すぎる。何しろファレンは無力無害であるが故に隠れ蓑として機能しているからだ。いかに冠が高性能だとはいえ、これまで格下と思っていた冴えない男が「私が大魔法使いです」と皆の前に出てきたらどうなる? 血気盛んなマンパンの連中は冠の効果が出る前に悲惨な未来を実現してしまうだろう。そもそも大魔法使いは慎重さを売りにする男である。そんな危険を冒すわけがない。

 影武者が登場したときに、諸王の冠が役に立たないアイテムだと漏らすが、あれ実は本心だったのではないだろうか。マンパンの統治形態と決定的に合わなかったのである。

(8/3/12)

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