☆ タイタンの絵師

 世界設定資料集『タイタン』には、ブラック・ムーンの夜の事件を描いたと思われるイラストが乗っている。だが、このイラストには満月が描かれているのだ。『ソーサリー!』本編内で「星一つない夜」と明記されているにも関わらずである。

 冠盗難の報が海を渡るうちに「ブラック・ムーンの夜に起きた」という部分が失われてしまったのかもしれない。あるいはブラック・ムーンという自然現象はアランシアでは馴染みがなく、報せを受けた側が理解できなかったということもあり得るだろう。いずれにせよ『タイタン』は、ブラック・ムーンについては何も伝えていない。
『タイタン』はアランシアのサラモニスで編集されたという設定になっている。つまりこのイラストは冠の盗難事件の情報を元にアランシアで描かれた想像図なのではあるまいか。その証拠に、イラストに描かれた冠のデザインも、『ソーサリー!』本編で描かれる冠とは異なっている。バードマンの造形もまたしかりである。

(2/1/20)

★ レジストファイア

 第一巻のラストに立ちはだかるマンティコア。その数値的なステータスは第一巻どころか全編通してもトップクラスであり、ジャンを追い払うことに失敗した魔法使いにとっては絶望的な壁となる。その尾針は当たり様によっては一気に6点ものダメージを奪っていく。


マンティコア
技術点12  体力点18

 マンティコアは魔法戦闘においても術を3つは使わなければならない強敵である。術の選択をうまく絞れば完封できるにはできるが、この場合でも術による体力の消費はあるし、なによりやり過ごすことができるだけで決して奴に勝利できたわけではない。そして、術の選択を誤るとなかなかにつらい立場へと追いやられる羽目になるのだ。

 ここにHOTという最強呪文がある。どう最強かというと、第四巻のラスボスを一撃で屠ることができるという代物だ。そんなアナランドの秘密兵器HOTだが、マンティコア戦でも使う機会がある。横っ腹に火の玉をぶち当ててやると、奴めもだえ苦しんでいる。冥府の悪魔ですら灰にする魔法の炎だ、さもありなん。さあ、こっちも術で消耗して残り体力も心許ない。ここは一つ剣で止めを刺してやろうじゃないか……!


マンティコア
技術点12  体力点18

 なん……だと……?
 だが、これが現実。現実なのです……!

 まあ確実にダメージ指示の記述漏れでしょうけど。苦しむ描写が無ければ炎に強い怪物なのだと言えたかもしれませんが、マンティコアの出典元『博物誌』はもちろん、『モンスター事典』にもそんな特性については書かれていないですね。うん。

(2/8/20)

★シャドラクさんとアナランド

 「諸王の冠の言い伝え」には、『ソーサリー!』本編が開始する前のエピソードとして、冠が盗難された当初は誰の犯行かは判明しておらず、バクランドからの知らせによってマンパンの仕業であることが判ったとある。誰かバクランドに住んでいる者が、アナランドに知らせをよこしたというわけだ。しかもそのお方は常日頃からマンパンの動向に注意を払っている様子。さあ一体誰なんだ?

 ……と、書いては見たもののこれはもう隠者シャドラク一択な気がします。一応フェネストラやシャムなどマンパンに与してない人物は他にもいますが、アナランドとの繋がりという点ではシャドラクほどには強くない。何しろアナランドは金冠鷲を使ってわざわざ「シャドラクの助けを乞え」なんて旅の途中にある主人公に伝えてくるぐらいだ。実際シャドラクを訪ねた時に、彼は主人公の目的も出身もちゃあんと把握している。木の枝を使った接触シーンでもわかるように、明らかにシャドラクは主人公のことを会わずとも知っているのだ。これはアナランドからの情報提供があったからに違いない。アナランドを飛び立った金冠鷲がシャドラクの元にたどり着くには、彼が住む魚尾ヶ岩がどこかわかるよう訓練されていなければならないはずだ。つまり、前々からシャドラクとアナランドの間には関係ができていたということに他ならない。

 ところでシャドラクには魂を飛ばす特技があるが、後の死に際にマンパンのような遠いところまできたことはないと本人が言っている。魚尾ヶ岩はバクランドの中でもカレーに近い場所にあるが、本人はカレーの近状を聞きたがっていたりもする。この方法でアナランドと連絡を取っていたわけではなさそうだ。冠の盗難事件に関しては、アナランド側では犯人探しに難航しており、シャドラクのほうから情報が入ったわけで、つまりシャドラク側にアナランドの金冠鷲のようなメッセンジャーがいるということだろう。マンパンの動向を知ったシャドラクが、アナランドにその旨伝えてきたというわけだ。情報の早さからして、シャドラクがマンパンの動きを見張っていたという可能性は高い。あるいは、冠を失ったアナランド側からシャドラクに何か心当たりはないか聞いたと考えることもできる……。

 さて、そうなると今度はシャドラクとアナランドの繋がりが気になるところである。シャドラクはアナランドに友好的なのはわかったが、一体どういう経緯でこんなコネクションができているのか。彼がアナランド生まれだという可能性もあるだろう。さいはて海岸沿いは徳の高い者が隠遁生活を送る場所としてはメジャーのようだし(ダンパスで買える縁なし帽は、ダドゥ・レイの僧侶から盗んだものだった)、海岸沿いからならカレーの北門を経由せずにバクランドへ入れる。ただ、隠者である彼が捨てははずの生まれ故郷にそんなに執着するだろうか……? 実は隠者とは偽りで、その正体はアナランドの現地諜報員……だとすると、アナランドと彼の間にメッセンジャーが行き来していると思わしきことにも説明がつく。だが、そうなるとアナランドは相当なブラック企業&シャドラクの忠誠心どれだけかって話になってしまうなぁ。

(2/16/20)

【追記】
 実際にシャドラクに出会ったとき、彼は「七大蛇がマンパンに持ち帰ろうとしている情報がアナランドの勇者の存在であることは知らなかった」と言う。先の考察ではアナランドからシャドラクにも金冠鷲が飛んだのではないかと想像したのだが、これは怪しくなった。アナランドから直接情報が渡ったのなら、シャドラクが大蛇たちの任務について知らないということはないだろう。
 カレーから先の主人公の行動についてシャドラクが把握していたのは確かだ。本人もそう語るし、例の木を使ったメッセージがそれを裏付けている。シャドラクが日頃カレーの動向に気を配っていて、北門を超えてバク地方に入った者をチェックしているということはあるかもしれない。実際に主人公と出会った彼はカレーの状況について聞きたがる。しかしその理由となるとさっぱりわからない。アナランドがシャドラクに寄せる信頼感の謎の手がかりもなくなってしまう。

 一つありえそうなのは、シャドラクがとぼけて見せたということだ。視点を変えてシャドラクの立場で考えてみると、アナランドの刺客が確実にマンパンにたどり着き、任務を達成する保証はないということに気づく。もちろん可能な限りの手助けはするが、自身の身も守らならなければならない。七大蛇がバク地方で無法を働いていることは周知の事実であり、セスターキャラバンのごときマンパンに尻尾を振る連中もいる。アナランドへの義理があったとしても、いざというときには自分は関係ないと言えるだけの予防線を張る必要があったのではないだろうか。

 そしてその予感は正しかった。数日後には彼はマンパンから派遣された衛兵たちによって拷問されることになる……弁明空しく、全てを吐かされた上で殺されてしまう運命にあるのだ。

(8/24/22)

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