クラタ族の武器は棍棒である。実に見事に武骨でたくましい棍棒なのだが、彼らが住むバクランドにはそんな大きな樹はあまりないようだ。第三巻を旅してみても、最初にシャドラクとの接触がある立木以外には、それらしい状況描写はない。ただただ広がる荒れ地。それがバクランドなのである。
だが遭遇するクラタ族は皆、棍棒で武装している。『超・モンスター事典』でも、彼らクラッタマンの武器については刺付き棍棒とされている。そうなると、どこかからか武器になる樹を探してきているということだろう。つまり、スナタ森である。第三巻で訪れることができる彼らの集落も森に近い場所にあったし、これはまず間違いあるまい。
個人の力を重要視するクラタ族なのだから、きっと自分の武器は自分で手に入れる風習なのではないだろうか? 人の手を借りて得た武器なぞ、彼らの価値観ではゴミにちがいあるまい。スナタ猫はもちろん熊にくびり藪にと、スナタ森は危険で満ちている。クラタ族の若者は危険な森へ一人出かけ、自らの武器となる樹を切ってくるのである。自らの力を示した若者は、持ち帰った樹から自分の武器を作る。そうしてはじめて、一人前の戦士として認められるのだ。
……以上は妄想ではあるが、いかにもありえそうではないでしょうかね?
『超・モンスター事典』にはこうある。サイトマスターには幻術の類いは効かないと。実際第四巻で裏切者のサイトマスターたちと戦闘になった際、SIXの呪文は通じない。連中は魔法の分身には見向きもせず襲い掛かって来るのである。彼らの超視力ならば幻影など全て御見通しというわけだ。
となると次に気になるのは、どのレベルの幻術ならサイトマスターの視力を上回れるのかということだ。SIXなどとは比べ物にならないほど強力な幻術――そう、炎のスローベン・ドアや神の頭を持つヒドラならばどうだろうか? いずれもマンパンの大魔王が用意した強力な魔術の産物だ。
だがサイトマスターもまた、その名に己が眼力を戴くほどの希少種族である。ミニマイトの抗魔オーラがZEDに打ち破られる事例があるし、サイトマスターの視力をも欺く幻術はきっと存在するとは思うが、はたしてスローベン・ドアやヒドラはそのレベルに至っているだろうか? うめきの橋ぐらいだと間違いなく見抜かれるに違いない。
いずれにせよ、連中はマンパンでは長生きできまい。自分の身を守るための防塁を脅かすかもしれないような輩を、大魔王が放っておくとは思えないからだ。まったくもってマンパン・サバイバルは厳しすぎる……。
南カレーで遭遇するカマキリ男。こいつは一撃死の可能性を秘めた強敵ではあるが、どうにもカレーという場所にそぐわないように思えてならない。彫像のふりをして近づいたものをパクリとやる生き方からして、港街の住人としては不自然極まりないと思うのだ。こいつはいったいどうやって街に住み着き、そしてどのように生活しているのだろうか?
『モンスター事典』を見ると知能は普通とある。狩りをするとき以外は、わりと普通に街になじんでいたりするのだろうか? ゲーム内では、とある小屋の外で狩りを行っているカマキリ男と遭遇するわけだが、『ソーサリー・キャンペーン』によると、この小屋はカマキリ男の住処だという。ようするに家持ちなのだ。実際小屋の中には骨が散乱していて、犠牲者のものと思わしき服も落ちている。服のポケットには金貨がそのまま残されており、このカマキリ男が金貨を使って生活しているとは考えにくい。骨の多くは人間のものらしく、「人間が好物らしい」とまで書かれている。うかがえる暮らしっぷりは、『モンスター事典』で「自然界では」と前置きされた習性そのものだ。
謎である。明らかに他の住人とは異なる生活をしているのに、住む場所は街の中。まるで荒野で暮らしていたカマキリ男をそのまま取り出して、街の中に置いたような感じなのだ。まあ街の中と入っても、南カレーは集落が点在するような場所でもある。彼の小屋はドワーフの村から少し離れた場所にぽつんと立っている。城壁の内側ではあるが、街の中心部ではない。
ところで犠牲者についてだが、これは哀れな旅人あるいは離れた街区に住む者たちだと思われる。近くで暮らすドワーフたちがあの家に住んでいるのが何者か、そしてその狩りの方法を知らないはずがない。己の生活圏のことは熟知していなければ、この街では長生きできない。
ここで一つ思いつくのは、カマキリ男はいわゆる市民ではなく、この地区に設置された罠であるという可能性だ。カマキリ男という種族は人食いだが、狩りの方法は決まっている。これを曲げることはない。つまり、カマキリ男の習性をよく心得ている者からすれば、この恐るべき肉食生物は罠として利用できるというわけだ。
カマキリ男のことをよく知っていた賢者――あるいは魔法使い、もしかしたら冒険者かもしれないが――何らかの手段で捕縛し、ここへ連れて来たのではないだろうか。彼は一軒の家を宛がわれ、よそ者を脅かす役目を与えられているのかもしれない。
先に書いた通りカマキリ男にも知能はあって、オークやゴブリンと同等である。はたしておとなしく罠の役目に甘んじているだろうかとも思えなくはないが、カマキリ男を捕えて利用しようとしたのが魔法使いであるのなら、何かしらの洗脳や制約で縛っていてもおかしくはない。
確かなのは、カマキリ男が一人カレーで「狩り」を行っていて、近くに住む者は誰も、よそ者である主人公にその存在を教えてくれないということだ。
そしてもう一つ、この罠を維持するには定期的に「餌」を与える必要があるということだが……。