★ 生き骸はどこから来たか

『モンスター事典』を見る限り、生き骸は普通の死体ではない。バラバラになってもなお戦うのだから普通であろうはずもないが、所謂ゾンビとも別物であるようだ。本編に登場するのは南カレーの1体のみだが、『モンスター事典』によると遭遇場所は廃墟あるいは地下迷宮で、遭遇数は1体から3体となっている。説明文によると生き骸が起き上がってくるような戦場跡で行われた戦いが普通のそれであるはずがないとある。そうなると、どうやらこれは呪術的な存在ということだろうか。戦闘において頭部が噛みついてくるが、特にダメージを受けてもその後に何ら支障がないことから伝染性はないのは確実だ。

 ところでカレーという町は確かに酷いところであるが、戦場になったことはないと思われる。つまり『ソーサリー!』本編で出会う生き骸は普通にこの場で生まれたものではないのではないか? 遭遇場所でもあるノームたちが住む集落では、生き骸が退治されたことで子どもたちがまた外で遊べるようになると喜ぶ様が確認できる。何というか、彼らにとってあまり深刻な脅威ではなかったように感じられるのは自分だけだろうか。いずれにせよ、ノームたちは死体が誰のものであるかを知らないようだ。となると、この死体はどこか別の場所から彷徨ってきたのではないだろうか。
 カレーは周囲を城壁で囲まれていて、出入り口は南北の門と港だけ。南北の門はしっかりと固められているし、まさか呪われた死体を船で運んでくるとも考えにくい。そうなるとこの生き骸はカレーの中で生み出されたに違いない。先に述べた通り、伝染性は無く呪いの産物となると、これはもう何かの謀略であろう。

 iOS版ではこの生き骸、カレーの貴人の一人の成れの果てという設定になっているらしいが、いかにもな感じがする。シンヴァ卿の末路や、盲目の乞食を見てもわかる通り、カレーの上層部には呪術的な輩がいることは間違いがないからだ。
 戦闘後、叩き潰した頭部にRESをかける選択がなかったのは残念だ。きっと有益な情報が得られるに違いない。

(6/28/20)

★ 指輪の主

『超・モンスター事典』によれば、何とあの蛇の指輪を造ったのはカレー第七貴人だという。かの七匹の大蛇に秘密を吐かせる力を持つあの指輪は、限定的にとはいえマンパンの大魔法使いの力を侵す魔力を持っている。それをあの第七貴人が? 確かに彼は指輪を主人公にくれるわけだが、その際に「長年持っていたが、もう使うこともあるまい」と言っていた。てっきり彼が若いころに何らかの手段で入手していたものを譲ってくれたのだと思っていたが、言われてみれば確かに彼自らが指輪を造ったとも読めなくはないセリフだ。

 第七貴人本人は今や目を閉ざす呪いを受けて乞食同然の身となっている。彼にはハーピーが付きまとい、ひたすら嬲られているわけだが、主人公と共に戦うなんて愚行を犯さないかぎりは殺されはしないらしい。「いつまで苛むつもりじゃ」なんて言っているし、ハーピーが基本的には彼を殺すつもりはないことがわかる。このハーピーもまた、彼に掛けられた呪いの一つなのかもしれない。
 このようにずいぶんとヒドイ目にあっているわけだが、彼があの指輪を造れるほどの力の持ち主だったというのなら、妥当に思えなくもない。相当の恨みあるいは妬みを受けているのは権力者が故と思っていたが、魔法使い、あるいはそれに類する人物だったのなら、なお理由には事欠かないだろう。

 ここで気になるのは、乞食となった彼には魔法の力は一切残っていないっぽいということである。両腕ともに健在なので、アナランド系の魔法使いではなさそうだ。いったい彼は何者なのだろうか。そのヒントになりそうな材料を探してみた。

1 蛇の指輪に込められているのは神々の力である

 七匹の大蛇に向かって指輪を示し、秘密を聞き出そうとするとわかるのだが連中は「神の定めた掟に従い」秘密を吐く。つまりこの指輪は、神々の代行者の印というわけだ。件の神々とは、例のヒドラの頭として登場する地水火風、太陽に月、そして時間の神だ。第四巻ではマンパンの神々とされているが、『タイタン』にて彼らが全世界規模の神々であり、しかもどちらかというと中立~善の勢力に与する存在であるとされている。

2 彼が奪われたのは視力である

 第七貴人は呪いによって目を閉ざされると同時に、かつて持っていた力を失ったように読み取れる。少なくとも本文を読む限りでは目を閉ざす呪いについてのみ言及されているので、視力こそが彼にとって大事な要素であったと考える方が自然である。

3 例の指輪は蛇の形をしている

 七匹の大蛇に効果があるということで、指輪が蛇の形をしているのはおかしくはない。
 入手時に、第七貴人は「蛇から身を守る」効果があると信じていると書かれているのだが、ここは原文では「protect you from serpents」となっていて、指輪の効果がわかる前に知らされる情報としてはいい塩梅になっている。(第二巻ではまだ七大蛇の存在も知らされていない)

 1の段階で、第七貴人が普通の魔法使いであった可能性は低くなる。神と通じているのであれば、神官や司祭だったのかもしれない。クーガ神殿やスランの聖人、それにブロンズ像を見ればわかる通り、カレーには多くの神が奉られている。フォーガのように既に忘れらて久しい神もいて、いったいどれほどの信仰が存在していたのかは計りようもない。
 また、大魔法使いが選んだ七柱の神全てに通じていることから、大魔法使いその人と何らかの繋がりがあった可能性も捨てがたい。砦に籠った大魔法使いが異世界の魔神に傾倒する以前にどこで術の修行を積んだのかは不明だが、第七貴人もまた同系統の修練を積んでいたと深読みもできるだろう。そう、スローベンの秘密に彼もかかわっているかもしれないのだ。

 一方、2と3を考慮すると第七貴人が魔法の道具を作る職人だったのではとも思えてくる。大蛇に効く指輪に蛇の意匠を施す彼のセンスはもちろん、目が見えなければ細かい作業は不可能になるだろうというのが理由だ。

 彼の言う「長年」がどれほどの時間を指すのかがわからないが、七大蛇が生まれたのはそんなに昔のことではない。少なくとも大魔法使いがマンパンに勢力を伸ばし始めてからである。そのころから大魔法使いの脅威に備えて指輪を作っていたのだとすれば、彼の慧眼と行動力は相当なものだ。呪文の一行を託されるのも納得である。
 「長年」と言わしめる時間感覚は、今彼が感じている辛さ故な気がしてならない。

(7/4/20)

★ エルヴィンの集落

 カントパーニから先、川沿いに道を進んでいくとエルヴィンたちの集落に辿り着く。
 ところでこの集落、最初は無人と思わしき謎の村として紹介される。住人は見当たらないが炎がたかれていたり、姿なき楽師が登場したりして、一度囚われてしまうとエルヴィンたちと遭遇し、ここが彼らの村だったとわかる仕組みである。
 エルヴィンという連中は小さく痩せた種族と描写されている。だがこの村の家や天幕は特に小さいということはない。この集落を探索している間、主人公はそのような疑問を一切もっていない。家の中にあるクッションに座る時でさえ、それが小さめであるという描写はないのだ。テーブルや椅子も同じくである。エルヴィンたちは身体よりも大きい家具を愛用しているとでもいうのだろうか? だが『モンスター事典』にもそんなことは書かれていない。連中が身に着けている服や武器も、彼らの身の丈にあったものである。家具や家だけが大きいなんてことはあるまい。
 ここで疑問が湧く。これらの家や家具は本当にエルヴィンたちのものなのだろうか?
 エルヴィンというのは悪戯好きな種族だが、彼らの悪ふざけというのは人間からすると度を超えているところがある。彼らならば、村から人間たちを追い出して占拠してしまうぐらいやってもおかしくないのではないか。この集落の中心を道が貫いていることも、これで理由がつく。元々エルヴィンたちの村だとしたら、そこを道が通っているというのは奇妙だ。人間と関わり合いが無さそうというのも勿論、空を飛べる連中がわざわざ道を必要するとは思えない。
 元々人間が暮らし、今はエルヴィンたちが住む村なのだとしたら……。これはゴレタンティの候補地が一つ増えましたな。

(7/12/20)

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