★ そして誰もいなくなった

 マンパン砦が建設されたころに大魔法使いに従っていたのはオークやゴブリンたちだったと『タイタン』にはある。だが冠の事件が起きた頃には、彼らはほぼ姿を消してしまっている。より有能な人員へ入れ替えがされたと考えることができるが、本当にそれだけだろうか? もしも彼らに「消される」理由があったのだとしたら、それは何だろうか?

 ここで一つ思い出されるのは、隠された「大魔法使いの搭」の存在である。これは砦の外に建っている「隠された塔」だ。大魔法使いが身を守るために用意した施設の一つであり、アナランドからの刺客に対して最後の罠として使用された。こういうものは皆に広く知られてしまっていては意味はない。アナランド人が砦を探索しているうちにバレてしまっては元も子もないからだ。
 この塔の建設にも当然人足が必要だったはずであり、おそらくは砦と同時期に建てられたと思われる。この塔の建設に携わった者ならば当然その存在を知っているわけだが、慎重なことこの上ない大魔法使いとしては塔に必要な最低限の人員以外には、秘密を知る者を残す気はなかったはずだ。口封じを兼ねて、砦の人員の入れ替えは行われたのではないだろうかと思えるわけである……。

(8/9/20)

★ 剣と刀

 剣は両側に刃が付いたもの、刀は片刃のもの。おおまかにはそう解釈しておけば問題ないと思う。
 ところで剣と刀、どちらも英語では「Sword」となる。『ソーサリー!』においても同じくである。

 さて、カレーで購入できる武器に「doubleedged broadsword」というものがある。ダブルエッジ、つまり両刃のブロードソードというわけで、わざわざ両刃であることを特徴として文面に起こしているわけだ。カーカバードでは両刃の剣は珍しいということだろうか? そこで、『ソーサリー!』の挿絵に描かれた「Sword」を片っ端から見て行こうと、そういうわけであります。

1巻 51 フランカー おそらく片刃 文中(103)で「scimitar」と明記されている。シミター。
1巻 279 エルヴィン達 おそらく片刃 ナイフ一人、小刀(鞘に収まっている)一人。
1巻 308 山賊達 おそらく両刃 本文で「Sword」と明記されている。挿絵を見ると両刃に見えるが左右のバランスは偏っている。
1巻 425 GOB 片刃
2巻 56 ギャンブラー 片刃 ナイフ
2巻 164 死霊 片刃 ナイフ
2巻 324 物々交換ノームの部屋 おそらく片刃 湾曲刀(多分鞘に収まっている)
3巻 136 沼ゴブリン おそらく両刃 ギザギザナイフ。両刃っぽく見える。
3巻 315 セスター・キャラバン おそらく片刃 中段ほどに、曲刀がある。
3巻 410 LIXの巻物の図案 おそらく両刃 直刀の絵。両刃に見える。
4巻 91 ナイロックの店 片刃 商品棚に曲刀。ここでは「さびた円月刀」が買えるが、これかな?
4巻 109 赤目たち おそらく片刃 曲刀を腰に差している。鞘入りだが、曲刀ならおそらく片刃。
4巻 144 黒エルフたち 片刃 二本の曲刀。どちらも片刃に見える。
4巻 304 衛兵 不明 よく見ると、直刀を佩いている。鞘に収まっているので刃については不明。
4巻 P175 衛兵 不明 鞘に収まった直刀。刃については不明。
4巻 446 衛兵たち おそらく両刃 二本描かれている。どちらも曲刀だが、両刃に見える。
4巻 517 変異ゴブリン共の部屋 おそらく片刃 ナイフサイズの曲刀。多分片刃。
4巻 568 物見たち おそらく両刃 3人の内2人は直刀を持っている。片方は異形。戦闘へ進むと、いずれも「Sword」と明言される。
4巻 568 物見たち おそらく片刃 3人の内1人は曲刀持ち。戦闘へ進むと、いずれも「Sword」と明言される。
4巻 615 水晶玉に映る像 両刃 いわゆるスタンダードな剣。文章内で「Sword」と明記されている。
4巻 646 GOB おそらく片刃 ゴブリンたちが4本の剣を持っている。3本は曲刀。1本はそんなに曲がっていないが、いずれも片刃に見える。
魔術書 DUM おそらく片刃 湾曲している。
魔術書 RAZ 両刃 スタンダードな剣。
魔術書 GOB おそらく片刃 湾曲している。
魔術書 DOZ 両刃 スタンダードな剣。
魔術書 KIN おそらく片刃 湾曲している小刀。
魔術書 RES 両刃 スタンダードな剣。

 こうして眺めると、やはり片刃の湾刀がカーカバードではメジャーなようである。魔術書における分布は半々なので、アナランドでは両刃の剣もそれなりに普及していると思われる。
 さて、こうなると「doubleedged broadsword」以外の「Sword」が本当に所謂「剣」なのかどうか疑問に思えてくる。我らがアナランドの英雄は「刀」を帯びていたかもしれないのだ。

(8/15/20)

【追記】
 第二巻の98のイラストにもナイフがありますね。湾曲しているので片刃の可能性が高いと思います。
 あと、マンパン砦の物見たちも剣比率がたかいなど、やはりアナランド出身なんだなと思ったりもしています。
 個人的に面白いなと思うのはマンパン砦の衛兵たちで、彼らは基本的に剣を支給されているようです。彼らの故郷もまた、カーカバードとは異なる文化圏扱いなのかもしれなません。ティンパン河上流ということは、ラドルストーンに大分近くなっているはず……

(8/28/20)

★ レンフレン

 死霊というモンスターは実に強敵で、第二巻をクリアするためには必ず相対しなければならない壁である。さて、第三巻ではレンフレンなる男が幻術でこの死霊の姿を創りだしてくるわけであるが、第二巻でヒドイ目に合っているプレーヤーなれば必ず警戒しようというものである。
 そういうゲーム構成的な側面を取り除いてレンフレンを見た場合、彼はケチな幻術師にすぎない。旅人を狙う盗人らしいが、本編で明確にはされない。幻の死霊とは戦うことができ、体力を減らすと幻術を解いたレンフレンが命乞いしてくる。つまり、彼は自分を死霊に見せかけた上で戦いを挑んでいるようだ。ようするに普通に相手を殺したあと金品を奪っているという感じなのだろう。『ソーサリー・キャンペーン』では岩魔人テイマーでもある彼だが、どちらかというと野生の岩魔人の近くで仕事をしているとするほうが個人的にはらしい気がする。犠牲者は岩魔人と死霊の姿に悩まされ、混乱の中力尽きるというわけだ。これならレンフレンがバク地方の僻地を仕事場としてる理由にもなる。普通なら、こんな実入りの少なそうな場所で追い剥ぎ稼業などするわけがないはずではないか?

 さて、そこで気になるのは本当にこんな場所で追い剥ぎ稼業が成り立つのかという事である。本文中ではたまたま(カレーで大儲けしてきたかもしれない)アナランダーと出会えたわけだが、そもそもバク地方では旅人も稀である。セスターキャラバンなどは人数も多いうえにしっかりと武装しているので、幻影と岩魔人でも勝てるかどうかはわからない。シャムや七匹の大蛇とは、逆に遭遇しないようにして息を潜めるにちがいない。
 そうなると獲物はホースマンやクラッタマンのような原住民たちに限定されるだろう。死霊を恐れるような相手でないとレンフレンのやり方は効果的ではない。基本は彼らの持つ干し肉などで食いつなぎ、ちまちま溜めた金貨の枚数がある程度になったらセスターキャラバンなどに出向いてまともな糧食を購入する……きっと、そんなふうにして必死に生きているのではかろうか。

(8/22/20)

【追記】
 彼の幻術で死霊以外を見せることができるのかどうか?
 もしも可能であるならば、七匹の大蛇の姿を見せればバク地方では効果覿面な気がするが……月の蛇を見ただけで死んでしまうのも、報復を恐れてということなら納得がいく。
 あるいは一度シャムあたりにヒドイ目にあわされたのかもしれない。シャムは普段の恰好が格好なので、レンフレンがちょっかいをだしていてもおかしくはない。

(8/28/20)

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