旧訳の翻訳でひとつ面白いと思っているのが、「マンパンの大魔王」である。
原文は Archmage of Mampang 。要はアークメイジだ。
ヒルジャイアント、ブラック・エルフなどはそのままなのに、ここだけアークメイジではなく大魔王なのだ。ものすごくインパクトある語だし、当時やはり鮮烈な印象を残したのは間違いがないので個人的には素晴らしいと思うが、ちょっと不思議ではないか?
ところで日本のゲーム関連で大魔王という語が広まったのは多分『DQ3』だと思うが、これは1988/2/10発売。ちょっと遡ってFC版『女神転生』の大魔王ルシファーが1987/9/11。「大魔王」と記された創元版『ソーサリー!』の第一巻が出たのが1985/7/12なので、これらの影響ではないことは明白であろう。
ゲーム以外に目を向けてみると、『ドラゴンボール』でピッコロ大魔王が1988/4/15に発売の12巻で初登場している。ジャンプ本誌での連載は少し前だろうけど、『魔法使いの丘』の前ではあるまい。その前から居る有名な大魔王は『ハクション大魔王』(1969)ぐらいではなかろうか。もしもファンタジー小説に登場してたら勉強不足申し訳ありません。
マンパンの大魔王がドラクエやピッコロと違うのは、彼はやはりアークメイジなので、「ボス魔王」という意味合いでの大魔王ではないということだ。この点においては「ハクション大魔王」のニュアンスが近いと言える。
第三巻でキミの行く手を遮る強敵「七匹の大蛇」。この恐るべき敵の中で、戦う状況が起きえないのが日輪大蛇である。ヤツめはフェネストラによって捕えられているのだ。
だが実は、フェネストラの元を逃れる展開もあり得る。ヤツのステータスを掴んでおくのは悪いことではあるまい。
『超・モンスター事典』には日輪大蛇を含む大蛇たちのステータスが乗っている。これは第一級の資料だ。だが、この書物はAFF2のサプリメントであることに注意する必要がある。つまり、複数のプレーヤーが行う冒険に適応するために多少パワーアップされているのだ。ゲームブックのアナランド野郎は単独行を決められているので、敵側もそれに合わせたステータスになっているのである。だが、AFF2とゲームブック、この二つのステータスを比べればどれぐらいの差があるかが分かるはず。そしたら、AFF2の日輪大蛇のステータスを同じぐらいに下げてやれば、ゲームブック版の日輪大蛇のステータスがある程度の精度で求められるのではないかと、こういう次第であります。
では『超・モンスター事典』と、本編の連中を見てみよう!
特殊能力や同時に相手できる人数(攻撃体数)などはおいておき、単純に技量点と体力点を抜き出してみたぞ。
時大蛇 | 水大蛇 | 風大蛇 | 火炎大蛇 | 土大蛇 | 月大蛇 | 日輪大蛇 | |
技量点 AFF2 / ゲームブック | 16/? | 12/10 | 13/11 | 13/13 | 14/12 | 13/13 | 13/? |
体力点 AFF2 / ゲームブック | 24/14 | 15/11 | 21/14 | 18/12 | 21/14 | 18/10 | 18/? |
AFF2では日輪大蛇と月大蛇が同じステータスであることが解る。となると、ゲームブック版でも同じと考えることはできよう。だが他の大蛇を見てみると技量点は軒並み-2されているようだ。例外は月と火炎のみである。
しかし月と太陽は対の存在。AFF2でこの二者が同一ステータスならば、それに準ずるのが最も自然な気がする。
というわけで、日輪大蛇のステータスは「技量13 体力10」と考えてもいいのではなかろうかね。
(時大蛇についてもステータス値の予想はできるが、奴には例の能力があるのであまり意味はないと考えています。)
『モンスター事典』を見ると、豹は南のジャングルに生息するとある。シャムタンティが南のジャングルなのかといえば、きっと違うだろう。実際に第一巻で遭遇することもない。全編を通してみても、マンパン砦内で黒豹が飼われているぐらいだ。
だが、首狩り族のイラストを見ると、明らかに豹の皮を身に着けているのがわかる。問答無用で首を取りに来る彼らが他の地との交易で手に入れたとは考えにくい。残る可能性は、豹の皮を扱う商人がシャムタンティを旅していたというぐらいしかない。仕入れ元は港があるアナランドかカレーだろう。これは個人的なイメージかも知れないが、旧世界に「南のジャングル」は存在していなさそうだ。やはりジャングルといえばアランシアな気がする。
ところで件のイラストだが、隣の首狩り族は虎皮を身に着けているようにも見える。豹皮に劣らず虎皮も何故ここにあるのかが不思議な代物だ。やはり毛皮商が首を取られたというのが有力な線だろうか。様々な毛皮を扱う犠牲者がいれば、問題は解決すると思う。
【追記】
この虎皮?だが、もしやスナタ猫では……?
【追追記】
『真・モンスター事典』に書かれているところによれば、奥アナランドにはシマウマが生息しているという。この虎皮っぽいやつ、アナランド側からの流入品の可能性が出てきましたな……カラーイラストだったら色々氷解するのだが。