星野和夫さんが読んでいる本。あの見覚え有る赤い背表紙。我々が知る分厚さ。そして表紙におわすはマンパンの大魔王。そう、創元版ソーサリー!第四巻『王たちの冠』である。
星野和夫さんとは何者か? 山城新伍さんが演ずるこの人物は、1989年の邦画『スウィートホーム』(監督・脚本/黒沢清)に登場する人物である。映画の中で『王たちの冠』をお読みになっているのだ。
さて気になるのはそのプレイスタイルである。随分前に見たきりなので多分に曖昧で申し訳ないが、確か普通の本のように読んでおられたと記憶している。サイコロ無し。アドベンチャーシート無し。鉛筆無し。栞、指セーブ無し。無し無しづくしである。
これは無敵プレイだろうか? だが第四巻では無謀に思える。超絶記憶力でもない限り、パラグラフジャンプで詰む。星野さんは遠からずゲームオーバーになる可能性が高い。あるいはプレイリーディングではなく単に読み物としてパラパラめくっているのかもしれない――私がよくやるように。
冠を奪われたアナランド……いや、真に冠を失ったのはフェンフリー同盟だ。ならば、当然フェンフリー同盟はマンパンを相手に冠を奪い返そうとするだろう。アナランドなど信用できないはずだ。マンパンでは冠のことを秘密にしたがっているようだが、アナランドから冠が失われたことはクリスタタンティの農夫でさえ知っている。アナランドは早々に犯人を突き止めた。同盟も既にマンパンに冠があることをつかんでいるはずだ。
アナランドとモーリスタティアを除けば、カーカバードを取り巻く国々はフェンフリー同盟の参加国だ。ラドルストーンやブライスはアナランドよりもマンパンに近い。先に述べた通り、レンドルランドはアナランドを罰す役目を持っているかもしれないが、この国は独自に冠を手に入れようとしていてもおかしくない。『タイタン』に書かれたレンドルランドとフェンフリーのいざこざを見る限り、レンドルランドが上手くいっていたのは冠を授かっていた間だけっぽいのだ。同盟に内緒でマンパンに刺客を送っている可能性はあるだろう。
こういう話になると、もっと怪しい国がある。もちろんブライスである。変異現象団子などで知られる好戦的な国だ。ブライスなら、冠を独占できそうなこの機会を上手く活かそうと考えるに違いない。いやいや、これは大混戦の予感がしてきたぞ。こうなるとフランカーなんかも、誰の指図で動いているかわかったものではないな。
勇敢なアナランダーが48の魔法を完全に覚えていなくとも任務に送り出される理由はここにあった。アナランドには時間がなかったのだ。敵はマンパンだけではなかった! 他の国に奪われる前に、早々に冠を取り戻さなければならないのだ。それにフェンフリーに冠奪還のために手を打ちましたアピールもしなければならない。そのためには、勇者はただいま訓練中ですでは話にならない。既に旅立っているという実績が必要だったのだ。
『タイタン植物図鑑』を入手しましたので、つらつらと眺めております。色々とネタや気づきがあったわけですが、先ずはワートルですね。
図鑑で見る限りでは、どうやらカブか大根の類かといったところ。ワートルの塊根を使ったスープの紹介もあります。セスターキャラバンでふるまわれるアレでございます。新訳では「がめ汁」と訳されていたこの料理ですが、原文では「Whortle soup」。Whortle というのは意味不明の単語であったためか、旧訳においてはカタカナ語で訳されていました。
入手難易度は「よくある」となっていて、別段どこどこ特産などとは書かれていないため、タイタン世界全域でみられる植物のようです。我らがアナランダーはアレルギー反応で発疹が出た際にワートルが原因だとは思ってなかった様子なので、アナランドではあまりメジャーな食べ物ではないのかもしれません。よく見かけるけど、好んで食いはしないのがアナランドの流儀なのかと。黒エルフの食い物だから、てっきり人間には合わなかったのかもなんて思った時期もありますが、そんなことはなかったようです。
ちなみに「がめ汁」とは何ぞやと調べてみましたら、泥亀汁(どんがめじる)なる汁物が。日本は近江(滋賀県)の郷土料理です。泥を思わせるすりゴマの汁に、茄子がごろりと亀の如し。なかなかにインパクトある見た目です。謎の野菜がメインの煮込み料理名の訳に、泥亀汁を思わせる語を持ってくるというのはありかなと思っていたのですが、この度 Whortle というのが材料である根菜の名前と判明した次第です。
まあ、出版時期を考えると判明というか「そう決まりました」という感じですが……