☆ ナッガマンテ組

 サマリタン狩りで恨みを買っている拷問手ナッガマンテ。マンパン砦のバードマンたちはこう噂する。「ナッガマンテが斧を研いでいる」「サイクロップがどういう連中かは知っているだろう? やつは犠牲者をたっぷり一時間は痛めつけて楽しむんだ」(※以上、創元版より)
 ところでこのサイクロップというのはいわゆる一つ目巨人(サイクロプスは複数形)のことだ。ギリシャ神話を出典とするメジャーな怪物で、ドラクエ2のロンダルキアでお出迎えなんてのは覚えがある方も多かろう。ファイティング・ファンタジーシリーズにも彼らはいて、『モンスター事典』をめくると該当項目がある。
 しかし残念ながら、おそらくここは誤訳であったと思われる。実はこの「サイクロップ」というのは、片目の拷問手ナッガマンテその人を揶揄した言い回しなのだ。ここで「連中」としているということは、対象となるサイクロップは一人ではない。種族としての一つ目巨人を指しているのは間違いなさそうだ……しかしナッガマンテがオーガであることは周知の事実である。

 さて、ここからが本題。今更誤訳だと指摘するのが今回の目的ではありません。考えてみよう。もしもこの旧訳におけるバードマンの証言が真っ当だったなら……。そう、拷問手ナッガマンテにサイクロップの助手が何人かついているのであれば、この問題は解決するのだ。
『モンスター事典』でサイクロップを見てみると、丘巨人にも増して攻撃的であり、極めて凶暴かつ野蛮。そのうえ人間を恨みまくっているとある。これでは哀れなバードマンが一時間ももつのかどうかが心配になってくるが、それよりも気になるのがカートゥーム隊長だ。黒い肌の衛兵たちはもしかしたら人間ではない可能性があるが、彼は間違いなく人間だ。人間嫌いで名高いサイクロップたちの殺人衝動を押さえ続けなければならないナッガマンテの苦労は並大抵ではあるまい……。

(5/29/22)

★ 魔法の羅針盤

 カレーで入手できる魔法の羅針盤は、第二巻のクリアの助けになるアイテムだ。これを使うと、北門を閉ざす四行詩を知る者がいる方向を指し示す。羅針盤に従って進めば、秘密を握る最後の人物の元へたどり着けるという仕組みになっている。多くのアナランダーの助けになったと思わしきこの魔法の品であるが、こいつはいったいどこの誰が必要とした結果創られたのだろうか。一つだけハッキリしている。四行詩を全て知ることを望んだ者の仕業だ。
 それは言ったい誰か。第一貴人サンサスではあるまい。全ての行を知っているサンサスには羅針盤は必要ない。他の四行詩を知る者たちはどうだ? 彼らが全ての行を求めるという可能性はありそうだ。野心も持たずに、あるいは知識の探求もしないまま不完全な秘密の守り人に甘んじているような連中とも思えない。ただし乞食に身を堕とした第七貴人は除かれる。彼こそが、羅針盤が示すその人だからだ。四行詩を一行も知らされていない人物の可能性もある。吸血鬼との噂がある第三貴人なんぞはまさにといったところだ。

 ところでこの品がどこにあるのかというと、これは例の物々交換ノームとの取引で入手することができる。ということは、この羅針盤を創った者はもう四行詩を必要としていないのかもしれない。カレーという治安の悪い街からして、羅針盤が盗まれてしまったということもあるやもだが、こんな高度な魔法の品を創った者(あるいは創らせた権力者)がそんなミスをするとも思えない。盗まれたのだとしても盗む側にもそれなりの覚悟と技術が必要なはずだ。ならば、この羅針盤がノームの手にあるのはおかしい。羅針盤を創った者は既に死んでいて、遺品の中に混じっていたこの宝が、その価値も理解されないまま処分されてしまったとの想像はいかがなものだろうか?

 いずれにせよ、この羅針盤がカレーの秘密を巡る陰謀の一端を担っていることは間違いがないと思われる。こうなると、件のノームのある種の無邪気さが清涼なものに感じられる気がする。

(5/29/22)

【追記】
 この盲目の乞食だが、実は彼と出会ったさいに肝心の呪文を聞き出せないという展開が用意されている。つまり乞食と遭遇した後、呪文を聞き出すことなく北門へ到達した場合にどうなるか。手元に羅針盤があれば、今こそこれを使うべしとなるだろう。そして羅針盤が指し示す先へ向かうと、再び乞食に出会うというわけだ。問題は先に乞食と邂逅した時に、彼がハーピーとの戦闘で死んでいた場合だ。死んだはずの乞食がハーピーに襲われている……つまり時間が巻き戻っているのだ!
 時間を超える魔法の工芸品となれば、ZEDとの関連を疑わなければなるまい。先にこの羅針盤が誰によって作られたのかを考えたわけだが、ここへきてスローベンで造られた可能性が浮上してきた。

 余談だが、羅針盤の効能を駆使すればクーガの神殿を何度も訪れることができる。使用回数について制限があるとは書かれていない。クーガに何度でも口づけをして、何度でも質問に答えてもらうことができる。

(6/20/22)

★ 羽虫

 シャムタンティから主人公の後を追ってきて、マンパンで再会することになる豆人のジャン。彼はイルクララ湖を渡ることはせず、湖畔を半周したと語る。あの距離を休まずに飛ぶのは無理だったということだが、実に賢明だったと言わざるを得ない。普通に飛んでいたら、間違いなくイルクララ名物飛び魚に捕食されてしまっていたであろう。

 ガザ・ムーンの虫よけ魔法もそうだが、どうも豆人は羽虫扱いされるようだ。実際創土訳ではずばり「翅」という字を使って訳されている。昆虫の羽根という意味だ。ZEDでマンティコアの洞窟に戻されたときなんて、「二度と聞きたくない音」という表現でジャンの羽音について書かれている。これはもう蚊だ。蚊のイメージしかない。

 ……しかし、ZEDを使う直前に翅を切られて落ち込んでいたジャンと再会したばかりだというのに「二度と聞きたくない」というのも中々に辛辣なアナランダーである。確かに塔の中では羽音に苦しめられることもなかったろうが……それだけシャムタンティで酷い目にあったということだろう。実際フランカーとのコンボは恨みの一つも言いたくはなる。

(5/29/22)

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