★ イルクララの魔女

 イルクララ湖には魔女がいる。フェネストラではない。彼女はスナタ森に住んでいるのであって、イルクララ湖に居を構えているわけではない。
 実はラムレ湖にも魔女がいる。もう少し西へ雲峰山脈を分け入れば、そこには魔女ならぬ怪物がいるのがわかる。

 なんのことかわからないという人は、じっくりとカーカバード地図を眺めていただきたい。『ソーサリー!』本編についている地図だ。……五味太郎氏の『くじらだ!』を思い出しますね。あれは名著だと思う。

 ついでに『タイタン』の旧世界地図を見てみると、アナランドにある金水湖は鳥のような形をしている。これはおそらく金冠鷲ではなかろうか。

(7/13/22)

★ クリスタタンティの間抜けども

 我らがアナランド人がダンパスで披露する「笑い話」。シャムタンティの集落の一つ、クリスタタンティの住人を馬鹿にした持ちネタだ。運の悪いことにダンパスのお偉方の一人がクリスタタンティ出身だったので、当然ながら相手を怒らせてしまう……これで武器を失うのだから、ずいぶんと軽はずみなことをしてくれるものだ。

 クリスタタンティの住人は皆一様に髪を高く結い上げ、骨で留めている。そして大酒飲みらしい。マンパン砦の中庭で出会った赤目たちに「クリスタタンティから来た」と言って胡麻化そうとすると、連中はだったらなぜあの髪型をしていないのかと問い詰めてくる。実際にクリスタタンティで出会った人々を描いた挿絵でも、皆が皆、骨の髪留めをしている。ダンパスのお偉いさんが同じ髪型をしていたのなら、アナランド人があんな話を披露することもなかったはずだ。つまり、村を出てダンパスで出世したこの男は、件の髪型をしていなかったということになる。
 赤目たちに問い詰められたアナランド人は、村のしきたりに反発したのでそういう格好はやめたのだと訴えていた。案外これは苦し紛れの出まかせではなく、実際にあの村を出た者は皆、同じように考えるのかもしれない。確かにあの髪型は、他の土地では目立ちすぎる気がする。

(7/13/22)

★ 放浪者ジャン

 ビリタンティを出た後、第一巻の旅路は重大な分岐点へと差し掛かる。そう、黒蓮群生地へと踏み入れて死ぬか、あるいは生きて旅を続けられるかが決まるあの分かれ道だ。ジャンはこの死の道を「トレパニへの近道」だと信じて疑っていない様子。実際この道を進んだ場合、彼は主人公と共に死んでしまうのだから、これはどうやら本気でそう考えていたようだ。『タイタン植物図鑑』の記述からは、黒蓮の花が年中咲いているのか、それとも季節ものなのかははっきりとしない。ちなみに実際の蓮は梅雨明けぐらいの時期に咲くとのことだが、タイタン世界の蓮が同じかどうかは不明だ。しかし、少なくともジャンがこの道を「安全」だと判断する理由として、季節外れであれば黒蓮の脅威は無くなるということはあり得そうだ。
 ところで『タイタン植物図鑑』にもあるように、シャムタンティで「黒蓮には気を付けろ。甘い香りで死をもたらす」などとよく言われているのであれば、少々妙な話だ。ジャンはあのとおり人懐っこく、「仲良くなれる」と目を付けた人物に付きまとう。あれだけのおしゃべりが黒蓮について何も知らないなんてことがあるのだろうか? しかし先にも書いた通り、ジャンは黒蓮が群生しているさまを見てもまったく気に留めることなく死んでいくのは事実である。これはおかしい。

 豆人という種族は一定の場所にはとどまることなく、各地を放浪することを宿命づけられていると『タイタン』にはある。ということは、ジャンも常に移動を続けているということになるわけで、彼はシャムタンティに流れてきたところで主人公と出会ったのかもしれない。シャムタンティでは当たり前のように知られた黒蓮の危険性について無知であるということは、彼がシャムタンティの新参者で、以前は別の地にいたということを示しているとは考えられないだろうか。そう、シャムタンティに足を踏み入れたばかりで、黒蓮について詳しく知らなかった者がもう一人いるではないか……もちろん我らがアナランド人だ!
 ジャンはアナランドからシャムタンティに出てきたのかもしれない。主人公ともっと早い段階で出会っていないのはおかしいと思う者もいるかもしれないが、ジャンがカントパーニ門を越えたとは限らない。豆人には翅がある。彼ならばどこからでも大塁壁を越えてシャムタンティ入りすることができるのだ。

 しかし、本当にアナランドにいたのだとしたら……さぞかし魔法使いたちに迷惑をかけてきたに違いなかろうな。

(7/13/22)

【追記】  
 ジャンはビリタンティの子供祭りのことを知っていた。年に一回の祭りなので、ジャンが放浪者である以上、今回が彼にとっても初めてだと思われる。
 彼は一度ビリタンティに入ってきたあと、村を出たところで主人公と出会ったのかもしれない。元来た方向へ戻ることになるが、それ以上に我らがアナランダーに興味を持ったということだろう。

 とはいえ、黒蓮に関する知識の無さから言って、ジャンが北から南下してきたわけではなさそうだ。ビリタンティはシャムタンティ最大の集落なので、ゲーム中辿ることができる道(アナランド ― カレー)以外にも、多くの方面から道がつながっていると考えるのが自然ではなかろうか。

(10/16/22)

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