★ スロフの加護

 崩壊したスロフの神殿。その地下には司祭であったシャラが鎖につながれて閉じ込められている。シャラ曰く、彼をこのような目にあわせたのは神殿を破壊し宝を持ち去ったクラタ族だという。地下の湿気と冷気はこの老人の身体をむしばんでおり、救出した主人公は黄死病をうつされてしまうのだ。この病気は日没ごとに体力を3奪っていく強力なものであり、早々に癒さないと旅の無事も危ぶまれてくるわけだが……ここで、シャラも同じ症状に悩まされていたはずだと気づく。それだけではない、この世界では一日何も食べないでいると、翌朝体力を3失うのがルールだ。つまり、この老人は囚われてから毎日6点もの体力を消費し続けてきたことになる。本文中の情報からは、シャラがどれだけ長い間閉じ込められていたのかはわからないが、訓練を十分に受けたアナランドの代表選士でさえ、体力は14~24点だ。シャラと同じ状況に置かれた場合、3、4日でお陀仏である。

 シャラは老人だ。とてもじゃないが、そんなに体力があるとは思えない。となると、考えられるのは二つの可能性だ。一つはクラタ族が神殿を打ち壊してからそう日がたっていないということ。先に見た通り、屈強な者でも4日ももたないような環境に置かれた老人が生きているわけだから、これはそれこそ事件が起きたのは昨日のことですとか、そういったレベルの話になる。神殿の荒れ具合の描写も、よくよく読んでみると時間経過については明言が避けられている……としてもちょっと無理があるような気がする。つい最近崩壊したらしい、といった趣旨の描写説明は一切無いのだ。
 そこで、もう一つの可能性を見てみよう。シャラはスロフ神の司祭だ。同じくスロフの信者であるコレトゥスは癒しの力を持った聖者である。この神の加護があればこそ、一日に6点もの体力を失わずに済んでいたのではないだろうか。

 ちなみにこの神殿の別イベントでリブラ信仰を捨ててスロフの信者になったとしても、黄死病に対する抵抗力はとくに得られない……まあ新参者にはまだそんな恩恵は与えられないということであろう。

(9/28/22)

★ カレー北門の造りについて


封印されたる二本の軸よ
ゴーレム皮なる一つの錠よ
クアガの鷹揚、フォーガの矜持
かけて命じる、いざ開門

 さて、先ずは皆様のお家にある鍵のかかる扉を見ていただこう。鍵をかけることでドアの側面からせり出してくる金具があるのがお分かりかと思う。反対側に空いた穴にこの金具が入ることでドアが動かなくなる仕組みで、この金具のことをデッドボルトと言うのだが、第二巻の最後のイラストを見てみると、両開きになった北門の断面に当たる面にデッドボルトが三つあるではないか。普通に鍵であればデッドボルトがあるのは当然だが、二つ余分についていることでその厳重さがわかる。そして、ここに「封印されたる二つの軸」の存在が見て取れるというわけだ。
 この「封印されたる二つの軸」というのは旧訳では「奥に隠れた掛け金ふたつ」となっていて、こちらのほうが二つ目と三つ目のデッドボルトの存在がイメージしやすい。原文では「tumblers two sealed deep inside」となっており、軸/掛け金と訳されている部分は、tumbler だ。デッドボルトを動かすための回転する部品のことだと思われる。
 このイラストには硫黄霊が入っている箱も描かれており、きちんと本文描写を踏まえている。デッドボルトが三つ描かれているのにも意味があるはずだ。呪文の一行目との符合は偶然ではあるまい。こうなると続く三行についても考察を重ねたくなるというもの。

 というわけで、続けて二行目を見て行こう。ここでは「ゴーレム皮の錠」なる言葉が出てくる。これは旧訳では「鍵」となっているが、原文を見ると key ではなく lock であるため、錠前のほうを指していると考えたほうが自然だ。この場合は北門に付随している部品だろう。例のイラストでは北門は内開きになっていて、扉のカレー側表面の様子はわからない。だがここに「ゴーレム皮」が付いているのは確実だと思われる。
 「ゴーレム皮」というのもよくわからない表現だ。原文は「Golem's hide」であり、文字通りゴーレムの獣皮あるいは(人間の)皮膚と解釈できる。『モンスター事典』を見ると、タイタン世界には素材によって三種類のゴーレムがあり、それぞれ石、木、そして肉となっている。『ソーサリー!』本編ではアリアンナが木のゴーレムを使っているが、今回合致しそうなのは肉のゴーレムだろう。しかしながら、肉ゴーレムの皮から錠前となる部品を造ったとしても、所謂普通の鍵穴があるとは思えない。この扉は呪文によって閉じられているのであり、開けるために鍵を必要とはしないからだ。

 第二巻のラスト近く、北門に近づいたシーンでは、門そのものが語り掛けてくる描写がある。主人公が言葉の主を探していることからしても普通に発音されていると思われる。別段脳内に響いてくるようなものではない。最初は誰が話しかけてきたのかわからないということで、あからさまな「顔」があるわけではないのだろうが、北門には「声を発する」器官があるということだ。
 よくよく考えてみれば、四行詩を唱えることで扉が開くわけだから「声を聴く」器官も備えているに違いない。こうなってくると扉自体がゴーレム的な魔導生物だと思えてくる。となれば、そこに肉ゴーレムを応用した技術が使われていても問題はなかろう。石や木では声を発するのに適しているとは考えにくい。まさしく「ゴーレム皮」が存在しているに違いない。

 三行目はこの門を閉ざす呪法に二柱の神の力が関与していることを示唆している。今回の考察があたっているのであれば、ゴーレムに力を与えているということになるだろうか。鷹揚とは「小さなことにこだわらずにゆったりとしている様」であり、矜持は「自らを誇る気持ち」だ。北門の外から迫る悪に対して、どーんと構えているということだ。単にバクランドの脅威を恐れているのではなく、対抗しようという心意気が感じられる。
 しかし、クーガはともかく、フォーガが現在は忘れられた神であることは興味深い。そう簡単に解呪できないようにわざと信仰を途絶えさせたなんてこともあり得る気がしてくるが、どうだろう。
 そして四行目だが、これは明らかに扉に対する命令だ。呪文の〆としてこれ以上の文句はあるまい。

(10/14/22)

★ 血の蠟燭

 ナイロックの店で売られている二本セットの蝋燭。この紅白の蝋燭だが、赤いほうは血の蠟燭であり、呪われたアイテムということになっている。火狐の血が使われており、よく燃える点はいいのだが自らも血を求め、持ち主を窮地にさらす。ゲーム中では刃が無数に突き立っている「夜の間」にて、その炎の揺らめきで主人公の歩を誤らせ……そしてアナランダーの血にありつく。

 ここまで見てちょっと不思議に思うのは、呪いと血のイメージは合っているものの、その血が火狐のものだという点だ。これが人間の血、あるいは人間に近いエルフやドワーフなどの血であったのならわかる。狐の持つ発火能力と蝋燭の灯の組み合わせもわかるのだが、一緒くたにされてしまうと微妙ではないか? 火狐は完全に野生の生命体であり、第三巻で実際に出会う機会もあるが呪いという概念とは程遠く感じる。

 あらためて『モンスター事典』を見てみたところ、火狐の毛皮は炎に関する魔法に使用する品として、魔法使いたちには重用されているとあった。魔法大国アナランドにその活用法が伝わっていないのは不思議であるが、これならば、呪いを込めて血の蝋燭を作り上げた魔法使いがいたというのは十分にあり得る気がしてくる。火狐の能力と、血を啜る呪い。この橋渡しとして悪しき思惑があったというわけだ。

(10/16/22)

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